第4話
『鈴村君…助けてあげてね…?』
次の日になっても…
この言葉が…俺の頭の中で…駆けめぐっていた。
『助ける…かぁ~』
深いタメ息と共に、
ベッドの上で時計に目をやる。
時刻は6時半だった。
昨日の親睦会は、北見さんのリクエストで…焼き肉屋のあとにカラオケに連れて行かれた。俺としては…
こんな気分の時に…カラオケって、とは思ったものの、
北見さんの透き通る歌声を聞いて…
思わず感動して不覚にも涙を流してしまったのだ。
『鈴村君…?ちょ…ちょっと、泣いてんの?え…?』
『楽しくいこうよ!楽しく…。ねっ?』
北見さんの包み込む様な雰囲気と…物言いが、余計に俺の涙腺を刺激した。
『鈴村君…。頑張ってたんだね?明日からも…戦おうよ!自分自身と…。きっと大丈夫だから!』
北見さんの人望の厚さが何となく理解できる。こんなちっぽけな俺に対して…優しかった。
ベッドから…よし!と飛び起きて…昨日の
楽しかった時間を思い出しながら、
俺はホット珈琲を入れた。珈琲の香りを嗅ぐと…とても癒される。
ひとくち口に含むと…肩に入った、力が…
ス~っと…解きほぐされる様だ。
シャワーも浴びて昨日の店の香りを落とす。
時間は7時過ぎだった。
『さぁ戦いだ!よっしゃ!』
と服に着替えて…勢いよくドアを閉めた。
病院につくなり、三門レンが、いつもと違う様子だと噂がたっていた。
俺が『おはようございます!何かありましたか?』と…俺の姿を見るなりナース達が…
駆け寄ってきた。
『鈴村君…北見さんの事で…話が…。』
『?……』
話を聞くと…北見さんが出勤した時に…三門レンの元フィアンセが、レンの病室に来たらしい。何の用事かと言うと…?
その時に…北見さんが通りかかりチラッと 2人の会話を聞いてしまったらしく…
~新しい恋人が出来たけど…うっとうしいから…仕方ないからお前と籍入れてやる~……と元フィアンセの一方的で身勝手な言いぶりを目の当たりにした、北見さんが…レンの気持ちを踏みにじった元フィアンセに対して…
さらに傷付けるつもりか?…
一言も二言も
レンさんは所有物じゃないのよ!あなたは…女性を何だと思っているの?
残念ですが、レンさんはうちの病院で…今後守っていきます!
とピシャッと言葉を投げたそうで、
レンは、北見さんに…礼を恥ずかし気にしたそうだ。
俺はビックリしていた。元フィアンセってそんな可笑しなヤツなんすか?
と…北見さんは違う仕事に戻ったらしく…。
ちょっと北見さんの事をカッコいいな…。
さすがだ!北見さん。 と思ってしまった。
俺は…話を聞かなかった素振りをして…
レンの病室に向かう。
『三門さん。おはよう!』と声をかけると…三門レンは少しだけ驚いた表情を見せた。俺が…
『俺の顔に何か付いてる?どうしたの?』
と問いかけると…。
『ご……ごめんなさい、私、……』
頬と耳が真っ赤に染まったレンを見ると…
『俺、レンさんの味方だから…気にするな?』
レンは、目をうるませ涙を流していた。
『…辛いの……辛くて仕方ないの…こんなに大事にされてるとは、思わなくて…。だから…ごめんなさい、』
レンは今まで感情を
押し殺してきた分…余計にしんどかったらしく…
泣きじゃくるレンに、いとおしさを感じてしまう位に
レンは弱々しかった。
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