第6話 旅行
その頃つばさとの関係はなんとか持ち直し、なんだかんだ喧嘩しつつも上手く平穏な日々が過ぎていた。
つばさとは出会った頃から今までたくさん色々なところへ足を運んだ。
初めて二人で行った旅行は、長野山梨あたりだっただろうか。
つばさが宿とレンタカー全てを手配し、何週間も前からとても張り切っていたのを覚えている。
「京ちゃん、京ちゃん、長野についたらまず何しようか?」
「う〜ん、まずはつーくんの運転をお手並み拝見かなっ笑」
「え〜まだ練習中だもん。安全運転っ!」
「はいはい。」
たわいもない会話、キラキラとはじける笑顔。見つめ合う二人は理想のカップル。歳下の可愛い彼に甘えられるのは悪くは無かった。
つばさ人一倍京子を求めてきた。
京子より三つ歳下、二十代半ばの三つの歳の差は当時の京子にとってとても差がある様に感じた。
毎晩のように求めてくる彼にも。
彼の私よりも華奢な身体が汗ばみ、激しく求め潤んだ瞳が震え、果てる姿が京子は愛おしくて仕方がなかった。
その時ばかりはすべてを満たされている感覚になっていた。
京子は経験もそれなりだ。
京子のはじめては一つ上の先輩だった。
それはロマンチックなものでも場所でも全くなかった。なんとなく。その頃から京子はなんとなく。何事も流れるままに受け入れられるタイプだった。
「セックスって。」
「もったいぶるほどのものでも何でもないじゃん」
退屈な授業を毎日受けるように。
その日から何人の男に抱かれたのだろう。
たまにそんな事をぼんやりと考える事が京子はある。
「京ちゃん、だいすき。」
「俺には京ちゃんしかいないよ。」
「私もだいすきだよ。いつだってそばにいるよ。」
京子は先のことを考えることが苦手だ。
けれども上手く偽ることには慣れている。
つばさはいつもそう言って私の腕の中で眠る。
京子は寝顔をみているのが好きだ。
大きな瞳が閉じた長い睫毛、柔らかそうな肌。
「他の人にもこんな顔ちゃうんだよね。きっと。」
京子はその横顔を眺めながらいつもそんな風に思っていた。
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