第4話 誕生日

つばさと一緒に過ごす誕生日も2回目となった。つばさはいつも丁寧に一生懸命な字で書いた手紙と、二人で撮ったプリクラ、時にはアプリで出会った頃の意味のわからないトップ写真、その写真はバイトの面接用に撮ったという証明写真だった。そんな二人を引き合わせた懐かしい写真を貼り付けてきたりと。ユーモアもあり、センスも良くその一つ一つのつばさの行動が可愛くて。


そのささやかな、何気ない日常のひとコマが綺麗すぎて、純粋な真っ直ぐ私を見つめるそのつばさの瞳が京子に眩しすぎた。


そう。つばさは歳下のくせに本当によく出来た、私にはとてもとてももったいない彼氏だ。


この頃から京子は劣等感に度々襲われ、その度にひどく心を乱す事が増えた。


自分では抑える事が出来ないほど、ひどく落ち込む事も増えた。


仕事も転職して覚える事も多く、会社の付き合いの飲み会は深夜になる事も少なくはなかった。


いつもつばさは合鍵を使ってうちへ来ては待っていた。狭いマンションで夜遅くまで一人で待っていた。


酔っ払って帰ってくる私に嫌な顔一つ彼はしたことはなかった。


「京ちゃん、今日もおつかれさま」


「京ちゃん、つかれたでしょう。ちゃんと着替えないとだめだよ、風邪ひいちゃうよ。」


どんな時もどんな私にもつばさは変わらず優しかった。


つばさの大好きなアーティストのチケットが抽選で当たり、一人で行く予定だったが私があまりに寂しそうにしていたから行くのをやめた事もあった。


つばさは本当に優しい。優しすぎた。


それなのに、私は仕事の苛立ち、勝手な不安焦りから喧嘩も増えつばさを悲しませる事も傷つけることも多くなった。


「つばさなんて大嫌い」


思ってもいないひと事を言ってしまう。


「もっとあなたには相応しい人がいる」


「歳上なんかよりタメとか、歳下の子と付き合えばいいでしょ」


余計な一言を。


なんて、気がつけばそんな事ばかり言っていた。


自信に満ち溢れている様で、京子は自信なんて何一つない、完璧主義の仮面を付けた本当は臆病者の弱い人間なのだ。


京子の強がりは、自分を偽り騙し隠しながら生きてきた、そうしなければ自分自身が消えてしまいそうで生きていけなかった。


つばさとは別れた方がいい。つばさのためにも私と一緒にいるよりは別々の道へ進むべきだと考え出したのもこの頃だったのかも知れない。







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