第6.5話【閑話】家政婦・飛田の愁い

「じゃあ飛田さん、この予定で行ってきますから」

「はい。かしこまりました」


 はあ。またご旅行ですか。本当にお好きだこと。


 まあ、いいんですけどね。直見様が元気ならそれで。

 こちらがそれで元気を貰っているのも事実ですし。


 ただ、もう少し構ってくれると嬉しいな、とは思いますけどね。


 小さかった頃は「飛田さーん」なんてトコトコ寄ってきて。

 あの頃の面影は、一体どこに消えたのかしら。


 まあそれもしょうがない。人間は「思春期」ってのがあるみたいですから。

 それに、例え直見様にそういう傾向があろうと、私は辞めませんけどね。


 あ、別に直見様を永久に愛でていたいわけじゃありませんよ?

 私はこの家に拾ってもらった恩がありますから。


 そうですねえ、逆算して数えると、直見様が生まれる数年前のことでしたわね。

 まあでも、直見様も私のことに興味はないでしょう。あったら聞いてもらっても構わないのですが、ね。


 読者の皆様も、それほど興味はないでしょう。「早く話進めろよ!」とでも言っているんでしょうか。

 そうは言っても、「アナザーストーリーくらいあった方が良くね?」ってバカ作者が仰るもんですから。

 ですからこれは私の責任じゃありません。ひとえに遅筆な作者のせいです。


「飛田さん」

「はい、何でしょう」

「なんか、様子変じゃないですか?」

「そうでしょうか。至っていつも通りにしておりますが……」


 私がそう言うと、直見様は「ふーん」とだけ言って自室に向かってしまいました。

 どうやって返すのが正解なんですかね。

 人間の考えることはよく分からないですよねぇ。

 あ、私もでした。失敬。


 *****


「じゃあ、行ってきます」

「はい。いってらっしゃいませ」


 出かけたようですね。

 見送りまでしましたから当たり前なのですが。

 さあ、私も速く支度をしないと。


 何をそんなに急いでいるのかって?

 ご主人様も直見様もいない時だって、やることは沢山あるんですよ。

 直見様が旅行に出かけた時はなおさらです。



 では、本日はこの辺で。

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