第44章 まずは舞踏会
第181話 王都への道
フェリーデ北部縦貫線があるのだけが救いだ。
これがなければ
向こうでは舞踏会に自分の結婚式、
僕の一生でもっとも僕らしくない行事が続く半月となるだろう。
そうであって欲しい。
でもあまり面倒なのは勘弁だ。
何せ三男坊なので貴族的な場に出た事がほとんど無い。
性格的にもそういった場は得意ではないし。
さて、スウォンジー北門駅からシックルード支線経由でアベルタで北部縦貫線に出て、ダラムまで向かう直通特急は1日3往復。
前後とも貫通型運転席という2両編成だ。
この列車はガナーヴィンを2両編成で出発して、途中アベルタでスウォンジー北門からの列車を2両連結、ビーシーツでモーファット領エーロングからの列車を2両連結してダラムへ向かう。
鉄的表現で言えば3階建ての列車だ。
鉄なら連結時は見物すべきだろう。
しかし僕の場合は残念ながら警備の都合で遠慮せざるを得なかった。
これは大変に残念だ。
連結シーンそのものは工房で何回も見た。
だからどう動くかは勿論熟知している。
速度を落として近づくと、そのまま自動でガチャンと連結。
連結器はEF66の密自連と似たタイプでブレーキ用の空気管と制御用の魔力導線も自動接続する仕組み。
連結したら作業員が貫通型前中央の蓋部分を開いて貫通路を作るだけ。
全行程
その辺はよーくわかっている。
それでも現場を見たいのが鉄なのだ。
まあ警備の都合もわかるので我慢するけれども。
そんな訳でスウォンジー北門駅から列車に乗りっぱなし。
それでも車窓を楽しんでいればダラムはすぐだ。
2時間もかからないから。
ダラム駅前は乗換地点及び物流拠点としてダーリントン家がガリガリに整備している。
貴族用ゴーレム車待機・乗降場なんてものまである状態だ。
一般人用の
「ずいぶんとまあ巨大なターミナルになりましたね」
鉄道を運営している張本人の僕もびっくりの状態だ。
勿論設計図は見ているし、開通の時にも此処には来た。
それでもここの規模には圧倒される。
ゴーレム車をさばく為の巨大な広場や乗降場、貨物取扱用専用のホームやゴーレム車積載場なんてのまであるし。
「物流の一大結節点にする、そうリデル先輩が言っていたからね。実際ここの場所だけで結構な雇用を生んでいるらしいよ。ダーリントン領の拠点市場も併設しているし、民間商会の倉庫なんかも近くに増えたしね」
流石
隙が無いというか容赦ないという感じで。
さて、今回は貴族として行くのでゴーレム車も2頭立ての高級車。
王都屋敷から迎えに来て貰った。
ここから王都へは鉄道が無いのでゴーレム車を使わざるを得ない。
しかしここから王都まで2時間もかかる。
スウォンジー北門駅から此処まで来たのと同じかそれ以上だ。
距離は5分の1以下だというのに。
いずれ王都まで鉄道を敷設するのは必至だろう。
勿論すぐには無理だろうと思う。
ここから先は王都直轄領で、国王家直属の代官が治めている土地だから。
王都直轄領を治めているのは準騎士候位を持つ数多くの代官。
それぞれが治めている領域はスウォンジーくらいの広さしかない。
税率や条例は王家直轄領で統一されてはいる。
しかし土地の使用許可等は代官ごとにとらなければならない。
そして代官の中には中央貴族に連なる派閥がいくつかある。
マールヴァイス商会べったりなチューネリー公爵の派閥なんてのもいる訳だ。
だから早期に開通というのは難しいだろう。
直轄領の主である国王陛下の勅命なんてあれば別だけれども。
それでもこの区間に鉄道が無いのは非効率的だし無駄だと感じる。
大型ゴーレム車と言えども列車よりは狭いし乗り心地も悪いし。
魔法で見ると
乗合ゴーレム車、貨物用ゴーレム車、そして僕が乗っているような乗用ゴーレム車と目一杯だ。
それでも今は信号が少ない区間だからまだいい。
この先王都に入ったらかつてのガナーヴィンと同じような渋滞となるだろう。
ガナーヴィンは路面鉄道設置後、あっという間に渋滞が無くなった。
あの実績を知れば
※ 多層建て列車・○階建て
途中駅で連結・解結したりして、運行系統・経路が異なる列車が同じ編成になる列車を多層建て列車と言う。
○ 運行系統・経路が異なる2系統の列車からなる場合は2階建て
○ 同じく3系統からなる場合は3階建て。
以降4階建て、5階建て……と表現する。例えば東北・山形新幹線の『やまびこ』『つばさ』が連結している車両は2階建て。
※ 密自連
密着自動連結器のこと。自動連結器(通称、並型自連結器連結器、または並自連)を改良し、連結時の隙間を極力小さくしたもの。
高速貨物列車に用いられたEF65(F形)・EF66などの電気機関車は、10000系高速貨車用のブレーキホース2本を連結と同時に自動的に接続するようになっていた。本文中でリチャード君が言及しているのはコレ。
ただし現在は10000系の全廃により、機関車側に内蔵されていた空気管は撤去済み。
なお、JRの電車等で使われる『密着連結器』は全くの別物なので注意。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます