第126話 ローラ様向け遊歩道?
シンカンセンスゴイカタイアイスもどき、正式名称『
温かい飲み物と一緒に食べても
勿論味も文句なく美味しい。
略称を何処かで聞いたような気がするのは多分偶然か気のせいだ。
ここは日本では無い筈だから。
僕が最初食べていたのは基本のバニラだけれど、途中でローラのチョコ味と交換した。
こちらも予想以上に美味しい。
なおスプーンは別なので間接キスにはならなかった。
念の為。
「このアイス、やっぱり美味しいよね。1個
「そうですね。でも今日散策するなら、その途中で休憩しながら食べても美味しいでしょうね」
「確かにそうかも。ならお兄、次に車販が来た時にまた買ってもいい? ホットドリンクセットで」
「ええ、大丈夫ですよ」
確かにそうやって食べたら美味しいだろうなという気がする。
だからまあ、それくらいはいいだろう。
それにしてもこのアイス、やはり美味しい。
ブルーベルが試作したものから味が落ちていない。
チョコとかベリーとか味が増えているし。
単価が若干高くなってしまったのは仕方ないだろう。
これだけ濃厚なアイス、多分
「あとは売店でもまとめて買っておこうかな。学校に持ち帰りたいし」
「温かい紅茶とも良く合いますし、冬でもきっと美味しいでしょうね」
お嬢様方にも好評だ。
此処の車内販売はホットドリンク、コーヒーの他に紅茶もある。
僕は普段は紅茶派だけれど、このアイスに関してはコーヒーをあわせていた。
しかし紅茶でも悪くないようだ。
今度試してみよう。
なおこのアイス、僕たち以外にも注文している人は多かった。
なかなかの人気商品の模様だ。
周囲の人の会話によると、どうやら口コミで評判になっている模様。
アイスを食べながら話をして、時々出てくる滝や瀞場等の案内で車窓を楽しんで。
気がついたら大滝入口駅到着だ。
「降りると空気の爽やかさを一段と感じますね」
確かにそうだなと僕も思う。
少しは眠気もさめたかもしれない。
降りた人の半数は滝方面へ直行するようだ。
確かにそれが正しいと思う。
何と言うか、これから渡る橋が……。
さっきまで僕達を乗せていた列車が橋を過ぎていく。
それを見ると歩行者用の通路は一応列車と接触しない程度には離れている。
ホームと列車の関係と同じ程度に。
簡単な鉄柵もあるから落ちるという事も多分無い。
だが、しかし……
「こうやって見るとこの橋、結構高いですわ」
「そうですね」
チャレンジャーな人々が橋を渡り始めた。
それを見ていると橋の大きさがよくわかる。
川までの高さも
これは渡るのを諦めた方がいいかな。
そう思った次の瞬間、既に決断が遅かったと気付いた。
御嬢様の1人が渡り始めてしまっている!
彼女はこともあろうに橋の真ん中、下まで一番高さがあるところまで行って、鉄柵から下をのぞき込んだ。
「下の川も凄く綺麗ですよ! あと風が気持ちいいです」
白いドレスの見覚えのある顔がこっちに向かって手を振っている。
そう言えば……
「ローラ、高い所が好きだよね」
「そうですね」
「大丈夫、足下は石ですから踏み外す事は無い筈ですわ」
「でも突然風が吹いたら……」
「そういう事を考えるのは止めようよ」
ローラ以外に高い所が好きな御嬢様はいない模様だ。
でも仕方ない。
「行きましょうか」
僕は(ローラを除く)先頭に立って歩き始めた。
なお出来るだけ左側は見ないようにする。
手すり代わりの鉄柵がすかすかで横や下が良く見えるから。
◇◇◇
列車から降りて1時間と少し後。
河原に置かれたテーブルセットで御嬢様6人と僕は休憩中。
滝は確かに綺麗だし、空気も清々しい。
しかし何故僕達(1名を除く)はこんなに疲れているのだろう。
理由は明らかだ。
「あの歩いてきたコース、凄く良かったです。山って頂上でなくてもこんなに楽しいんですね」
確かに見晴らし、最高に良かったのだ。
何と言うか、足がすくんで前に出ない位に。
足場が鉄の網で出来た滝方向だけでなく下もよく見える、崖の中途から空中に伸びた観望台とか。
やはり足場が鉄網の、大きな岩の外側を回って渓谷全体を眺められる歩道とか。
鉄道の横にあった橋なんて目じゃない位に怖い、細くて良く揺れて高さもある吊り橋とか。
「また帰りもあの道を通って帰りましょうか? 楽しかったですから」
パトリシアがいつにない目線でこっちを見る。
わかっている、言いたい事は。
だから僕は宣言させて貰う。
「折角ですから帰りは違う道で行きましょう。川の近くを通る道も楽しいと思いますよ」
「確かにそうですね」
明らかにほっとした雰囲気が5人の御嬢様方から感じられる。
無理もない。
僕もそうだから。
「ここの遊歩道、お兄が企画したの?」
「遊歩道が出来ている事すら実は知りませんでした。きっと観光推進部が独自に作ったんだろうと思います」
さっきまでハイキングコースはきっと、ローラと似たような感性の奴が企画・設計したに違いない。
「お待たせ致しました」
昼食一式が運ばれてきた。
此処の昼食とデザートはチーズ尽くし。
まずはチーズフォンデュから。
コンロに載った土鍋内にトロトロチーズが入っていて、用意された具材を串にさしてチーズを絡め、食べるというシステム。
具材は固焼きパン薄切り、小芋(里芋に似た小さい芋)、ニンジン、ミニトマト、アスパラガス、アーティチョーク、ブルスカンドリ、ブロッコリー、カボチャ、ソーセージ3種、ミニステーキ、チキン、キノコ(ボルチーニもどきとエリンギもどき)。
具材が随分と多い気がするのは僕だけだろうか。
種類だけでなく量も。
「普通のチーズフォンデュと同じです。串にさしてチーズを絡めて食べて下さい。
ただこの後、デザートもありますので念の為。
ドリンクはこのピッチャーに牛乳、冷たい紅茶、オレンジジュースが入っています。これも足りなければお代わりが貰えます」
なおメインの食事は他に手巻きタコスセットやお好み焼きもどきがある。
今回は観光推進部お勧め料理という事でチーズフォンデュにした。
それにしても食事関係、妙に凝っている気がするのは気のせいだろうか。
僕の仕業ではない。
観光部がラングランドの
あのシンカンセンスゴイカタイアイスもどきの量産品を作った商会だ。
「それではいただきましょうか」
何はともあれ昼食開始。
※ スジャータ スーパープレミアムアイスクリーム
新幹線の車内販売で売っている『シンカンセンスゴイカタイアイス』の本来の名称。『スジャータ めいらくグループ』の製品。
シンカンセンスゴイカタイアイスとして知られている癖に、通販、駅自販機、挙げ句の果てには近鉄特急の一部でも売っている模様。
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