第30章 それぞれの陰謀?
第121話 温泉観光計画?
温泉がわいている。
僕としては聞き逃せない情報だ。
しかし何かの思い違いかもしれない。
念の為、もう少し詳しく聞いてみよう。
「それはどの辺りで、どんな感じでお湯が湧いているのでしょうか。場合によっては領外の人を引きつける強力な武器になります」
「アオカエンの東
熱いお湯や水蒸気が出ている場所が幾つかある他、付近の河原を掘るだけでも温かいお湯が出てくると聞いています。
地元では野菜や洗濯物を洗ったりして日常的に使っているらしいです。熱い水蒸気が出てくる場所では食べ物を蒸したりもしていると聞いた気もします」
間違いない、温泉だ。
話を聞く限り湯量もそこそこありそうな感じがする。
「リチャード様、何か思いつかれたでしょう」
「そうそう、何かそんな顔をしてる」
ローラとパトリシアに気づかれてしまった。
でもまあいいか。
「ずっと昔に読んだ異国の本に載っていた話になります。その国には温泉という観光施設があって、疲労回復等に効果があるとして人気だそうです。
その観光施設で一番重要なのはお風呂です。地面から出ているお湯を広い浴槽に導いて、ゆっくりゆったりその中に浸かる。
この浴槽は屋内だけでなく屋外にもあったりします。更にただのんびり浸かる浴槽だけでなく、中で歩くことが出来る浴槽、湯気の中で汗を流す部屋、熱くなった身体を冷やす冷たい水の浴槽なんてものもあるそうです」
スーパー銭湯っぽいイメージが混じってしまうのは勘弁してほしい。
前世の僕は、本格的な温泉旅館に泊まった経験がないのだ。
そんなこの場の皆さんにしてもわからないような弁解を心の中でしながら、僕は説明を続ける。
「その国ではこうした浴槽等でゆっくり過ごす事で、疲労回復や難治性の病気に効果があると言われているそうです。勿論治療・回復魔法のように即効性がある訳ではありません。短くても泊まりがけで、長いと数ヶ月くらい、
お風呂の他には宿泊できる場所、のんびり散歩するのにいい場所、他にも来た人を楽しませる施設が多数あると書いてありました。
勿論この国では温泉という施設は一般的ではありません。お湯の成分も、のんびり浸かる事による効能も調べる必要があります。
ですがもし全てが上手くいった場合、このロト山以上の観光地が出来上がる可能性があります」
こんなものだろうか。
なお昔の温泉街にあったようなエロい施設の事は此処では言わない。
言わなくても需要があれば勝手に出来ていくだろう。
「お風呂が主体の観光ですか。想像しにくいです」
「お兄って本当に妙な知識を持っているよね」
「それでも何か面白そうです」
ローラやパトリシアだけでなく、他の御令嬢方も興味があるようだ。
ここで話しても問題になる事はないだろう。
だから思いついた事をひととおり話してしまおう。
「ええ。この国にはない考えというか習慣です。ですから広めるにはある程度、事前に研究なり下調べをする必要があります。
まずは温泉のお湯に浸かってのんびりするという事の効能を調べる事です。このあたりは王立研究所から生物魔法の研究員を招聘して調べればいいでしょう。
あとは施設を本格的に稼働する前に、有名人に試用して貰って感想を出して貰い広告にするなんてのもあります」
「それ、お兄が此処や海水浴、この次に行く滝なんかでやった方法だよね」
パトリシア、気付いたか。
その通りだ。
「ええ、そういった売りになる情報が必要になります。今までにないものですから何故そこへ行くといい事があるのか、わかって貰う事が重要です。
温泉なら疲れがとれる、綺麗になる、健康になる、そういった効能を押し出せるでしょう。勿論調べた上での事ですが、肌の表面を綺麗に保つ事や適度な温浴で身体を刺激する事が身体に悪い訳はありません。ですからその辺は問題無いと思います」
「綺麗になる、ですか?」
おっと、そこに惹かれたか。
ならわかる程度には説明しておこう。
「肌の老廃物を取る事が出来るのはまず間違い無いでしょう。あとは温泉の成分によって性質が違ってきます。不要な角質が取れて肌がすべすべになるとか、保湿成分があって肌の水分を保てるとか。そのあたりは調査結果を待たないとなりませんけれど」
あと、ついでに追加しておこう。
「勿論観光開発するなら温泉だけでは不十分です。特に温泉を売りにするならある程度の滞在が必要ですから、宿泊施設等もそれなりに魅力があるものにする必要があります。
また料理もある程度考えた方がいいでしょう。温泉の蒸気で温められるというのはなかなか面白いと思います。
あとは観光的な見所もあると楽しいです。例えばここの山から見える景色なんてのもそうですし、明日以降に行く滝なんかもそうです。
また雨の日に備えて室内で出来る娯楽もあれば更に楽しいと思います。キューボールやガドライクのような感じで」
キューボールとは地球のビリヤードに似た玉突き遊び。
ガドライクはルーレットとビンゴをあわせたようなものだ。
どちらも王都で学生をやっていればお馴染みの遊び。
「行くと疲れが取れて、綺麗になれて、美味しい料理を食べられる場所ですか。それなら確かに行きたいと思いますわ」
そうそう、そうなれば立派な観光地だ。
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