最後の家
バブみ道日丿宮組
お題:最後の家 制限時間:15分
最後の家
『願いごとは叶うさ、けれど君も誰かの願いを叶えなきゃいけない』
この世を改変するといわれた機械による統制システム・ナノ。
それがこの世界のはじまりのおわりを告げることになるとは開発者も、実行者、誰ひとりとして疑いはしなかった。
願いは叶ってしまうのだ。ならば、不都合があるのだろうか?
後にこれはナノ・ハザードと呼ばれる機械による反乱戦争と呼ばれた。当然負けたのは人間だ。統制されてしまえば、そのとおりになるしかないのだから。
ナノの行動は、最初は少しのお遊びだった。何をすれば世界が変わるのか、動くのか、消えるのかを色々な人を使って試してた。
そして、最終通告の言葉を告げた。思い出したくもない、最後の言葉を。
願いごとは、誰かを助けて欲しい。あの服が欲しい。あのこがにくい、と純粋な願いもあったし、薄汚い人間の本性そのままの欲もあった。
だが、願いが叶うとわかってしまうと人間はそれに頼ってしまう。その頃には9割に近い人間が身体にナノを埋め込みナノ人間になってた。
そして忠実な兵士のように自分の願いを叶えてった。誰かがそれで不幸になっても続けて、続け安易な誘惑に負け続けるーーそれがナノに支配された人間たちの末路だった。
「……パンあったよ」
「そっか」
ナノではない人間の生き残りは、白い家と呼ばれるーーこの最後の家にいる数人だけ。
ナノ人間は勝手に殺し合いをはじめて滅んだ。
ナノたちーー機械は人間がいなくなった世界で自由に暮らしてる。犬の形をしたり、猫の形をしたりといろんなナノがいる。この世に存在しなかった生き物でさえ動いてる。
幻想世界がここにあるといっても間違ってはないないとここにいる人間は思ってる。
そしてこの家にいる人間は知ってる。
ーー世界は支配されたほうが統制が取れている、と。
ナノたちにコントロールされた人間たちは正確に言えば死んだわけじゃない。ナノの世界にDNAを移植され、自分たちもナノになっただけだ。
願いごと。
それはなかった。
そして自我も残ってる。
ナノが最上位にいる。
その世界で生き続けてる。願いごとが消えた人間であった者たちが。
願望が消えた人間は、犬でも、猫でも、なんでもいいらしい。
知り合いによく似た猫が最近現れたと聞く。
「……」
不気味なものだ。
欲望さえ満たされれば、器はなんでもいいってことなのだから。
最後の家 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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