隠れた街

バブみ道日丿宮組

お題:愛と欲望の躍動 制限時間:15分

隠れた街

 愛と欲望に祖先が従った結果、全ての遺伝子に繋がりのある村が生まれ、やがて街となった。その街に招かれた客は二度と外には出られない。そこからまた遺伝子が繋がる。強く濃い血の繋がり。誰もが兄弟であり、姉妹であり、親でもある。それが僕が住んでた街の全容だ。

 蠱毒という呪術をこの村を作る前の人間が壁と一緒に作ったと言われるが、どう考えても街を囲う壁はその時代で作れるものじゃない。

 コンクリート以上の硬さを持つ強度、暗号化されたセキュリティードア。古代文明がいなくなった今、彼らが何か助力をしたとしか考えられない。

 出れた私は、人間の意志を捨てたからこそここにいる。多くの仲間を犠牲にして、多くの代償を払ってようやく、僕は街の外にある病院へと救急車で運ばれることになった。

 

 そして、これまでのことを語るのが毎日の仕事であり、僕だけが生き残ってあの街から逃げ出したという十字架だ。

「はい、それが全てです」

 寝たきりの状態になってでも、外に出れた意味はあったのか。多くの記者たちにあの街の情報を語ったが多くの記者が行方不明ともなった。悲しいとしか感じない。

 いったら戻れないというのにどうしていくのか……欲望は恐ろしい。

「では、やはり危険地帯と指定するしかない」

「ネットでは都市伝説の場所に指定されてますからね、対策の仕様が……」

「壁にさらに壁を作るしかない」

「検問所ですか?」

 今日病院に訪れたのは国の偉い方々。

「おそらく外から何かしても、内部から覗かれますよ」

 無意味になると警告すると、

「ふむ……おそろしいテクノロジーだな」

「それで科学者も行方不明になってます」

 国の偉い方々はため息をつく。

 気持ちはわかる。未知の技術がそこに詰まってるというなら行きたいと思うのが人間の欲望。そしてその血のつながりという怪しい都市伝説に愛を感じるのもまた人間の欲の躍動になってる。

 それが人間であり、あの街を作った恐ろしい心の1つに違いない。

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隠れた街 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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