珍しい組み合わせですわね!

事故からおよそ4時間弱。病室に運ばれて検診受けた時に、年齢やら職業やらを聞かれたりした。


その時に病院から、ビクトリーズの球団事務所に連絡がいって、スタジアムで仕事していた宮森ちゃんの耳に入り、みのりんに連絡してくれたと、多分そんな流れ。





そのみのりんが家を飛び出して新幹線に乗り込んでここまで大急ぎでやってきたというのは彼女の姿を見れば分かる。



だって、ほぼすっぽんぽん。



じゃなくてすっぴんだし、涙を流した跡が残っているし、靴下も微妙に違う色だ。




ともかく突然の出来事で、急に入院することになっから、これからどうしようと不安になっていた矢先だったので、1番頼れて甘えられるみのりんが側にいてくれることがどんなに嬉しいことかと。




それは本当の気持ち。






「そうそう。タクシーが赤信号を停まって待ってたらガツンと来られちゃてさ。いやー、何も出来なかったよ。つくづく事故は怖いなって思ったね。車も乗り始めたばかりだしさ。みのりんも十分気をつけてね。


それはそうと、そろそろオールスター戦始まる時間でしょ? 大騒ぎになってたりしないといいけど」




「もう十分大騒ぎになってるよ。ネットニュースでもトップになってたし、多分夕方のニュースとかも。オールスター戦に向かう野球選手が事故だなんて、前代未聞だよ」





「やっぱそうよねえ」





「さっき、お医者様とさらっと話したんだけど、2日か3日くらい、ここの病院にいた方がいいらしくてね。その間に、球団が契約してる宇都宮中央病院にも手続きを済ませる手はずになっていてさ」




「そうなんだ。それなら私もこっちに泊まろうかな。ちょうどそこにビジネスホテルがあるみたいだし」



「仕事の方は大丈夫?」




「この後連絡して、今週は全部休みにしてもらう。時くんは、着替えとか何か必要なものはある? 近くのお店で買ってくるけど」




「着替えとかは一応3日分くらいは持ってるから大丈夫かな。荷物も全部運び込んでもらったし。なんか適当に雑誌とか、アメとかチョコとか買ってきてもらえる?」



「分かった」



「お金大丈夫?」




「大丈夫。毎月、時くんから受け取ってる分があるし。今年からすごい増額してくれたし」



「ああ。まあ、年俸も上がったことだしね。日頃の感謝ってやつですよ。自分で持っててもムダ遣いしちゃうし」




「マンションの方は大丈夫?1週間も空けちゃったら……ちょっと掃除とかしておこうか?」




「ああ……。そうだね。2、3日なら平気だけど、1週間だもんなあ」




「カギ貸してくれたらやっておくよ」




「カギは……そこのリュックの2番目のポケットにキーケースあるからそこに……」



「あった。これだね」






みのりんはピンクと白のデザインをしているベンチまで持っていく荷物を入れているリュックからキーケースを取り出し、ずいぶんと慣れた手つきで、俺の部屋のカギだけを外した」




「代わりに私の部屋のカギ、付けておくね」




彼女はそう言って、懐から出したスペアキーを空いたそこにカチャリとつけて、元に戻した。



ちゃっかりしてるとか、そういうレベルに収まっていないやつ。もはや恐ろしさを感じる。こっちは自由に首を動かせない状況ですし。




その後みのりんは、看護師さんに許可をもらいながら夜8時過ぎにまた病室を訪れ、いろいろと買ってきてくれたものを置いていった。



そして若干とんこつ的なオイニーが。




俺はどうしてこんなことになってしまったんだろう。せっかくのオールスターだったのにと落ち込みながらも、まあ前半戦の疲れをリフレッシュ出来ると思えば、それはそれでいいかと考えた。




来年も頑張ればまた出られるチャンスが来るかもしれないからね。




その日は晩飯を食べて、おやつを食べて、体をきれいに拭いて早めに就寝。




朝になればまたみのりんに会えると起床したところ、現れたのは平柳君とキッシー。




飛行機で第2戦の会場である和歌山に移動する前に来てくれたみたいだ。



俺のおケツを誰よりも狙う、球界ナンバー1ショートストップと、ハイブリッドクローザーの不思議な取り合わせだ。



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