まだポニテちゃんルートがあり得るかもしれないし。

「今、ビクトリーズにいるトレーナー陣の中では、わいが1番年長者やからな。みんな試合前からマッサージやら選手のコンディション管理やら色々あるわけやし、1番年上の人間がやった方が何かと都合がええねん」




「確かに。今日来る生徒さんの中に、俺の知り合いの子がいるんで宜しくお願いしますね。山名って女の子でして」



「へー、そうなんか。みのりんちゃんには内緒の女の子ってわけやな! アハハハ!」



葛西さんはまるで、俺がポニテちゃんに隠れて何かしてるかのような感じでみのりんを引き合いに出す。



「いやいや、その子はみのりんとも仲いいんで」




「なんや、そうなんか。つまらんなあ」




葛西コーチはそんな風にがっかりしながら、俺のと同じチャーハンを取りにいき、テーブルに着くと、それをマッハで平らげた。




「ほな! わいはお迎えに行ってくるかな。ちゃんとウォーミングアップやってからトレーニング始めるんやで!」



「分かってますよ!!」



「また後でな!」


そう言い残し、あっという間に食堂からいなくなった。




俺は玉ねぎの入った卵スープをゆっくりと味わいながら、外の景色を見ながらチャーハンを食す。



今日はポニテちゃんが間近で見ている試合だから、最低でもホームランを2本は打ちたいわね。








「よーし、練習始めるぞー!!」





「「ウイッス!!」」





全体練習前は、サブグラで早打ちをしていたやつ。


露魔野君や守谷ちゃん、並木君といったレギュラー争い中の選手達。



監督やコーチと面談していたやつ。



来週辺りにまた先発で1試合行ってくれだったり、今週は中継ぎ待機などと、配置転換を支持された投手数人。


マッサージやウエイトトレーニングしてたやつ。



阿久津さんや鶴石さん、奥田さんなどのベテラン勢。



さっき起きたばかりのような顔で、これから試合前練習とは思えないくらい気の抜けているやつ。



俺。





キャプテンの一言で今日先発の小野里君以外の、だいたいの選手が揃い、ランニングから開始する。



俺はゲーム部の部員であるキャッチャーな北野君と列の真ん中に位置して、次の日曜日の夜のプレイについての意見交換をする。



前回、敵の空爆がきた時、逆の建物に逃げ込むべきだったとか。



あのステージは、ここから攻めた方がいいんじゃないかとか。もうちょっと丁寧にクリアリングしないとなあとか。


アップデートで強化された武器の詳細だったり、新武器の性能だったりを確認し合ったり。



野球よりも真剣である。




ランニング、ストレッチ、ダッシュ、キャッチボールを済ませるとあっという間にバッティング練習の時間だ。



今日の俺の順番は早め。10分ほどバックネット前でティーバッティングをしてからバッティングケージの中に入った。





「宜しくお願いしますっ!!」



「はいよっ!」



ヘルメットを外しながらバッティングピッチャーおじさんに挨拶をして足場を軽くならす。


まずはバントの構えをして、ハーフスピードのボールをど真ん中に投げてもらい、3塁線1塁線にそれぞれ1球ずつバント。



双方いい感じに転がったので、ピンクバットを高く構える。




そして鋭く振り下ろすことを心掛ける。




カキィ!




1球目から快音響いた。



打球がライナー性になり、右中間の真ん中に弾む。



よしよし、いい感じだ。



俺は前日までの好調さを今日もある程度キープ出来ていることを実感しながら2球目、3球目と打ち返す。




アウトコースは右方向へ。真ん中、インコースのボールはピッチャー返し。高めも低めも緩い変化球も。



上げた足にタメがしっかり入り、その感覚でタイミングを感じながらスムーズにバットが出ている。



割り当てられた7分のバッティング練習時間が少し長く感じてしまうくらい。



そのくらいに、今の調子の中ではバッティング練習でやることはない。



そんなレベルに到達しようとしていた。




とはいえ、鬼コーチ達が目を光らせているので、エンドランを想定している体で、1、2塁間にゴロを転がしたり。



低めのボールを外野の定位置より深いところまで飛ばしてみたりと、自分の中でシチュエーションバッティングをやったりして、余裕の30秒残しでフリーバッティングを終わりにした。


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