まあ、このくらいはね。
「それではまず、皆さんにその北関東ビクトリーズの今日のスタメンをご覧頂こうと思います。
1番セカンド守谷、交流戦は初スタメンです。2番はショート浜出。2年目、ショートでの出場はこれが初めて。3番センターはルーキーの露摩野。愛知ドラゴンス戦でプロ初ヒットを放ちました。ドラフト3位ルーキーです。
そして4番サードは、なんと新井時人です。プロ初の4番、今までレフトしか守っていなかった新井がプロ初サード。さらに今日は臨時のキャプテンも務めます。交流戦は絶好調の新井です。
5番キャッチャー北野はビクトリーズ移籍後1軍初出場となります。守備力には定評のある北野です。
6番はレフトに先発ローテーションピッチャーの連城です。もちろん野手としては初出場。7番にはファーストで李。台湾出身のリ・ロンパオが入っています。ビクトリーズのセットアッパー。今年もそのピッチングは好調です。
8番にはライトに碧山。こちらも2年目ローテーションピッチャー左投げ左打ちです。そして今日のビクトリーズにDHはありません。9番ピッチャーには小野里耕平が予定通り先発のマウンドに上がります。
えー、実にスタメン9人中小野里を含めまして、4人がピッチャーと。レギュラー選手というところでは新井のみ……その新井がサードに入り、浜出、北野というところが今シーズン初スタメンとなっていますから………なんと言いますか、ビクトリーズにとって今日は大変な1日になるかと思います」
「そうですね。最後まで試合が辿り着くのかも心配になりますよね」
「さあ、そういうわけでして、1回表、北関東ビクトリーズの攻撃が始まります。1番の守谷が左バッターボックスに入ります。ハードバンクス、先発は岩川。これがちょうど10日ぶりのマウンドになります。
サインの交換終わりまして、第1球を投げました! 高め、スイングしていきました! 空振りです1ストライク! 初球は高めのストレート、146キロです」
「よーし、いーよ、いーよ!」
「振ってけ、振ってけえっ!!」
いつもなら2番ですから、1番バッターが打席に入っている時は、ネクストのわっかで準備しているところですが、今日はちょっと違う。
守谷ちゃんのスイングと相手ピッチャーの球筋を確認しつつ、声援を飛ばす。
今日は4番ですからね。いつにもまして強打者のオーラと言いますか、ホームランバッターとしての凄みのようなものがひしひしとほとばしっているのを自分でも感じますよ。
「高めストレート! 空振り三振!! 1番の守谷は1ボール2ストライクの4球目を振っていきましたが、三振に倒れました」
非常にノビあるように見えたストレートに守谷ちゃんのバットは空を切った。
彼はしまったと悔しがりながら走ってベンチに戻り、俺の隣へと戻ってくる。
「結構ストレート速そうだったね」
「いやー、すみません! タイミング早めに取ったつもりだったんすけど、最後の高め振らされましたね。くっそー」
守谷ちゃんはちょっと息を切らすようにしながらバッティンググローブを外し、それをヘルメットの中に放って入れた。
守谷ちゃんは高めを振らされてしまったけど、彼よりも小柄な浜出君はそのボールを2つ見極め3球目の低い変化球を見逃した。
「んー、ハードバンクス岩川。2番の浜出に対しては3ボールとなってしまいました」
「岩川投手は前回登板、フォアボールからランナーを貯めてしまって失点に繋がるようなピッチングですから、そこは修正していきたいところですね」
「そうですね。2軍では3イニングをしっかりと0で抑えてという結果を残しての今日の登板ですが…………。これも高め外れました2番の浜出にはストレートのフォアボールということになります!」
アウトコース高めに浮いた真っ直ぐを見送り1塁に歩いた浜出君。ナイス、ナイス。ちょっと相手ピッチャーはコントロールがまだ定まっている感じではないですね。
「3番、センター、露摩野」
「ロマーノ! 甘いところだけよ、甘いところだけ!」
「はい!!」
ネクストのわっかから打席に向かうロマーノは、俺に強く返事を返しながら力強い足取りでバッターボックスに向かう。
しかし打球はカッスカス。
変化球にタイミングをずらされ、ボールはバットの先に当たり、スピンするようにキャッチャー前へ。
それを拾って2塁へ!
というところだったが、浜出君のスタートが良く、キャッチャーは無理をせずに1塁へ送球した。
よーし、2アウト2塁。4番の前にランナーを置くという形になったね。苦しゅうないぞ。
「さあ、ビクトリーズファンにはお楽しみ。新井がバッターボックスに入ります。今日が交流戦12試合目ですが、新井はここまで35打数17安打と当たっています。現在のところですど、交流戦のMVP候補と、非常に好調です」
「出来れば本人はいつもの2番というところで打席に立ちたいところでしょうけど。今日はそうも言っていられませんから。……しかし今日の新井くんはいつにもまして気合いが入っているように見えますね」
オーソドックスな右ピッチャー。昨日、一昨日の試合でデッドボールをもらってちょっとゴタゴタがあったりしているので、普通に考えればインコースはちょっと投げにくい状況になっているのはこちらにとっては好都合。
今、コントロールが安定していないピッチャーならなおさらだ。
だから初球から既に狙い澄ましていた。アウトコース、ストレート。ベルトより少し低いところ。
しっかり左足を踏み込んで肩に乗せたバットをコンパクトに出した。
カキッ!
芯食った打球。
ジャンプするファーストの頭を越えた。
「上手く打った! ライト前に打球が落ちます! 浜出は3塁を回る! ライトからボールがバックホームされますが………ヘッドスライディング、セーフ!!なんと、この試合先制点はビクトリーズに入りました! 4番新井のタイムリーであります!」
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