18話 神々しきお茶漬け

 神様のお茶漬けは、一味違う。


 そもそも、『お茶漬け』と一言では表現できない。


 材料が米と茶である点は同じだが、眩しいほどに発光している。黒く青く、ときどき白く点滅しながら、まるで生き物かのように呼吸を繰り返す。


 とても美味しそうには見えないが、これもまた、一つのお茶漬けの形なのである。


 さて、そろそろ食べようか――と、神様が両手を合わせたところで、玄関チャイムが鳴った。


「創造神さまー!七福神様からお届け物ですー!」

「おや、何かな?」


 包んでいる風呂敷を解くと、それは重箱だった。そして、その中に敷き詰められていたのは……。


「これは福神漬けじゃないか!こうしちゃいられない!七福神様からこれをもらったからには、カレーを作らなければ!」


 創造神は、お茶漬けをほったらかしにして、カレーを作り始めてしまった。もちろん、彼は知る由もない――そのお茶漬けが、のちに『宇宙』と呼ばれるようになることを。

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