11話 22:00の幽霊

 22:01発の電車で出会った幽霊は、こう言った。


「気になるなら、教えてやるよ。俺は"22:00の幽霊"なんだ」


 ……なんだそりゃ。時間も、死んだら幽霊になるのかい?


「そりゃそうさ。俺たちは、次々に死んでいくんだ」


 そういうもんなのか?


「そういうもんだぜ。俺は死んだ――だから、今日という日の22時は、もう二度とやってこないのさ」


 じゃあ、死んだ時間はどこへ行くんだい?


「別に?どこにも行かないさ。あんたの中に埋葬されて、積み重なっていくだけだよ」


 少し嬉しそうに、ソイツは笑った。


「……それじゃ、俺はそろそろ消えるよ。"明日の22:00"にも、よろしく」


 それっきり、ソイツの声は聞こえなくなった。


 ふと気付けば、知らない駅名のアナウンスが鳴っている――どうやら、目的の駅を通り過ぎてしまったようだ。


 参ったな。


 このままじゃ、23:00の幽霊にも会ってしまいそうだ。

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