12話 すっぱい葡萄の木

「あの葡萄はすっぱくて、とても食えたもんじゃない」


 狐のその言葉を――しかし、狸は信じませんでした。


(騙されないぞ。きっと、ほっぺたが落ちるほど甘くて美味しいに違いない)


 狸は、葡萄の木に登ろうと決心しました。


 木登りの技術を磨き、知識を深めます。葡萄は木の頂上にあったため、滑り落ちないように準備をし、練習と努力を重ねました。


 そして、ついにやり遂げました。夢にまで見た葡萄。狸は恍惚とした表情で手を伸ばし、実にしゃぶりつきます—―


「すっぱい!!!」


 あまりのすっぱさに、狸は足を滑らせました。身につけた知識も技術も、重力には抵抗できません。


「ほら、すっぱかっただろう?」


 落ちた先には、柔らかい感触。気付けば、優しく微笑む狐の顔が目の前にありました。先駆者の彼は、すでに同じ失敗をしていたのかもしれません。


 こうして、狸は一つ賢くなり、狐はまた一つ優しくなったそうです。

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