3話 卒業する者、される者

 僕たちの教室が失踪した。


 体育館で行われた卒業式のあと、教室に戻ろうとした僕たちだったが、誰も目的地に辿り着くことは出来なかった。今朝までは確かにそこに存在していたはずの教室が、忽然と消えてしまったのだ。


「どうして消えちゃったんだろう……」

「最近、真面目に掃除をしていなかったせいか?」

「こき使われて、嫌気が差したのかな?」

「いや……もしかすると、逃げ出したのかもしれないぞ」


 その言葉に、皆がハッ――と息を呑んだ。


「ほら、俺たちがここの最後の卒業生だろ?校舎だって、来年には取り壊されるわけだし……それを察して、あの教室は逃げたのかもしれない」


 などと様々な憶測が飛び交ったが、結局結論は出ないまま、僕たちは悶々としながら下校した。


 次の日、奇妙な噂が僕たちの耳に届いた――隣町の学校で、教室が一つ増えるという怪事件が起こったそうだ。


 ……どうやら、あいつは転校したらしい。

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