【still Alive】無双できないスキルなので、知識とハッタリで乗り切ります!~転生者だらけの異世界は、俺達に超絶エグい極上ファンタジーでした~ (表紙イラスト有り)
猫鰯
still Alive【無双できない世界なので、知識とハッタリで乗り切ります!】
プロローグ
【転生者】
「あれは平成のケツや! 間違いあらへん!」
……またコイツはおかしなことを言いだしたぞ、と。
前方にいる、モデルみたいな雰囲気の女性を指しての言葉だろう。たしかに、ヨーロッパ風にまとめられた街並みを颯爽と歩く姿は、それだけで雑誌の表紙を見ているみたいだ。春先の少し暖かい風がそよぎ、軽くウェーブの掛かったセミロングの髪をフワっと揺らす。街路樹の緑の香りと相まって、一度見たらなかなか忘れられないほどのインパクトがあった。
「そう……なのか?」
「そうや、キョウジ。お前なんもわかってへんなぁ。あの引き締まった感じは平成や! 人類の至宝や! 特にスポーツやってたケツの引き締まりは最高なんやで! いつまでたっても幼女ばかり追いかけているからそんな事も解らんのや。蒙古斑Loveかオマエは!」
「なんだよそのパワーワードは。ったく、インド人もビックリだわ。そもそも俺には幼女趣味はねぇ!」
コイツのおかしな言動は今に始まった事ではない。何故かわからないけど、タクマはこちらに転生した時からおかしなエセ関西弁になり、おまけに”少女声”になってしまった。高校からの腐れ縁だが……こいつ、転生のショックで頭のネジでも飛んだか?
……なんて考えていたら、通りの反対側にいる親子連れの会話が聞こえてきた。
「ママ~。あの人、独りでぶつぶつ言っているよ」
「しっ、見てはいけません。可哀想な人なのだから」
♢
半年前、猛暑日の出来事。友人二人と乗っていた電車に、暴走した車が遮断機を超えて突っ込んできた。重軽傷者二十名以上、死者三名を出す大事故であった。……まあ、その三名が俺達でここに転生したわけなのだが。
異世界もののアニメが流行っていた頃「日本人は異世界転生が上手い」とネットで皮肉られた事もあったが、それは”大きな間違いであった”と気付かされた。
それというのも、この世界は八〇年程前に最初の転生者が現れ、それを皮切りに日本人どころか“世界中のあらゆる所から”転生者が出現し始めた。
そして今や【この世界の人口の四割が転生者】だ――
各国の転生者は文化や技術を持ち込んでこの世界を再構築し始めた。今いる街のこのエリアは、どことなく北欧っぽい要素が垣間見える。この辺りに文化を伝えたのが北欧系の転生者なのだろう。
「これだけいれば適当に石投げても転生者に当たるよな」
「ゆうても、びっくりしたインド人にはまだ
さきほどの親子連れの会話がまた聞こえてくる。
「ママ~あの人……」
「あれはね、病気って言うの。危ない人だから近づいちゃだめですよ」
……傷つくなあ、もう。
「やかましい! そこのガキなんやねん、食っちまうぞコラ!」
……お~い、やめてくれタクマ。
”可哀想で危ない病気の男”に怒鳴られて驚いた親子連れは、逃げるようにその場から離れていった。申し訳ない気もするけど、まあ、静かになっていい。
この『あの人、独りでぶつぶつ言っている』ってのは転生してから半年、ずっと言われ続けている。そしてこの先も言われ続けるのだろう。それというのもコイツ、タクマのおかげで俺は変人扱い。
以前見た物語でスライムやクモに異世界転生した話があったが、よりによってタクマは……
【石】になりやがった。
石だ。テニスボールサイズの石。無機物! 象が踏んでも壊れない! つまり俺が持ち歩いてやらないとずっとその場から動けずにいる。川にでも投げ込めば永遠にそのまま川の流れのままどこかに行くのだろう。試してみたい衝動に何度か駆られはしたが……
そしてどういう原理か知らないが、しゃべる。一応目も耳もついている。鼻は……多分なさそう。何というか、某・竜探すRPGに出てくる爆弾的な岩みたいな見た目だ。アレにぶっとい眉毛を描いた様な感じ。
一番厄介なのは、こいつの声が俺の推し声優【悠木ヤヨイ】そっくりであり、そのためなんか捨てられずにいる事。それはテレパシーといった類のものではなく普通にしゃべるものだから、周りの人からしたら俺は
”声色を使い分けて独りでしゃべっている危ない人”
となってしまうのだ。……勘弁してくれ。
「おい、キョウジ」
「ん?」
「ここ離れたほうがええで」
「……」
視界の遠くに警察官らしき人がこちらに歩いてくるのが見える。警察官と言っても、街の自警団が組織化されて規律で動いているだけのようなものだが。
「あの母親が通報したんやろな」
「多分そうなんだろうな~。って、誰のせいだ!」
「人のせいにしたらあかんで~」
あーマジ投げ捨ててぇ! 毎度毎度のこんなトラブルに慣れてしまった自分が悲しいわ。……さっさとこの場を離れよう。そしてとりあえずは今夜の宿を探さないとだ。
続く
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「あとで☆増やしてくれてもええんやで~」(タクマ談)
この後も、是非是非続けてお付き合いください(/ω\)
……というか損はさせないので是非読んでね(*´▽`*)
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