ゲーム

僕はゲームを愛している。

特に【英雄物語】というタイトルの

アドベンチャーもののRPGだ。

小さな頃からゲームを買ってもらっては

コツコツと素材を集め

レベル上げをして

強い敵に挑んで

負けてはリセットし

セーブした続きから何度も繰り返した。

そしてゲームのストーリーをクリアしては

あとは広大な綺麗な世界を

冒険するのが好きだった。


だがいくらゲームをやり込んでも

満たされない何かがあった。

それはなんだろうと考える間でもなく

明確だった。

それは現実感だ。

どれだけ技術が進歩して映像が綺麗になっても

ゲームという概念は絶対にぬぐえない。


ゲームを楽しみながらも

何かが物足りないと感じていた僕の

日常に変化が起きた。


ある噂を聞いたのだ。

なんと神様が願いを叶えてくれるという

噂を耳にした。

僕は特に信じてないが

その神様がいる神社とやらが

近所なので気まぐれに出向いてみることにした。


神社の鳥居をくぐった途端

前の本殿の方からおかしな形の光が

こちらに近づいてきた。

ビックリする間も無くその光は声を発した。


「願いを一つ叶えてやろう」


噂はホントだったのか!

これが願いを叶えてくれる神様か!

不思議と怖さはなく状況を飲み込んだ。


願いを頭の中で整理した。

現実感のあるゲームがしたい

もっとクオリティの高いゲームがしたい

何年もやり込めるゲームがしたい

次々と候補は出たが最終的に出た答えはこれだった。

ゲームの世界に入り込みたい。


これを思いついてしまってからは

これしかないと思った。

次の瞬間には口を開いていた。


「ゲームの世界に入りたいです!」


すると神様は

「なんのゲームだい?」


と返してきた。

ずいぶんテンポの良い返答に驚きはしたが

僕は何のゲームかを考えた。

だがやはり【英雄物語】だろう。

これしかなかった。


「英雄物語の主人公にして欲しい!」


そう声に出した瞬間だった。

僕の目の前は広大な自然が広がる世界に

なっていた。

体の血がたぎるのが分かった。

これだ!

僕がまさに欲していたものだ!

リアルな風、広大な世界、

本物の人間のようなNPC。

僕はワクワクが抑えきれず

最高の一歩を踏み出そうとした。

だが動けなかった。

体の自由が効かないのである。


動き方があるのか?

などと考えていると体が勝手に

僕の意志とは関係のない方へと

走っていった。


僕の体は乗っ取られているかの様に

腰からツルハシを手に持ち

草や岩などの素材を集めていた。

そして武器を作った僕は

弱い獣やゴブリンなどを

ひたすらに何度も何度も討伐した。

疲れた。。。


何百体と倒している内に自分が強くなるのが

分かった。

レベルアップしているのだろう。

自由な動きこそ出来ないが僕は目の前で起こっている現状に満足した。

今はツラい下準備を終えて

ストーリーをクリアさえしてしまえれば

後はこの広大な世界を満喫できる。

そう思っていたが、

目の前に何度も見た事がある

強敵の騎士が現れた。

僕の操られた体は騎士によって一瞬にして

真っ二つに切られた。

痛いっ!!!

こんなにもリアルなのかと考える間も無く

意識は一瞬消え

気づけばまた目の前には騎士がいた。


さっきよりも5秒ほどは粘ったが

またしても真っ二つに切られた。


何をしている!!

この騎士の攻略法はそうじゃない!

この騎士の弱点は足だ!


僕がそう思ったところで関係なく

僕の体は何度も何度も騎士に

切り裂かれ続けた。


だが少しずつ騎士相手に粘るように

なってきたのを感じて僕は

もう少しの辛抱だと思った。


すると、何処からともなく

僕の頭に大きく響く様に

声が聞こえた。


「あ〜あ飽きたな」


その声と同時にプツンと視界が暗くなった。

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