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そして、戻ってくる。
「いま来るって。わたしの端末の位置情報で」
「ああ。部屋に行こうか」
「ううん。ここで待つ。来なかったら迎えに行かないと」
『その必要はないよ』
「あ?」
「ん?」
「あ、いやすまん。今度は俺だ。服を」
外に出る。
「なんだ。俺はもう」
『死んだか。生きてるじゃん。彼女と一緒になる決意で記憶取り戻したか?』
「おい。なんで知ってる」
『わたしだし』
「は?」
『わたしだよ。わたし。歩待恭可さんを狙ってるのは、わたし。っていうか違うな。前提が違うわ』
「わからん。いやおまえ、女?」
『女だよ?』
「うそだろ」
『待ってろいま向かってっから。わたしはね。ふたりのことが好きなんだ』
「は?」
『ふたりが一緒にいて、その間にわたしは挟まりたい。歩待恭可と塘長近の、結婚指輪に。わたしはなりたい』
「いや、わけが」
『だまれっ。わたしがどんな気持ちで過ごしてきたか、わかんのかお前に。好きなひとがふたりいるっていう、そういうなんか世間的にゆるされないもののせいで、どんなにくるしんだことか』
「浮気性なだけじゃねえか」
『おいてめえ身体洗って待ってろよ。ぼごぼこにしてやる』
「身体洗っていいんだな?」
『あっ待ってやっぱり洗わないで待ってて』
車に、戻る。
「俺の知人だった」
「ん?」
「いまから来るやつが。俺の知ってるやつだった。顔は知らないけど」
「なんか、そんな気がした」
「そっか」
「お部屋、入っていい?」
「ああ。行くか」
ふたりで。
車を出る。
「風呂は入らないで待っていてほしいそうだ」
「そうなんだ」
ふたりで。
思っていることは、同じ。
「よし。めちゃくちゃ身体」
「綺麗にしましょう」
部屋に入って。
「あいつのくやしがる顔が楽しみだ」
浴室に。
「あら。大きなお風呂」
「あわあわになる機能もあるぞ。で、これがタオル」
「ありがと」
彼女が、来ただろうか。
浴室の窓の外で、バックライトが点滅している。
ランデヴー・バックライト 春嵐 @aiot3110
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