第三話  え、

 「ふ、不幸だ。後輩ちゃん助けて」

 「黙ってなさい、このドアホ。それとどこぞのラノベ主人公のセリフ抜き取るな」

 「少し古い…?」

 「そういう意味じゃない!!」


 ガツン、と蹴りを入れられる龍宮院先輩。そのまま気を失ってしまった先輩に何処どこからか持ってきたロープでソフィア先輩は身動きを封じている。私もその作業をなぜか手伝うことになり、ため息をついた。が、それはソフィア先輩の衝撃的な発言に打ち消されることに。


 「三年生なんですか! ソフィア先輩って」

 「ええ。意外だった?」


 つい大声を出してしまった私だが、それを咎めることはせず、ただ肯定する先輩。やはり肝が据わっている、慣れてるかもだけど。


 「すごいですね。私は、てっきりこの時期は引退してるものだと…」

 「他の部活はそうでしょうね。の高校は知らないけど、うちは受験に命をかけてるから。だから、この部活でも三年は私のみ。ここは一人欠けるだけでも負担が大きくなるから、ギリギリまで活動することにしてるの」 


  ブラックだからね、と愛想笑いしているが、言ってる内容がちっとも笑えない。下手したら私の代もそうなの? だとしたら勉強の方が心配…


 「それと、」

 「?」

 「


 上の空になる私に、その時のソフィア先輩の表情は確認出来なかった。

 気がつくと、私は部室に案内されており、ゴロゴロと転がる円柱の如く付いてくる竜宮院先輩がいた。起きたのだろう、色々と執念がすごい先輩。


 「だ〜れ〜か〜ほ〜ど〜い〜て〜〜」

 「誰も解かないわよ。大人しく自身の罪に懺悔しなさい」

 「ぼ〜く〜が〜な〜に〜を〜し〜た〜」

 「後輩にゼロ距離で近づいた挙句、その場でとてつもなく重大な話をしようとしたじゃない、許すまじき行為よ」

 「く〜そ〜が〜」


 なす術もなく、壁にコツンっとぶつかりそのまま沈み込んでしまった竜宮院先輩。結構呆気なかった。


 「じきに復活するでしょ。そんなにキツく縛ってないから」

 「そうなんですか」

 

 感心する私を他所に、ソフィア先輩は部室に前進。彼女の後ろを付いて行き、私は昨日の場所にたどり着いた。

 教室の筈なのに、座布団が置かれる様態は異様なのかも知れない。昨日と同じく机と椅子は積み上げられており、代わりに広いスペースを保っている。


ーーこの前は私が来てからちゃぶ台と座布団を出してたけど、今日は最初から出てる…。


 真ん中に置かれたちゃぶ台を向かい合うように座る二人の生徒。そのうち一人には見覚えがあった。


 「獅子路、先輩?」

 「あん? ……てめーは、昨日の一年生か」

 「ケンジの知り合い? こいつは驚いた。ケンジにもついに友達が…」

 「ちげーよこのバカが。この部活の新しい後輩だ」


 なんだ、と残念そうに口を尖らせクルッと体の方向を変える先輩。黒髪での束感ショートヘアでスタイリッシュな体型を兼ね揃えた生徒がそこにいた。


ーーえ、この部活美形しかいないの?


 龍宮院先輩、獅子路先輩も中々だったがこの人もそれに劣らない。テレビで出演する並のカッコ良さだった。


 「放送部に入部するの?」


 胡座をかきながら私と相対する先輩に気が動転するが、「多分、、そう、です」とどうにか返事をする。

 そっかーと言って彼は笑顔を貼り付けて調子のいいトーンで。


 「やめとけば」


 無慈悲な言葉を喋った。

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誇大表現にご注意を! 柄山勇 @4736turtle

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