第二章
第0話 恐怖
????視点
「それで、調子はどうだ?」
広く高価な物品な物品が並ぶ大部屋。中央に腰掛ける男は無駄に仰々しく、ゆとりのある口調で目の前にいる私に問いかける。
「任されてる仕事についてなら特に問題は…」
「そちらの話ではない。私が言ってるのは、この学校において必要不可欠な存在についてだ」
「……亀裂についてでしょうか?」
私が言うと、うむと男が頷く。
指し示す事実を間違えてしまったことに冷や汗を流しながら慌てて私は手に持つ資料に目を向ける。
「内情についてはまだ生徒は気づいておりません。知り得てるのは例の放送部だけかと」
「ふうむ、やはり早々に潰しておくのが得策か。亀裂の数はどうなった?」
「旧校舎にあった二つが放送部にやられ、残りは五つ。そろそろ増やしてもいいように思えます」
「そうか。ではめぼしい人間を洗っておくとしよう。実験所の設備は整ってるか?」
「幾つか薬品が欠けてきましたが、まだ大丈夫です」
よし、と断言する男。最初の頃は計画にあまり乗り気ではなかった彼も今では随分とやる気に満ちている。それだけ対価となる報酬が大きいのかもしれない。
ーーでも、そんなの今の私には関係ない。
制服を着込んだこの身体。自分の物であるはずなのに、頭のてっぺんから心臓まで別の何かでできている。
契約の代償によってこういう事情が結びついた。元凶は目と鼻の先に居るが、喩えナイフだろうがマシンガンだろうがこの男にチリ一つ通用しないだろう。効く効かないじゃない、そういう風に教育されているからだ。
ーーどうして、私は…こんな場所に……、
「黄昏るのもいいが、俺が誰であるか忘れるなよ」
「っ!?」
瞬間、硬く握られた拳が額に当てられていた。いつの間に移動したのか、そんなの私が知る由もない。椅子から立ち上がった男は耳元で酷く冷たい言語を囁いた。
「なんのためにお前を生かしてやってると思ってる。雑用は利用価値のある仕事だが別に誰に任せてもいいんだぞ」
言われた刹那、私の膝がカクッと崩れる。咄嗟に右手で勢いを封殺するが、間に合わず顎が地面とぶつかり、頭が前に下がる。結果として
膝が抜けたのは疲れているからではない。この男が何か仕組んだのだろう。
ーーあんな非人道的行いを実行し続ける人間だ。頭のおかしい力の一つや二つくらいあってもおかしくはない。
こちらを見下ろす男に私はなんとか救いの目を向ける。このままでは殺されてもおかしくない。
暫くして、男は首をひねくり回すと、上機嫌に口を開いた。
「声に出して、三回唱えろ。校長の命令には絶対だと」
「………校長の命令には絶対、校長の命令にはぜっt、、」
「声が小さいな」
「く、……校長の命令には絶対!!、校長の命令には絶対!!!、校長の命令には絶対!!!!」
喉が壊れそうな声量で大声を上げた私に満足したのか、男、いや校長は屈み、
「それを忘れるなよ」
キンコンカンコーン。
校長室にチャイムが鳴り響いた。
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お久しぶりです。
不定期ですが、第二章の開幕です。楽しんで読んでもらえると幸いです。
それと、第十一話の台詞で変なところがあったので修正しました。
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