第11話 わたし
???視点
私には部活で部長を努める成績優秀な高校三年生のお兄ちゃんがいる。側から見れば私はお兄ちゃんにぞっこんであり、それはそれは色んな意味で愛していた。
そんなある日、友達からある噂を耳にする。
何やらお兄ちゃんと生徒会長、
それを聞いた私の内情はどうだって?ーもちろん数週間は大洪水を起こし続けたよ。一番悔しいのは、それが世界でたった一人のお兄ちゃんの願いと日常の態度で分かってしまったことだから。
淋しいといえば嘘になる。本当は甘えたかった、もっとベタベタくっつきたかった。周囲の人間からどう思われても私のお兄ちゃんは思い出の中の、白馬の王子様というイメージにピッタリ。私以外の誰かと一緒に居るところなんて想像したくなかった。
だから……だろうか。
「私なら、君の願いを叶えられる。邪魔者を追い払って二人だけの居場所を作る方法を教えて欲しいかい?」
こんな提案を持ちかけられた時、私は首を横に振れなかった。
〜〜〜
「さて、泣き止んだかな」
「っ、…」
男は私の目の前でずっと泣き終わるのを待っていたらしくこちらを眺めていた。そこには本来想像していた残酷で冷徹極まりない人物像はなく、一人の人間を気遣う優しい学生が映し出される。
現在の自分の心は昔みたいに穏やかだった。それを認識して、私は上を見上げる。どこか遠い星空に向けて口ずさむように。
ーー今は落ち着いてるけど、結構な頻度で私は私自身じゃなくなっちゃう。お兄ちゃんがいなくなった時点で予想はできてたけど、すごく、すごく嫌な気分だよ……。
それはあの校長と契約を交わした時に気づいていたことだった。途中で何かがおかしいと悟るも、もう戻れないと自負したあの時。お兄ちゃんと生徒会長に不幸を背負わせて後悔を催したあの時。
この契約そのものが断片的にも全般的にも間違っていた。そう結論せざる終えなかった。
「一つだけ教えてよぉ」
「何かな?」
「生徒会長はどうなったのぉ? 亀裂になっちゃったのぉ?」
彼に質問をすると、ただ淡々と言葉が流れ出た。
「なんとか生きてる。もっとも寝たきりだけどね」
「……良かったぁ、安心したぁ」
「そう、か。君はそう思うのか」
微妙な間が訪れた。解釈の不一致であるか、用途知れないがしばらくして彼がパンと、拍手を行うと静かに私と向き合った。
「決断は済んだかい」
「嫌と言ったら止めてくれるぅ?」
「その場合、僕は君の意志が飛んだ瞬間を狙わなければいけない。しかしそれは君の願いではないはずだ」
そう言って彼は私の宙に浮かぶ顔のてっぺんに右手を乗せると、そのままスローで左右に往復。いわゆる、なでなでという名の行為を行い始めた。
少し驚くも次第にその仕草に甘えてしまう。
「……長い間、利用されるだけの人生を送ってきた君に僕なりの慈悲のつもりだ」
「ありがとう」
「礼はいらない。……君の願いは自分が自分であるまま消えてしまいたいというものだから」
「ん、でもこんなに消えることが心地よいことだなんて知らなかったぁ」
頭を撫でられる頭から紫色の気味の悪いガスが排出される。それは今まで溜め込んだ悪意の象徴。それを浄化という儀式によって外に放出させていた。
だが、まもなくそれも終わる。
「さようなら、
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最近、更新が滞っていてすいません。
あと事実が明らかになるのは次の話まで待ってください。
遅いですが章という区切りをつけました。一応残り一話で第1章完走です。
プライベートよ、早く暇になれ!!
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