第7話 間違い
きりがいいので短めです。
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「さて、今から君にはあるものを探してもらう」
先輩はそう言ってポケットからぐしゃぐしゃに折り畳まれた紙切れを取り出す。文字が刻まれてることからメモ用紙の切れ端と予想をする。が、どうやら大事なのは材質ではなく綴られた内容らしかった。
「見えるかい?」
紙に書かれた落書きのようなものを指で示す。目をグッと細めて注目すると、黒のクレヨンで描かれた黒い棒線が映される。乱暴に表されたその絵は園児の技量で描かれたと言われても疑わない。何を元に書き込まれたのか理解できない、そんな絵。
「不気味……ですね」
「違いない。でも実物はもっと恐ろしい。見た誰もが凍りつくからね」
「実物? ただの落書きでは」
「いいや、学校の至る所に出現するこれは生徒に悪影響を与えているよ」
「とても信じられません。そんな非現実的なこと」
子供、いや悪ふざけがすぎる生徒の悪戯ではないだろうか。それに学校のあらゆる場所に言うけど目撃したなんて生徒は聞いたことがない。
ーー何かの冗談じゃないの?
私の疑問が伝わったのか先輩は慣れた様な手つきで頭を支える。
「別に今信じろとは言わないよ。この場で聞かされて、はいそうですかと頷く人は稀だからね。…けど、物的証拠を間近で見たその瞬間、君が今のように否定するかはわからない」
そう言って先輩はある方向に目をやる。それは先程「骨が折れる」と発言した地点の方角と一致しており、気になって視線を向けると隣の部屋に続くスライド式のドアが置いてあった。
「隣の部屋が気になるんですか?」
「調べるのはいつもはあっちなんだ。この部屋ってごく例外を除いたら安全な方だし。でも匂いの原因は気になる。うーん、どうしようか?」
彼はこちらに選択権を委ねるべく目線を部屋から私に入れ替える。試すように向けられたその瞳には何か感情が詰まっている気がした。
「どうしよう、とは?」
「今からこの落書き模様を探してもらうんだけど、あっちの部屋にもありそうだからどっちから探そうかなって話」
「そんなの先輩は決めればいいじゃないですか。私よりこの学校長いんですし部活だってあるんですから尚更です」
先輩の問いかけに私は質疑を繰り返す。すると彼は苦笑いを浮かべて指先で短い髪の毛を弄りながら口を開いた。
「でも下校時刻も迫ってきてるからさ」
意味がわからない。帰りが近いならとっとと落書きを見つけて下校すればいいじゃないか。それをまるで会話をうすめてるように回りくどい言い方をして。
ーー何がしたいの? この先輩。
苛立っていた。会話の前後がつながっていないこの先輩の言い方に。
だから、思わずこう言い返した。
「じゃあ先輩が奥の部屋を調べてください。私がこの部屋をやるので」
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