ピーキーな武器を持ちたい


 屋上ね


「昨日さ、パニック映画見たのよ」

「おう」

「あの手の映画でモンスターに人間が敵わないのって、弱いからじゃん」

「そうだね」

「そこで人間の戦闘力を底上げするもの、即ち武器」

「持ちたいね」

「銃もかっこいいけど、どうせならピーキーなやつがいいよね」

「然り」

「何がいいですか、って話よ」


 ピーキーなやつを持ちたい。橋本はそれに同意する一方、しかし同時に王道も愛する。


「だが俺は日本刀」

「おいずりぃぞ。かっこよすぎるだろ。ピーキーじゃねぇし」

「異世界ものだとピーキーになる」

「東の方の国のやつな」

「勿論和服、黒髪ポニーテールの真面目バカ」

「"共に風呂に入るのは当然だろう? 裸の付き合いと言うやつだ"」

「"ま、まさか貴様、私の裸に欲情するというのか!?"」

「"は、恥を知れ!"」

「"理不尽だ〜!"」

「武器の話をしようよ」


 仕切り直し。


「日本刀は前傾姿勢で肩に担ぎたいね」

「戦い方がちょっと乱暴な奴だ」

「山下はどうなの」

「俺はね〜、トランプかな」

「かましてくな」

「マジシャンがやるパって出すアレは練習したから既にできるのよ。ほら」

「"ふん、貴様の手の内は知っている。既にエースを4枚切ったな"」

「"わざわざ数えてたのか。御苦労なこって。俺にはまだ……コレがあるんだよッ!"」

「"そ、それは……ッ!? ジョーカー!?"」

「これだとトランプ基軸の異能力者になりそうだな」

「それも良い。投げ物だとナイフもありだね」

「ジャケットの内側にホルスターがいっぱい」

「女キャラだと太もも」

「"へへ、ネェちゃんキレイな足だな。お? なんだそっちも乗り気……!?"」

「"知らなかった? キレイな薔薇には、棘があるのよ"」

「あれも好き。持ち歩くときは手のひらサイズで、なんかスイッチ押すとジャキンって伸びて棍になるやつ」

「伸縮機構で相手の腹か顎に一発入れる」

「その後無駄に振り回す」

「#無駄に洗練された無駄の無い無駄な動き」


 山下はそれをイメージしてか棍を振り回す動きをするが、洗練されていないただの無駄な動きである。


「扇子もかなり人気だよね」

「あれなー、最初に考えた人天才」

「笑うときに扇子で顔半分隠す高飛車女キャラ」

「和服かチャイナドレス」

「戦闘中に"退屈ですわぁ"って言いながら扇子扇いでる」

「本当に怒った時も顔の半分扇子で隠す」

「その奥には鋭い眼光」

「"貴方には少々、お灸を据える必要がありそうですわね"」


 橋本の「次いこう」の一言で話題は次の武器へと移る。


「本来武器じゃないもの持ってるのもいいよね」

「そーだね。例えば〜……あ!」


 山下は屋上の出入り口へと駆けていくと、ほうきと由佳を携えて戻ってくる。


「え、由佳? 連れて来んの早くね?」

「ほうきはドア横のロッカーのやつ。この人は丁度ここにいた」

「また屋上いんのかなって思って」


 山下は自分の着ていたパーカーを脱ぐと由佳に渡し、ブレザーを脱いでそれを着るように指示する。


「で、これ持ってそのハシゴ登って」

「何で?」

「いいからいいから」


 由佳は訝しげな表情をしながらも山下の支持通りパーカーを着て、ほうきを持ち、ドアの上の給水タンクの横にはしごを使って登る。


「でー、タンクの手前で仁王立ち!」

「ほうきは肩に担いで」

「もっと胸張って偉そうに!」

「自信に満ちた目で睥睨して」

「もう片手はポッケに入れて!」


 二人はその絵を見て思わず「おお〜」と感嘆を漏らす。


「バトルものじゃないな。ドタバタ青春もののポスター。ちょっぴりファンタジー要素ありかも」

「後ろに入道雲があったらなぁ〜!」

「監督:細田守」

「主人公は男勝りな性格の女子!」


 二人の向けるスマホによって何枚か撮影されたのを確認してから、由佳は声を張る。


「お前ら、なんかジュース奢れー!」

「ヒュー! 最高!」

「解釈一致〜」


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