ギャルゲーの主人公になりてぇよなぁ


 橋本宅。本日もジギルを交えて3人( ? )でゲーム。


「ギャルゲーの主人公に、なりてぇなぁ」

「どうした、山下」

「なりてぇよなぁ。」

「まぁ。」

「こんなかにギャルゲーの主人公なりたくねぇやついるー!?」

「いやなマイキーだな」

「これでトーマン盛り上がる名シーン」

「そいつら本当にヤンキーか?」


 反応を示さずあつ森に集中するジギルを置いて会話は進む。


「ギャルゲーの主人公ってさ、親いないじゃん。死んでるか海外で、一戸建てに一人。」

「羨ましいよね。親に不満があるわけじゃないけど。」

「そう、そう。まぁ俺の親は人間と時間感覚違うから普通に長期間消えたりするけど、ヒロインはいない」

「ん? クオーターなら片親は人間じゃないのか?」

「疾うに眷属よ」

「あらそう」

「そこで、こんなヒロインが欲しいな〜〜って話。するよ。まずは王道、毎朝起こしに来て飯も作ってくれる世話焼き幼馴染」

「此方に拒否権はないのね。いいけど。その幼馴染、メシマズヒロインでもありだろ。そうすると一つ素晴らしいイベントが発生する」

「詳しく……聞かせてもらいましょうか」

「才色兼備な黒髪ロングヒロインが何からかのイベントで主人公に手料理を振る舞ったとする。主人公はどんな反応をする?」

「"うわっ……! すげぇ美味い! 涼子( 仮 )、料理美味いんだな!"」

「そう。すると、メシマズヒロイン幼馴染は……」

「ごくり……」

「必死に料理を練習するシーンがうまれる、ってワケ」

「ブラボー!」


 山下は思わず立ち上がって拍手する。


「因みにその才色兼備はめっちゃモテたり……」

「します。先日先輩であるバスケ部キャプテンに告られ、フりました」

「学内でファンクラブがあったり……」

「します。クラスの立ち絵無し陰キャは画角の端っこで彼女の良さについて語り合ってます」

「性格は勿論……」

「クールです。皆が色眼鏡で見てくる中、変わらずに接してくれる俺君にいつの間にか惚れています。」

「実はぬいぐるみが好き」

「その通り」


 解像度に差がある気もするが、とりあえず2キャラ出た。まだまだ続くよ。


「じゃ、次は俺からプレゼンしよう。ズバリ、金髪ロング! 当然留学生で、ある……。」

「ほう。」

「今回は……途中からの参戦にしようか。俺君を取り巻くヒロインズに嵐が吹き荒れる。アメリカからの留学生、席は俺君の隣」

「おやおや、転校生枠まで持ってくとは」

「彼女はアメリカ人ですからねぇ、文化や価値観が違います。ハグ? そんなの当たり前でしょう。多少仲良くなったら頬にキスだってしますよ」

「ひより( メシマズ幼馴染 )( 仮 )『ちょ、ちょっと急に何してんのよ〜!?』」

「リアーナ( 金髪留学生 )( 仮 )『オーウひよーりサーン、そんなにオコってどーしたんですカ?』」

「ひより『お、お、おおお怒ってなんかないわよ!!』」

「しかも留学生のホームステイ先はなんと……」

「まさか……」

「俺君の家! 海外赴任の親が向こうで知り合った家の子供だったんです!」

「かましすぎ〜。俺父『仲良くなってそのまま結婚、なんてなっちまうかもな! ガハハ!』」

「リアーナ父『いくら俺父の息子でもそれは許さんぞ! なんてな、ガハハ!』」

「俺『はぁ……あのアホ親父め……!』」

「これは幼馴染だまっていられないな」


 メシマズ幼馴染、才色兼備黒髪ロング、金髪留学生。早々たるメンツが出揃ってきた。


「なんかメインは揃ってきた感あるねー」

「そうだな。これ以上は一部から絶大な支持を得てサブヒロインのくせにピクシブのイラストは一番多いような奴になってくる」

『ひとつ、いい?』


 すると、ここまで黙っていたジギルが口を挟む。

 拒むことはない。が、ジギルとはいえ甘い採点はできない。二人は腕を組み、値踏みするような視線をジギルに向ける。


「話してみな」

『俺君の家には俺君と留学生。どう転んでも肉体関係に発展するのは明らか。高校生なんてそんなもんだからね』


 悠久の時を生きてきた悪魔が言うと簡単には反論できない。


「だ、だがそうなってしまった。ジギル君、どうするつもりだ」

『ここに、もう一人同居人を追加する』

「……! き、キサマッ! 正気かッ!?」

「いやまて山下。……ジギル君、続けな」

『もう一人の同居人。それは……拾った捨て猫。』

「ま、まさか……!」

『翌朝、目が覚めると何か柔らかい感触がした。微睡みの中、薄く目を開く俺君。』

「俺『ん、なんだこの感触は……? ま、まさかまたリアーナの奴……! え?』」

『「むにゃむにゃ……あ、ご主人さま、おはよう。まだ眠いにゃぁ〜。一緒に寝るにゃ〜。」』

「ブラボー! あまりにも! ブラボー!!」


 山下は涙でも流しそうな顔で、本日二度目のスタンディングオベーションを敢行する。

 と、同時に。

 ガチャりと部屋のドアが開かれる。


「山下くーん、お菓子持ってき……あ、ジギル君もいたのね」

『こんにちは、お母さん』

「どうも。これ、ポテチ入ってるからみんなで食べな」

『恐縮です』

「ショー、アンタジギル君のこと人に言いふらしてないでしょうね」

「山下だけだよ」

「そ。ならいいけど。じゃ、ごゆっくり。なんなら晩飯食べていきな」

「あ、はい、どうも。」


 扉が閉まり、山下は二人を交互に見る。


「なに?」

『どうしたの?』

「ジギル、母親公認なの?」

「おう。」

「……懐ふっっか。橋本、お前戸建て一人暮らしだったらなぁとかわがまま言うな、アホ」

「隣の芝生は青く見えるんだよ」

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