第101話 最強の称号、或いは黒衣の七人と狩人連盟、またの名をホワイト・スノウ戦役


 サム・トールマン。

 ゲルトルート・ブラック。


 彼と彼女にとって、最強という称号には他にはない意味がある。


『存分に可愛がってやるぞ、ひよっこ共』


 そんな言葉から始まった、浅黒い肌の巌のようなカイゼル髭の少佐――サー・マーク・ベケットとの出会い。

 炎に包まれた自国を前に奮起し志願した民間人たちへと脊椎接続アーセナルリンク手術を施し、機動兵器の駆動兵へと変える施策。

 そんな民間人上がりの部隊の指揮官だった男だ。


『どこまで走ればいいか、どうやって走ればいいか、いつまで走ればいいか、何のために走ればいいかはワシらが示してやる。お前たちは、一番困難な――走り切るということに集中しろ。それをお膳立てするのがワシら上官だ』


 辛く、厳しく、それ以上に逞しく頼りになる男だった。

 熱心に戦闘の基礎を叩き込み、体力錬成にも率先して取り組み、部下の最後の一人まで課題ができるまで付き添い続け、どんなときでも相談に乗ってくれ、簡潔明瞭な方針を直ぐに決断してくれる。

 サムもゲルトルートも、他の皆も、兵隊としての基礎はその少佐から養われたと言っていい。

 アーセナル・コマンドとモッド・トルーパーの混成部隊を指揮し、衛星軌道都市サテライト海上遊弋都市フロートの地上戦力と戦う日々。

 恐ろしく、寒々しく、しかし確かに反抗の火を灯し自国を守ろうと立ち上がった――という自負のある日々であった。


 効果は上げていた。

 地元出身者などを募り、自らの勝手知ったる大地での地の利を活かした戦闘。

 如何に《仮想装甲ゴーテル》という強固な装甲と戦闘機の如き戦略機動性を持ち合わせようとも、占領を行う以上は大地に足を止めねばならない。つまりその戦略的な機動性も十分に発揮できない。

 アーセナル・コマンドの最大の利点は、増設ブースターによって弾道ミサイルじみた速度の突撃を戦車同然の装甲で行える機動性と装甲性と火力発揮時間のバランスだ。つまり、そこが崩れれば兵器としての弱点が露呈する。

 元よりと名付けられた以上、その得手は防衛ではなく強襲。

 強襲後に占領を行ったそんな敵部隊を逆に包囲し、集中した火力で撃破していく――それがサー・マーク・ベケットと、その麾下である部隊の役割だった。


 だが――……


『クソッタレ……少佐の機体が撃破された! 敵の新型は予想以上だ……各自、撤退戦に移行しろ! この戦線は保たない! 繰り返す! 各自、撤退戦に移行しろ! クソ――ッ!』


 燃える夜の森の中、既に中破した機体から脱出したゲルトルートの耳元で無線からそんな指示が飛んだ。

 快進撃のような反抗作戦が成立したのも、ある時点までだった。

 衛星軌道都市サテライトの新型機体――狩人狼ワーウルフ

 その実装配備と共に、戦線はまさしく狼の群れに喰い破られるかの如くに破綻していく。


 第二世代型は、明確に対アーセナル・コマンド能力を獲得した機体であり、その力場と推進剤を利用した急速戦闘機動――バトルブーストによって、誘導兵器のことごとくが無力化されていった。

 大人と子供か、それともジェット機とレシプロ機か。

 彼我の戦闘速度には大いなる隔絶が与えられた。これまでのように半ば足を止めた撃ち合いではなく、慣性を感じさせぬほどの超高速移動を行う敵機との戦闘。


 何一つ、培った撃破戦術が成立しない。


 かろうじて相討ち同然にサー・マーク・ベケットが中破させた機体以外、その装甲の僅かすらも砕くことが叶わなかった。敵の装甲回復時間を、こちらの火力投射時間が上回れない。

 そのまま敵の包囲網によって味方が次々と撃破され、そして彼らの混成兵力である第一・五世代型の火吹き竜フュルドラカによって、逃げ込んだ森ごと焼き払われていた。


 黒絨毯に火を放ったかの如く、夜の森は煌々と焼き尽くされる。


 火勢は業火を為し、辺り一体に炎の壁を作り上げた。それらは地上に太陽が顕現したかの如く闇を押し退け、暗夜に踊る炎が光源となり、曇天の雲をスクリーン代わりに鋼の人狼たちの影を天空へと悪魔めいて投影する。

 逃げられぬと理解するには十分。

 如何な人間とて、生存を許されない灼熱地獄。二足歩行する狼の悪魔たちが跋扈し、容赦なく天へと棚引く黒煙が彼女たちの生存を絶望視させる。

 撃墜前に機体から逃れたとて、最早死は免れまい。

 巻き上がる火の粉が――……そして火の粉を弾きながら燃える木を薙ぎ倒して今まさにゲルトルートの目の前に現れた狩人狼ワーウルフとその銃口が、僅かな希望をも塗り潰した。


 だが――その剣は強く、己はと示す。


『――こちらグリント−09オーナイン。十秒で接敵する。生身を隠せ。各員何かに身体を固定し、耳を塞げ』


 無線が鳴った。

 広域周波数。つまりは敵軍にも到着を察知されるもの。

 それにも関わらず、その駆動者リンカーは己の到達を味方に伝えた。

 敵機たちが怯えたようにこちらに構わずライフルを構え直し、四周を警戒する。

 そして、無限に感じるほどの十秒の後――――暗夜の彼方から、それは来た。


 凶き流星。


 光を纏い、衝撃を放ち、夜空にあって消えぬ陽光。

 天から振り下ろされた一振りの剣。

 夜の森の中、猛烈な突風と熱波が吹き荒れる。中高度での壮絶な爆発――――切り離した増設ブースターを用いた自己突撃掩護。


「……よく耐えた」


 燃える火が弾けて掻き鳴らす乾いた音、空気が膨張して震える音、燃焼した素材の水分が爆裂する音の中――確かにその声は聞こえた。

 彼の肉声が聞こえた。そんな気がした。

 まるで、鋼。

 鋼の落ち着きと力強さを孕みながらも――しかし声色に緊張や気負いはなく、吹き抜ける一陣の風が如く静寂を湛えた清涼さ。聴く者の心の吹き溜まりを抜けて安心を与える響きに、ゲルトルートは己の心臓の騒音を忘れた。


 そして――炎を断って、それは来た。


『え……』


 紅蓮の炎の壁を砕いて現れた切っ先。

 飾り気もない大剣が突き出され、そして、正面から巨大な人狼の胸部を貫いていた。

 片腕一本。

 紅蓮に炎が燃え盛る煉獄の中で悪魔の胸を貫く銃鉄色ガンメタルの鉄騎士という、宗教画めいた場違いな神聖さを持つ光景を目の当たりにする。

 そして、


『《指令コード》――《最大通電オーバーロード》』


 呟きと同時に、迸る紫電。

 胸に剣を突き立てられた人狼が、その内側から弾け飛ぶ。銀血を撒き散らしながら爆裂し、散弾じみてその友軍たちの力場を貫いて装甲を砕いた。

 炎が踊る。

 放射に遅れて吹き戻すその突風により、無秩序に増殖するように暴れるのみに留まっていた緋色が統制され、あたかもその存在の質量に吸い寄せられるように一点目掛けて集中する――刹那、銃鉄色ガンメタルの装甲表面に弾けて飛び退く焔の荊。

 それは、炎の騎士だった。炎の魔剣だった。


『グリント−09オーナイン……』


 友軍の誰かが呟いた。

 それは、希望の名だった。

 滅びの日を否定すべく、神の杖に打ち据えられて炎に包まれた保護高地都市ハイランドの中から立ち上がった英雄。

 不屈なる連盟旗の守護者。

 無比なる刃。錬鉄の騎士。希望の守り人。

 開戦から戦い続ける――壮絶なる猟犬の生き残り。


『暇がないため殺害したが……一度だけ呼びかける。速やかに武装を解除し、投降しろ。如何に侵略者といえ、無為にその命を失うべきではない』


 火災に包まれた木々に囲まれながらも双剣を手に直立する機械騎士からの、どこまでも淡々とした無線音声。


『投降は怯懦ではなく、人命は無為に損なわれるべきではない。……どうか懸命な判断を。速やかに武装解除し、投降せよ。抵抗の結果は、待ち受ける無意味な死だけだ』


 決定的な処刑人の刃のような――熱を持たぬ声。


『貴官らもまた、尊い人命の一つだ。……投降せよ。死に急ぐ必要はない』


 だが、返答は大口径ライフルの銃口だった。

 当然だろう。

 第一世代型アーセナル・コマンド一機に対して、敵は十二機の第二世代型アーセナル・コマンド。

 機体の質が違う。数が違う。

 投降の理由はなく、燃える森の中で人狼たちに囲まれるのは機械騎士の側だ。

 だが、


『そうか。……殲滅を開始する』


 命を惜しんだ口調と同じままに告げられる、静かなる絶滅宣言。

 そして実際に――その言葉は、実行された。


 驚愕した。

 絶句した。

 畏怖した。


 相手の新型機体に、保護高地都市ハイランドの如何なる武力も対抗できない。こちらが開発した筈のアーセナル・コマンドは既に衛星軌道都市サテライトに先に行かれた。ミサイルのシーカーすらも振り切る急速的な戦闘機動も、こちらが先んじたというのに、量産に漕ぎ着けたのは敵が早かった。

 そんな、開発に対する地力の違い。

 だというのに、その男の機体はただ二振りの剣を用いるだけで――それを地面に突き立て、或いは敵機の返り血たる銀血を纏い、それらを代替させることでバトル・ブーストと遜色ない機動を行って敵に追随していた。


 それでも、同等とは言えない。

 無論――……

 新たな戦術機動であるバトル・ブーストの存在を存分に認知しているような、或いはそんな新機能についての十分なシミュレーションを行っているような、理想的な機動を十二分に見聞きしたような――まるで違いすぎる練度。

 殺意の質が、量が、桁が違う。一個とての重さが違う。


 炎の中で振るわれる、何一つ寄せ付けない絶対的な殺戮の刃。


 右の大剣で機体を両断すると同時、掻き消えるその機械騎士は――左の剣で敵機の胸を貫いて現れる。

 絶命した敵機体を弾丸への盾に用い、散弾として使い、そして再びの急速機動と共にその背後に回り込もうとしていた敵機の胴を突き貫く。

 弾雨の中で陰ることなく振るわれる二本の大剣。

 閃光が煌めき、剣閃が奔る。

 揺るぐことのなき斬撃と、緩急を織り交ぜた殺戮機動。

 唯一無二にして、精強無比な処刑刃。


 師であるマーク・ベケットが、敬意を評していた一人の青年。


 焼け落ちる都市の中で、その背に全ての命を背負ってたった一人で立ち上がった真の騎士道の持ち主。

 力場の鎧すらもなく、味方一人すらもなく、唯一の武力たるアーセナル・コマンドを半壊させながらも敵の半数を撃滅し、――と明日の命のために保護高地都市ハイランドの旗を掲げ続けた不屈の男。

 開戦から戦場の空を飛び続ける一羽の黒い鳥。

 進み続ける真の猟犬。天性の狩人。


 ベケットの縁者であったマーガレット・ワイズマンという貴族の少女が、両親から受け継いだその私費全てを投じてでも死地に赴くこととなったというその理由。

 死したる命が最期にそれを眺め、安堵と共に逝くという看取りの炎――。

 その奮戦と精神を指して、保護高地都市ハイランド連盟から一代限りの名誉爵位を贈られた青年。


 サー・ハンス・グリム・グッドフェロー。


 保護高地都市ハイランドの抵抗の象徴たる、究極の武力の一つだった。

 不毀なる剣の、その主。


『……彼は?』


 そして高速の戦闘が終了し、全員の撤退が完了した先で――機体から降りた黒髪の青年は、ゲルトルートたちの大隊へと問いかけた。

 その問いかけが何を意味するかなど、知れている。

 誰かが力なく首を振り返せば、


『……そうか』


 まるで何の感慨もなさそうに、彼はそうとだけ頷いた。

 そしてそのまま、淡々と続けられる。


『次席の者の階級は? ……専門的な士官教育や兵教育は受けているか?』


 どこか、杓子定規にも聞こえる声色。

 あらゆる感情を廃して、ただ戦場にのみ注目する無駄のない兵士。騎士と称されるには、あまりにも遊びがなさ過ぎる――ゲルトルートの中の彼への印象は、どこかそんなものに変わり始めていた。

 そしてそれが決定的になったのは、部隊の現状を確認して頷いたその後の彼の言葉によってだ。


『……この部隊は解散になるだろう。保護高地都市ハイランドはそう判断する筈だ。サー・マーク・ベケットのような十分な指揮官がいない民間人上がりの部隊は、存続の価値もないと。……ある種の事実だ』

『っ、アンタ――』


 その言葉は、まるで死んだマーク・ベケット少佐の生前の行為が全て無駄なものであると――ある種の侮辱にすら聞こえた。

 食いかかったゲルトルートへ、無感動なアイスブルーの瞳が向けられる。


『何か? それとも貴官は、十分な指揮が取れると自負しているか?』

『それは――……』

『他の者も同じらしいな。……よほど、サー・マークも育成の時間がなかったのだろう。戦の素人たちの引率を任されたともなれば、無理もあるまい』


 万物を超越者の視点で鑑みるような、その言葉。


『そも平時ではなく戦時で士官の教導するなど、あまりに馬鹿げた行為に分類されよう。……あまりにも、同情すべき保護高地都市ハイランドの愚策と言える』

『っ、そんな言い方――――!』


 反射的に、ゲルトルートはその黒髪の青年の胸倉へと掴みかかっていた。

 死したる少佐は愚か者で、自分たちには価値がないと言われた気がした。

 自分たちはいい。だが、部下たちのために懸命に尽くしてくれたあの少佐を否定することだけは到底聞き逃せる言葉ではなかった。

 だというのに、胸倉を掴み上げられた青年は、


『……警告するが、その手を戻せ。それに実行力が伴っている以上、俺は大憲章に基づき応報する。しなければならない。相手が何であっても、だ。……理解はできるか?』


 それでも手を離さないトゥルーデを、癇癪を起こした子供を無感情に眺めるような冷たい瞳で、


『彼を殺したのは、俺か? 俺が彼の胸に刃を突き立てたか? 容易い路傍の石か何かのように命を奪ったか? 確認だが、俺が彼を塵芥同然に斬り捨てたと……そう認識しているのだろうか?』

『それは――……』

『……或いは真実そう思っているなら、貴官はある意味でなお勇敢と呼べるな。師を滅ぼした仇を前に素手で攻撃に及べるならば――……なるほど、ならばとうにその機体によって直接の仇は討っていよう。それは、心から称賛に値する勇気だ』

『っ、――』


 皮肉を交えて告げられる、有無を言わさぬ断絶の声。

 その声色からは単純な質問や感想にも聞こえたし、だからこそ、ある種の諧謔や侮蔑を含んだものとも思える。

 感情を介さないような、澄んだ声。

 理性という水をかけて感情を冷まさせようとしているような冷ややかな湖面の声。

 青年は更に言葉を続けた。


『怒るならば、俺に向けてではないだろう。その区別はつくだろうか? ……ならばいい。まだ、正常な判断能力はあるようだな。部下が狂気に身を窶していないことは、師たる彼へも手向けとなろう』

『アンタが……アンタがベケット少佐を語るな……!』

『……そうか』


 僅かに黙った彼は、それから、呟いた。


『……ついてはふと疑問なのだが、貴官が少佐を語るのは如何なる理由から許可されるのだろうか? 今後のためにも聞いておきたい』

『……ッ、こいつ……!』


 また掴みかかろうとしたトゥルーデを、サムが背後から抑えかかった。

 それを目の当たりにしても、ハンス・グリム・グッドフェローという男の瞳には何一つ怯えた様子もなく、つまりトゥルーデという存在をまるで歯牙にもかけぬという有様で、何の感慨すらもなさげにただ眺めていた。

 究極的な無関心であり、何もかもを無価値と断じているかのようだった。


『あまりの醜態には、師である彼の責が問われよう。留意はすることだ。……死したる故人にさらなる汚名を着せたいならば、それも構わないが』

『うるさい……! アンタは……アンタは――……!』

『……よほど彼への恨みでもあるのだろうか。そうも少佐は、劣った指揮官だったと言いたいのか?』

『――――』


 心のどこかで――憧れていた。

 師がそうも褒めそやす青年は、どんな人間なのだろう。

 あれほどまでに絶望的な開戦からも戦いの道を選び、幾多の決死の戦場を乗り越え、数多の戦友の死を目にし、如何なる不利にあっても保護高地都市ハイランド連盟の旗を掲げ続けられるとはどのような軍人なのだろう。

 伝え聞く勇猛な戦果を挙げ、人々に明日を夢見させてくれる青年は、どんな人なのだろう。


 誰かは言った。――彼こそが、明日へと掲げる光だと。

 誰かは言った。――その死のときも傍らに佇み、最期まで見送ってくれる仁者だと。

 誰かは言った。――彼と戦うならば、死すらも恐ろしくないと思える鉄血の英雄だと。


 最強と呼ばれる者は数居れど、最高と呼ばれるのは限られている。

 決して友軍を見捨てず、敵軍へも騎士道に基づき投降を呼びかけ、決して法規範を犯すことなく、あらゆる負託に応えて最も困難な戦場でのみ立ち続ける真の兵士。

 そう聞いていたというのに……。

 死したるマーク・ベケットは、最期まで彼の名を挙げて部隊を鼓舞していたというのに……。

 あんなふうに、こちらを助けてくれたというのに……。


『アンタみたいな……アンタみたいな男が最強だなんて、あたしは納得しない……! それじゃあ、ベケット少佐が報われない……!』

『……』

『絶対に……絶対にアンタを追い越してやる……! あたしが……! あたしたちが……!』


 そんな英雄に対してはあまりにも無礼で、身の程を全く弁えず、ある意味での宣戦布告に等しいはずのトゥルーデの言葉さえも――


『そうか。……何にせよ、励むことだ。それは、生き延びなければ成就できない』


 他人事のように頷く彼には、まるで響かない。

 野風が側を通り過ぎても揺らがぬ大樹か、春風の心地よさに微睡む猟犬か。トゥルーデのそれを、敵対的な意思と見做さずに受け止めているとしか思えなかった。

 あたかも、お前など敵にする価値すらもないと――そうとでも言いたげに。

 そうとしか、見えなかった。


『死は相手を選ばない。くれぐれも、師の後を追わぬよう気を付けるといい。……死ねば無意味だ』

『――――』


 限界だ。

 そんな故人への侮辱に等しい言葉がその口から放たれると同時に、ゲルトルート・ブラックの理性は抑制というものを手放して殴りかかっていた。

 結局、そんなトゥルーデの無礼を厭った者から退席を命じられ、彼女を取り押さえるサム・トールマンと共にその場から引き剥がされていた。


 故に――。

 回収されたマーク・ベケット少佐の焼け焦げた機体を前にしたゲルトルートは、涙を拭いながら拳を握る。

 二人の道は、この日、定まったと言っていい。


『……決めたわ、サム』


 即ち――


『……最強の名は、あたしが取るわ』


 ――あの最強ほしを、撃ち落としたいと。


 それ以上に、


『サム、あたしたち……強くならなくちゃ……』

『……』

『あたしたちが、保護高地都市ハイランドなのよ……あたしたちこそが、そうであるって明かりを示さないと――』


 きっと、彼も変わってしまったのだ。

 誰かによって――何かによって。

 ハンス・グリム・グッドフェロー本人に対しての親しみや、思い入れはない。交流もなければ、その個人性についての情報も記憶もない。

 だが――敬愛するサー・マーク・ベケットが、あの不屈の彼こそが貴なるものが持ちてし義務ノーブレス・オブリージュの数少ない体現者だと呼んでいたならば、それは真実だったのだろう。

 しかし、その輝きは、きっと曇らされた。


『駄目なのよ、頼りきっちゃ……そんな人に頼るばかりじゃ駄目なの……そうしていたら、きっとそんな輝きは、遠いどこかに行ってしまうわ……』


 彼に対しての感情はなくとも――それが孤独にどこかへ行ってしまうことは、だと判るのだ。

 だから、掲げなければならない。

 何にも揺らがず、何にも掻き消されぬその旗を。

 自由と、公正と、博愛を報じた旗を――掲げ続けなければならない。


『ああ。……誓おう、トゥルーデ。俺たちこそが、最強なのだと』

『ええ。……あたしたち一人一人が、保護高地都市ハイランドの火を絶やしちゃいけないんだから……』


 その後、機体搭乗前に敵特殊部隊の襲撃を受け――爆弾の破片によってサム・トールマンは脳を損傷。同じくゲルトルート・ブラックも脊椎を損傷する。

 そして二人は、ある再生治療を兼ねた傷痍軍人に対する再起プログラムの被験者となる――――。



 ◇ ◆ ◇



 大いなる蝶の羽が高速振動を起こし、その高周波に指向性を与え――――力場にて集中照射を実行=収束型音響ビーム攻撃兵器。

 銀の触腕の周囲に放たれる、フラクタル幾何学的の創り上げる渦めいた不可視にして予測不能な高密度の力場の破壊茨。

 広域に発散させた力場を流動させ、岩石や砂塵を念動力じみて投射する力場利用型質量兵器。


 及び突風。

 及び熱風。

 及び爆風。


 そのいずれもが、アーセナル・コマンドの師団を葬り去るに容易い殺戮機構だった。破壊兵器だった。神話大戦的な現代の伝説だった。

 だが――変わらず。

 砂埃に塗れてなお、その三機の装甲の輝きは変わらず。


「――【ルースター】、破壊を実行する」


 果たして――幾度目になろうか。天に蠢く銀の触腕が、弾かれる。

 計算しつくされた僅かな時間差にて全く同一の着弾点目掛けて吸い込まれる弾丸が、その機体の膨大な力場を喰い破りながらも突き進み――やがて遂には装甲を砕いて銀血を舞わせる。

 応報たる他の触腕と不可視の力場の棍棒も、全く掠りはしない。


 急速戦闘機動――――しかしながら、このアーク・フォートレスにとってそれは決して把握不可能な絶影の機動にあらじ。


 自己の力場の低減を把握するシステムを元に、この超重力場とも言うべき広域の《仮想装甲ゴーテル》を己が触覚として用いる異常。

 ああ、真実ロビン・ダンスフィードとメイジー・ブランシェットの取った手段は正着だったのだ。この怪物を前には如何なる掌握不能な回避すらも軌道の見えた遊興にしかなり得ない。弾丸で弾丸を撃墜するという奇跡がなければ、そも土台に上がれずに一方的に食い殺されるだけだ。

 超高速で接近する敵機を確実に殺害するための偏質的狂気すら感じる防衛機構――それがこの【麦の穂ゴッドブレス】という機体の遍く機能から読み取れるものであるが、しかし、


「――俺には通じない。それに、意味はない」


 八頭の狩人狼ワーウルフを鎖で繋いだ青薔薇の人形めいた【ルースター】は、そのバトルブーストに僚機のバトルブーストを重ね合わせる。

 つまりは真実、まるで軌道を読み取らせない真なる絶影の歩法である。

 毛ほども迎撃は受けない。一度動き出した【ルースター】のその機動は、天に位置する神の眼ですらも捕捉できない。そのまま次々に天の触手を打ち砕いていく。


「やるじゃねえか、後輩」

『……俺たちは、この程度ではない』


 同時多数の脊椎接続アーセナルリンクに耐えきる精神と、同時多数の機体を制御し切る超越的管制能力。

 そして多発するバトルブーストに耐えきる頑健な肉体と一切乱れることのない空戦識覚。

 弾丸のその軌跡すらも精密に把握し、思う通りに敵へと着弾させる火器管制能力。


 それらを総合して――――嘘偽りなくサム・トールマンは、【狩人連盟ハンターリメインズ】の持つ最高戦力であった。


「ちょっと……!? いや状況あんまり変わってませんよ!?」


 しかしそれでも、天に煌々と灯った光球は色褪せない。

 つまりは秒読み。

 破滅への弾丸は、依然変わりなく装填されている。


「男同士でイチャついてないで早くあれをなんとかしてくださいよ! この……ホモ・サピエンス!」

「………………ホモ・サピエンスは、そちらもそうだと思うのだが」

「ほっといてやれよ。ホモソーシャルって言おうとして間違えた語彙力貧弱女なんだ。……こうはなりたくねえな」

「……うるさいなあ高校中退なんですよこっちはうるさいなあそんなに偉そうにしないでよ大卒ホモのインテリ被れうるさいうるさい嫌いうるさい嫌いそういうところが嫌いなのホント嫌い嫌い嫌いハンスさんに会いたい」


 軽快に叩かれる軽口とは裏腹に、三機は一切の翳りや冗長さを見せない戦闘機道を実行する。

 稲妻めいて跳ね回る【ルースター】は断続的に集中射撃を続行し、プラズマを握り締めた白銀騎士は迫るミサイルを迎撃し、自己破壊をしながらも撃ち込まれる破城鎚の一撃が敵の装甲を殴り付ける。

 その上で、【麦の穂ゴッドブレス】が抱える光球を一切阻害することはできず、しかし――


「俺がこう言って、良いものか。だが――」

「……ああ、


 その青薔薇の如き【ルースター】と、砕けかけの堅城である【メタルウルフ】の駆動者リンカーは頷き合った。

 メイジー・ブランシェットという超常的な能力で高みに至った少女ではなく、その技量と精密さを突き詰めた二人だからこそ知れる終わり。

 敵は、破滅の弾丸を装填しているのではない。

 その投下を待ちわびているのではない。


 単に、


「温度が上がればその分膨張する力も上がるからよォォォ――――抑え込めていられねえだろ、その腕じゃ」


 


 機体の力場が最も高まるのは、装甲の至近面である。

 故に抱えた。

 故に抱きかかえた。

 そうしているのではなく――のだ。


 プラズマを投射する力場の発射台を形成するための腕部は砕かれた。

 機体の全ての力場をプラズマ投射に回したとしても、それは敵ではなく自機の程近くで破裂する。

 故に手放さない。

 故に手放せない。


 それは既に、詰みに等しい。


「いや、だとしてもどのみちエネルギーはそのままそこに残って――」


 メイジーの叫び。エネルギー保存の法則。

 力場の形成に使い続けただけの力がプラズマに注がれている。それは膨大すぎる熱量を孕み、彼らを蒸発させるにはあまりある破壊の光球である。

 だが――彼女のそんな叫びに程なくして立ち昇る黒雲。


「そして天気予報ウェザーリポートだ。……本日の天気は晴天、時々曇りのちプラズマってな」


 果たして、そんな雲に覆われた程度で地上破壊が免れるというのだろうか?

 だが――類稀なる計算能力と不確定性原理を掌握する把握勘を有するロビン・ダンスフィードは、自信ありげに銀フレームを中指で押し上げた。

 それで文字通りの終了だと、これで敵には詰めを行って何一つ案ずることはないのだと。

 そして、


「さて、おっぴろげられた朝刊の新聞の行き先よりも確実にテメーの行く先は決まったぜ、怪物。……ああ、それともこう言ってやった方がいいか?」


 不敵に笑う男は、プラズマライフルさえも投げ捨ててその右腕に握ったレールガンへと許容限度を超えた電力の供給を開始する。


「ある英雄に曰く――『巨人とは、すべからく討ち滅ぼされるものだ。ベーオウルフがそうしたように、ダビデがそうしたように』って、な」


 悪あがきの如き触手と力場の棍棒をくぐり抜けつつ、ロビン・ダンスフィードは笑った。


「おい、サム・トールマン。――?」

「構わないが……いいのか?」

「ハッ、後輩の前でちょっとだけいいところを見せてやりたいっつったら駄目か?」

「……!」


 機体管制AIを通じて送信されたデータに、コックピット内の二人は頷いた。

 最早ここに来て、サム・トールマンの技量はロビンも認めるに足る力だった。疑うべくもない力だった。

 つまりは、最大級の賛辞だった。


 故に、天に座する滅びを滅ぼすのは――その二人の持つ役割となる。


 身を震わせる破滅の蝶が、天に蓋する巨大すぎる翅の内にあっては頼りない――しかし戦艦めいた大きさを持つその胴に抱え込んだミサイルを全弾発射する。

 それにも知れているのだ。気付いているのだ。

 己を滅ぼすものが何か、と。

 故に最大限の抵抗として、最高級の撃滅として行えるのは、一発を浴びせるだけでアーセナル・コマンドのプログラムを書き換え――更には音声通信及びデータリンクを利用して広域の機体を奴隷化し、ただの電池として使うという悪魔的な兵器の無制限の投射だ。


「だからこれいい加減に飽きましたよ。……はあ、もう少しやりようとかなかったのかな」


 だが、それも、及ばない。

 周囲に無尽蔵に溢れる大気を弾丸として投じてくる少女の迎撃を前には、何一つ及ばない。

 星一つを滅ぼすに足る兵器の、その役目を果たせない。


 そして遂に――


「――《指令コード過剰出力オーバーブースト》」


 その一言共に、破壊は実行された。


 反動で大地が砕ける一歩。

 赤熱する円錐が天へと突き上げられ、輪の如き白雲を纏う。纏い――更に加速する。

 そこへ撃ち込まれる片側九門、計:十八門の弾丸。青き薔薇が、その花言葉めいた起こり得ぬ奇跡の如く限界加速中の機体の――友軍機の手足へと弾丸を命中させる。

 同時、弾けた。

 弾けて、瞬いた。


 流血じみた銀の液体。

 砕けた装甲から噴出する流体ガンジリウムの、その噴射圧力すらも加速に用いた破滅の一撃。

 決して砕けぬ筈の城塞ルークを、それでも砕けてしまうだけの力を以って叩き付ける


 ああ――識るがいい。


 其れが科学という人の極点が至りし破滅ならば、此れは、研鑽という人の極点が辿り着くせし破滅なり。

 魔にも至る技術の産物をも打ち壊す、神にも届く

 人類の極光。

 終末を否定する地に赦されし七機のその一角。


 ――――即ち、これが、第四位の制圧者ダブルオーフォー


 砕ける。吹き飛ぶ。消し飛ぶ。

 光球の際を縫うように放たれた紫電を纏う弾丸が、太陽を隠す大いなるその翅の一枚を容赦なく千切り飛ばした。

 直後、その身の内のプラズマが爆裂する。

 出力低下によって支えきれなくなった熱球は、機体の間近にて解き放たれ――その大いなる胴を熱と光の内に呑み込んだ。


 吹き荒れる熱波。

 吹き戻す爆風。


 真実ここが世界大戦の如く、荒野にわずかに残る草木さえも黒灰へと帰す終焉の光景――――だが、しかし。

 あまりにも超大なるアーク・フォートレスの機体が揺らぎ、その身から数多の煙を吹き上がらせ、溶かし、さながらゾンビじみた姿になってなおも未だに飛ぶ。

 土中の鉱物やジャンクパーツを収集し、融解し、永き時を経ても自己再生を行うこの機体にとってそれは滅びではない。


 機体との間、地を覆い隠していた黒雲も吹き飛んだ。

 最早阻むものはいないと、煙を上げる触腕を稼働させんとし、


「いいや、終わりだ。……ハッ、そういえば言い忘れてたな」


 地に横たわる青き【メタルウルフ】の、その駆動者リンカーが零した不敵な通信。

 既に行動は完了した。

 行動ではなく――が、完了した。


「本日の天候――晴天、時々曇りのちプラズマ。そして、、だ」


 眼鏡を押し上げるロビンの笑みの先、限界的な加速によって破損したコックピットモニターの先――敵機周辺に立ち込めた黒雲。

 あのプラズマによる大規模なイオン化と、熱波による上昇気流と、破砕された武器弾薬地形により作り出された雷雲が作り上げた雷撃の檻。

 そうだ。


 檻だ。


「悪いな。……じゃあなくて、だったぜ」


 降り注ぐ雷撃と黒雲をその重厚なる力場によって弾き飛ばす【麦の穂ゴッドブレス】であったが――しかし、すぐさまにまた雲が立ち込める。

 幾度吹き飛ばそうとも、消えない。

 終わらない。

 揺るがない。

 決して尽きず、止まらず、やまず、逃すことなく敵機にまとわりつき続ける黒雲の衣。稲妻の鎧。処刑器具。


 これがロビン・ダンスフィードの持つ、広域破壊をただ一つの相手に目掛けて集中させた殺戮の技。


 敵電子機器が持つ磁気と、その機体温度と、摩擦と、塗料などから作られる雷雲とその誘導。

 徹底的な個人破壊。

 まさしくこれだけでも、魔技と呼んでも何ら遜色なく――むしろ謙遜に当たるであろうかという、超常の技術であるが……。

 更に、


「傷口を晒したってことは……テメーは終わりだ。


 一体如何なる神業か。周波数すらも調整された雷撃が、降り注ぐ。

 雷の甚大な電力を背景にした過剰供給。

 その翼の穴という形で流体ガンジリウムを晒してしまっている機体に避けられるはずはなく、まさしくその雷撃は無数の滅びの鉄槌として振り下ろされ――そして弾け飛んだ。


 ――……だ。


「――――……」


 それを為したのは

 尖鋭的に空間を刳り取る力場の回転と、そして長大な砲身――――大箒を掲げる黒魔女めいた【ソーサレス】。

 ゲルトルート・ブラックが、アーク・フォートレスへの決定打を妨害していた。

 そして、抗議や困惑の声を待たずに行われる通信。


「……サム、指令よ。作戦内容の更新。当小隊の作戦目標は、敵不明機械の撃破及び住民の退避。そして――」


 曇天の下で滞空する【ソーサレス】が、その長距離ライフルの銃口を掲げ直した。

 相手は無論――



 白銀のブランシェット機と、半壊した【メタルウルフ】に向けて。


 言葉とは裏腹に、アーク・フォートレスの撃破を妨害するかの如く立ち塞がるゲルトルートと【ソーサレス】。

 睨み上げたロビンの【メタルウルフ】は自壊によって頭部と胴と右腕以外の全部位が崩壊。白銀の黒騎士霊ダークソウルは戦闘続行可能な損壊だが、その武装は存在しない完全な無手。

 黒衣の七人ブラックパレードに比する総合力を持つサム・トールマンも加わってしまったならば、趨勢はあちらに傾くか――と苦虫を噛み潰した表情で銀フレームを押し上げるロビンの視線の先で、


『送り迎えありがと。快適だった。ええ、そう。その先は、必要ない。アナタのためにも。危険な発言は、駄目でしょ。……罪悪感? そう』


 だが、その超大ライフルの銃口を遮るものがあった。

 【ソーサレス】の影に隠れて同乗してきた一機の漆黒と純白が入り乱れたアーセナル・コマンド。

 それは、漆黒のフードジャケットを纏ったような純白の機体であった。


 ロングコートじみた装甲を持つ右腕には、大口径のプラズマ・ハンドガン。

 その左腕には、残骸解体用の斧と剣が一体化したようなブレード。

 フードじみた複合曲線装甲の下で、一切の飾り気を持たない流線型の頭部のバイザーが閃光めいて青く光る。


『そうね、名乗っておく。――わたしはエコー。わたしはアナタの、未来の残響エコー


 その銘を、第二号の葬送手エコー・ザ・レクイエム――【ホワイトスネイク】。


「テメエは――」

『そう。理由は判ってる、でしょ? アナタたちには、ここで死んでもらう。……そうね、死にたくないとは言わないのは流石ね』

「――!?」


 淡々と、誰かや何かと目に見えない言葉を交わすように零される言葉。

 静謐とした大聖堂カテドラルの中に響く残響音の如き声。

 現実感を阻害する――或いは解離していると思わせるには十分な静かで柔らかい声。


「待って、アレが――」

『そうね、逃げ出してしまうわ。残念ながら。

「っ、あなたは――」

『そう、別に脅しじゃなくて単なる事実。判ってくれてありがとう。言わないわ、だから……死んでくれなんて。だけど――だからそう、ああ、こうね。こうかな』


 半壊した翼を引きずりながら逃げ出そうとするアーク・フォートレスを庇うように、その機体が立ちはだかる。

 一騎当千の専用設計機体という【狩人連盟ハンターリメインズ】のコンセプトの内にあって、まるでその理念に反しているとしか言えない最小限の武装と最小限の装甲板。

 それは黒衣の狩人ブラックハンターというよりむしろ、保護高地都市ハイランドの反抗の灯火となった第二世代型の先駆けの狩人に等しい姿であり――


『――二度と、目覚めないようにD o n ' t  e c h o a g a i n


 プラズマ・ハンドガンの銃口が向けられる。

 それは【狩人連盟ハンターリメインズ】内――である駆動者リンカーと機体であった。




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