そこにあったのは、愛情なのか、憎しみなのか。それとも——。

十年前に別れた恋人、津田。彼がかつてなぜ別れを切り出したか、その理由を知りたいと探偵に依頼を申し込んだ女性・柴岡。探偵は彼女の依頼に答えるために過去の津田の消息を辿る。
次第に明らかになる津田の消息。そして探偵が突き止めた事実は——。

探偵に調査を依頼した柴岡の心理は、何とも表現し難く複雑です。そこにあったのは、愛情なのか、憎しみなのか。それとも、愛情と憎しみはそもそも深く混じり合って分かち難いものなのか。いずれにしても、津田と柴岡を繋ぐものは容易には解けない呪縛なのだという気がしました。

ラストにずしりと重い余韻の残る、読み応えある短編。おすすめです。