書くことの模索と反論
本を読む時間から小説を書く時間に変わっていた時間帯。
教室で、本を読む習慣が無くなった代わりに、小説を書く為のネタやメモ書きをしていたのだけれど...眺めるだけでひとつも進まない。
親友が登校してきたから携帯の画面を閉じて仕舞う。
「行き詰まってるの?」
小説って単語が出なくても分かる会話
「行き詰まってるのかな?」
「どんな感じ?話したくなかったらいいんだけど...」
「どう書こうかなって...」
「え?好きなように書けばいいと思うんだけどね」
「そうなんだけど...どう書きたかったか分からない」
「うん」
「最近、なんで小説を書いてるのかも分からない」
「えっ」
親友に誘われたから書くようになった事は覚えてる。
「記憶喪失になった訳じゃないよ。感想や読んで貰える事に嬉しいと思ったのは覚えてるんだけどね。それ以外にもあったはずなんだけど...」
「そっか...。多分、疲れたんだよ。だから、なんで書いてるか分からなくなってるかも」
「でも、最近思うのがね。分からなすぎて、なんにもない気がするんだ」
「そっか...」
どこかショックを受けた表情をしていた。
(気を使わせてしまった)
この雰囲気を吹き飛ばすのは、なんだろうかと話題を探す。私が思いつく前に、どうやら親友の方が先に見つけてしまった。
「書くのを止めて少し休も?」
(あぁ、良いかもしれない)
「休みながらさ...一緒に探そうよ」
「えっ?」
「休もうって言ったのにごめんだけど、やっぱ続きを読みたいって思っちゃうんだ。だから、足掻いちゃう」
「探しても見つからなかったら、どうする?」
「その時はその時!だって、探し物はさ...見つからない時もあるんだよ」
「見つからなくてもいいの?」
「うん」
♢♢♢
私は、なんで小説を書いてる?
私は、何を書きたかった?
私は、この話の続きはどうしたかった?
♢♢♢
久しぶりに本を読んでみれば、何故、小説を書こうと思ったかを分かるかもしれないと思い、かつての日常を再開させる。
今読んでる本は面白い作品で、以前ならば集中して読むのに、自分の小説が頭の隅にチラついて気になって、集中が出来なかった。
日常を戻しただけではダメなことに気づいて、ならば、逆に今までやって来なかった事を挑戦をしてみると分かるかもしれないと思い、前から気になっていた編み物を始めた。
新たな経験が楽しいだけで...当たり前かもしれないが、小説に関して何も見つからなかった。
やはり、探しても無駄なだけで意味が無いと思ってた時、親友から気に入ってた小説の映画を観に行かないかと誘われた。数年前に読了で細かい描写は忘れてしまった作品。
だが、映画を観ると小説と違い、言葉だけで想像してたのと違い、本当に美しい景色が広がっていた。
知らない新人の女優さんや俳優さん達だが、演技が上手くて違和感が無く楽しめた。
映画を見終わった後は、そのまま解散せずに近場の学生が賑わうカフェに入った。注文をさっさと済ませて席に着く。
「なんか、忘れてたけど、あのキャラが死ぬのは辛い」
「分かるぅぅぅ。良い人すぎて、惜しい人を無くした感が...」
「もし、あそこで死ななかったらどうなるんだろう...」
私の言葉にどこか嬉しそうに笑う親友。
「その他には、どう思ったの?」
そこまで喋る気は無かったのに、聞き上手な友達に、あれよと次々に映画をみて思った事を話した。
(あれ?なんか、こういうの久しぶり)
私は、自分の好みの小説を読みたかった。それは、忘れてなかったんだけど...そもそも書こうと思った理由ってさ。
「嫌だなって思う感想もさ。私と同じかもしれないね」
「同じ?」
「探し物が見つかったか分からないけど、ただ憂鬱な感想を書く人達に言いたい」
自分が読みたい小説を読む為には自分で書くしかない。
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