書く喜びと努力

小説を公開して一日が経った。ブクマが1件。親友だけだった。


「落ち込むなって」


「別に...まぁ、読んでもらえないって事は、そういう事だよね」


「始まったばっかだし...。あのさ、タグを全然してないでしょ?タグを付けると検索にヒットして読んで貰いやすいよ」


商業の本をメインで読む私は、ウェブ小説に詳しくは無く、ただ何もせずに公開だけをしていた。


「なるほど!その設定やってみる」


自分が書いた小説に関連するタグを設定し直した。

小説の閲覧の数が増えたのは喜ばしい。

だが、閲覧数だけが増えてブクマまではしてくれなかった。やはり、面白いと思われない作品かな...。


(私には特別な才能が無いのは分かっていた。でも、なんか悔しい)


ふと、興味が湧いて同じサイトの他の人の小説を読み漁るようになった。読んで分かったのは、読んでくれる為の努力を私は何一つしてなかった。私の文章は、ここの人達に好まれるような感じではなかった。


自分が読んできた小説よりもこのサイトで人気がある小説は、ラフな文章で読みやすかった。

私が書いた小説は、沢山の言葉を飾り付けて文字数も1話にしたら長かった。

なら、自分も少しラフな感じで文字数も多過ぎないように気をつけて書くようにした。


その努力が実って閲覧数も桁違いに増えて、ブクマも徐々に増えていった。ランキングに載った日には嬉しくて、担任に「何か良いことでもあった?」と聞かれるほどの浮かれ具合だった。


ランキングに載ってからは、読む人が増えた。


そして、親友以外の感想を初めて頂いた。その通知が来た瞬間には驚いてしまって、読む為の画面を開くのが怖くて画面をタップする指が震えていた。


「はじめまして!面白くて一気読みしました。キャラクター達が個性的で好きです。いつも、更新を楽しみにしてます。頑張ってください」



親友の時にも味わった感覚。自分の小説が肯定されると自分自身も認められるような...承認欲求が満たされた。


読書タイムの時間帯は、いつの間にか小説を書く時間に変わっていた。本を読みたいって気持ちが無くなった訳じゃないけど、待ってくれる人に応えたいと思い、早くに更新が出来るように、小説を書くことに勤しんでいた。


文章を綴るのは簡単ではなかった。1000文字を捻り出すのに何時間もかけてしまう事もあった。沢山の小説を読んでいて知り得た知識が莫大にあるけれども、人の記憶とは曖昧で、何気ない単語が正しい単語なのかしら?と疑問に思って調べる事が多かった。何気なく使ってる単語も実は正しい意味ではない事が調べてて分かることが多かった。間違った言葉を小説に載せるのは違うと思って、自信が無い単語は鵜呑みしない。調べるだけでは無く、文章自体もどれが分かりやすくて面白いのだろうかと迷っていたら時間がかかってしまう。それでも、感想やブクマをモチベーションに努力を重ねた。


ほぼ、毎日の更新が出来てるお陰か...人気が出て、更新の度に感想を頂ける常連さんも出来始めた。感想の中には、作者の私でも気付かない...気にしてなかった事をコメントしてくれる人も居て、色んな人の主観から覗く私の小説の感想はとても勉強になった。


そんなある日、一通の通知が来た。

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