#4

こめかみが絞られるような頭痛を感じて目を覚ました。時計を見るともう朝の八時だった。カーテンの隙間から差し込む日差しが今日も強い。

 顔を洗い、電話を確認すると実家の母のさとからメッセージが入っていた。昨晩、将棋道場を出た後で、電話があって「一度戻ってこい」との事だった。父も心配していると言う。

余り心配をしない両親だったので、珍しいと思いながら「明日帰る」と答えた。実家は神奈川なので日帰りできる。簡単に着替えて表に出た。やけに静かだと思った。 

洗濯物が干してあるし、パンの焼ける香りがする。当たり前の休日の朝だった。でも、当たり前とは何だろう。駅に出ると一応普通に電車も走っている。昨晩、政府から当然の様に全国に緊急事態宣言が発令された。しかし発令されただけだった。原因がわからないので対策がないのだ。

 新宿駅地下で乗り換えをする。地下スペースはいつもと違い特に人気が無かった。何か大声を出している一群がいた。恰好に目立ったところはないが、掲げている看板には「神の怒り」とあった。それを横目に見ながら、小田急線に乗り込み、茅ケ崎を目指して電車に乗った。電車内も普段より人気がない。サトウは端に座って、暫くぼんやり車窓の外を見ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る