マタネ
君との通話は、いつも最後が面白いのだ。
「じゃ、マタネ」
なぜか片言になるマタネの三文字。さようならでも、ばいばいでもない、片言のマタネ。僕は、この言葉がすごく好きだ。
明日仕事が休みだから、と僕の予定は関係なしにかかってきた深夜の通話。君はいつものように、一方的に話したいことをマシンガンのように話しては、泣いたり笑ったり忙しそうだ。
「じゃ、マタネ」
音が鳴って、僕はほぼ喋らなかった通話が切れて、いつも愛おしくなる。さようならでも、ばいばいでもない、未来の再会が約束された、マタネの三文字が好きだ。明日の予定も忘れ、君の話に没頭する時間も好きだ。一喜一憂しながら夢中に話をする君を想像するのも、たまに話を聞いていなくて怒られるあの時間も好きだ。
暗い部屋で、通話時間の表示されたメッセージ画面を見つめたまま、僕は静かに舟を漕いだ。
「明日、寝坊しないようにしないとな」
小さな呟きを最後に、僕は目を閉じた。
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