約束の場所

 彼女は僕らの集合場所に、近所のファミレスを指定してくる。それも、朝一番の誰もいない喫煙スペースだ。彼女いわく、煙草の香りが落ち着くのだそう。

 今日も彼女からの連絡で、遊びに行くことが決まった。いつもの場所に集合でと表示されたメッセージ画面を見て、今日何度目か分からないため息が漏れた。

 ファミレスに到着し、喫煙スペースのドアを開けた。

「遅いー」「ごめん」

 彼女はいつもの銘柄に火をつけて、灰皿の上に置いていた。

「なにか頼む?」

「とりあえず、モーニングセット」

「分かった」

 呼び出しベルで店員を呼んで、モーニングセットをふたつ頼む。僕は、なんとなく今まで聞けずにいた質問をしてみたくなった。

「なんでいつも、吸わないで灰皿に置いてるの?」

 彼女は、少しだけ考えてから答えた。

「母親の香りを、嗅いでいたいんだろうね」

 彼女はどこか遠くを見つめながら答えた。

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