(02)診断と違和感
十数年前に義理の姪が「統合失調症」と診断された。
前年秋に体調不良で内科へ受診した折、医師から心療内科への紹介状をもらったというから推して知るべしだが、母親(私からすると義姉)が「娘はキチガイじゃない!」と破り捨てたという。
紹介状の件は知らなかったが、年明け1月に姪は奇声を発して裸足で逃げ出し、数時間行方不明だったらしい。
なんで又聞きかというと、実家へ帰省していて、こんな騒ぎがあったんだと帰ってきてから義父に聞いた。
んで、続きがある。
「通院することになったから、オマエが病院へ連れていけ」
……は?
この時「頭の中に「?」マークしか浮かばない」って事態を、生で実感した。
家族構成を説明するが。
私と旦那様で世帯をもち子供はいない。近所に義父母の家があり(同居は義父母から断られた)、義父母の家に義姉(離婚)と娘が同居している。義姉にはもう1人娘(姉)がいるが、こちらは看護師としてもう自立しており、遠方で結婚していて子供もいた。
居住地域は「自動車がないと何もできない」ような車社会で、私と旦那様、それに義父も自動車免許を持っている。義姉はペーパードライバーだった。
私主観で話を整理すると(年齢は当時)
義実家
義父 70代(免許取得/自営業という名の隠居生活)
義母 70代(免許なし)
義姉 50代(免許持ちだがペーパードライバー)
義姉の娘 20代(統合失調症と診断される。免許持ちだったが後に返納)
近所の別世帯
旦那様 40代(免許取得/勤務)
私 30代(免許取得/持病により退職)
こんな感じですか。
義父も高齢だから車で30分先にある病院へ行くのはシンドイ、という理由ならわかる。
しかし義父は出かけるのが大好き人間で、1時間だろうが2時間だろうが「人に会う」為に何処へでも自分の自動車を運転し出かけていく人だった。
それなのに、自分の孫のためには30分先の病院へも行きたくない。
理由は、色々イロイロ諸々を言っていたが、要約すると「精神病院なんかで知り合いに会ったら恥だ」でした。
この透けて見える本心を必死で取り繕うと、言い訳を積み上げては自分で(私が無職で暇だろうと見下す)地雷を踏みぬいていく。
別にイイですけどね。連れて行くだけなら。
と思いながら引き受けましたが、姪と義姉(保護者なので)の通院数回で痛感することになる。
姪の治療方針において、最大難関は姪ではなく、母親の義姉だった。
姪はむしろ素直なほどに先生の話をよく聞き、真面目に処方された薬を飲んでいた。
が、義姉は不真面目で矛盾で意味不明だった。
義姉の言い分は「薬を減らせ(いっそ飲ませるな)」「娘がおかしい(「どう」おかしいのか言わない)」「早く治して」「なんの病気?(←本当に言った)」。
先生に会えば「薬を減らせ」しか言わず、薬の量を変更しようとすれば「慣れるまで少し不安定になるかも知れない」の注意事項を拡大解釈し「苦しめるなら薬を変えるな」を連呼で叫びまくり、病院側の提案を何1つ聞かないのに「病院に行ってるんだから娘はマトモになる」信じ込んでいた。義父もこの妙な信者だったのは蛇足。
んで、病院から帰宅して1時間ほどすると実家から「来てくれ」と連絡が入る。何かと思えば「先生との面談や薬の説明をしてほしい」と。義姉も同じ説明聞いてるのに、なんで私?
当時は「???????」でしたが、今ならわかる。
義姉は去年やった作業を「知らない」「やったことない」と言う人。
去年も、一昨年も、毎年繰り返している作業を「わかんない」と、「やったことない」と投げ出し、義父に怒られて渋々やる(それでも指示されないと動かない)。何か聞こうとしても、最初の「あの、」段階で「知らない!」全力で拒否。
毎年やっている(それほど難しくもない)作業を「知らない」と言い、「やったことない」から「わかんない」と、毎年必ず繰り返す。
意味が分からない人。
義姉は先生が何を言っても説明しても「わかんない」から「聞こえない」、だから「そんなコト聞いてない」「知らない」で「わかんない」になってしまう。
それなのにマイナス情報だけは過敏に拾い「薬を減らせ」「薬を変えるな」を連呼し、十数年病気の娘の耳元で怒鳴り続け、結果娘のトラウマとなって固定化させてしまった。
まぁ、この当時にはまだソンナことに理解が追い付かず、謎発言を繰り返す義姉をまだ「シングルでも子供2人育てた常識人」だと思っており、分かり易い説明や説得をしようと無駄な努力をしていた。
私と義姉は別世帯であり、それまで直接的な交流がなかった。
近所だし、旦那様の実家へ行く機会はそれなりにあったが、結婚当初は働いていたし、義姉も姪も表に出てこないので会う機会すらなかった。
極端に会おうとしない人だなぁ、とは思っていたが、無理矢理に焦って関係を強行して拗れるより、まぁ時間をかけてゆっくり行こう、とのん気だった。
無理矢理というか、無理難題だった。
義姉の見えている景色、聞いている言葉が、私と決定的に違うのだとゾッとする程に思い知るのは、もう少し先。
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