第2話
──目を開けたら私はまだ水の中だった。
首だけを動かして周りを見てみれば、ここはどうやら木が生い茂った森のようだ。川を下って、どこまで流されてしまったのだろうとよく見てみれば自分の浮かんでいるここは川ではなく、湖のように広い。そして静寂が包むこの辺りは暗く空は星が綺麗に輝いていて、どれほどの時間が経ってしまったのかと目を疑った。
びしょびしょに濡れてしまった髪を掻きあげて、地上へ上がろうとする。しかし岩の陰からばしゃっと水が跳ねる音がして、誰かがいるのかと慌てて再び身を沈め、水をかき分けて進む。
岩に手を掛け、少しだけ顔を覗かせればそこには眩いばかりの金髪が目に入る。
人だと認識すると同時に、その逞しい背中が露わになっているのに気付き慌てて身を翻した。その動きに反応した水が岩に跳ね返ってピシャッと音をたててしまう。
あっと声を上げる前に
「誰だ」
そう、鋭く刺さるような声が私を貫いた。
びくっと身体が震え、そのまま固まってしまう。先ほどの声の主がこちらへ近づいてくる気配がするが、彼に背を向けている私はそれを感じ取ることしかできない。
彼の纏う空気が酷く冷たくて、背中からでもピリピリと緊張感が伝わってきてガタガタと身体が震える。
「──娘、か」
低い声がすぐ傍で聞こえて肩を掴まれた。
また、ビクッと肩が上がる。掴まれた肩をぐっと引かれて振り向かされた。
すぐ目に入ったのは、月明かりに照らされた少し長めの金髪。形の良い唇、高い鼻筋に大きく見開かれた目は綺麗なアーモンド型。その瞳は青みがかっている。堀の深い顔立ちと色素の薄さは明らかに日本人ではないだろう。まるでどこかの国の王子のようだ。
このひどく美しい男性は私と目が合うと、冷たさを帯びていた目を細めてフッと笑った。
「……これはこれは」
私の濡れた頬を撫でる大きな手。見惚れてしまうほど綺麗な顔立ちの男に、声を発することも忘れ私の目は釘付けになる。
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