第3話昔の友との再会
あれから一か月が過ぎたころ、義也が分厚い財布をポケットに入れ、街に繰り出すと、見覚えのある顔を見つけた。擦り切れたズボンに、薄汚れた上着と、すっかり変わり果ててしまっていたが、それは間違いなく、むかしの悪仲間、播磨(はりま)淳(じゅん)だった。
義也は意気揚々と彼に近づいて行った。
「おい、久しぶりだなあ」
播磨の方は、義也の立派な身なりを見て、ひどく驚いた様子だった。
「お前、一体どうしたんだ?」
義也は、自分が今福の神としてあがめられ、いい暮らしをしていることを彼に話した。彼は、当然うらやましがられると思ったのだが、播磨はそれを聞くと、あからさまに嘲った。
「そんなことだろうと思った。やっぱりお前は、変わってないなあ。昔のまんまのだ」
「それ、どういう意味だ⁈」
「能なしの馬鹿だって言っているのさ」
「なんだと! お前は、俺が今、こんなに幸せだからうらやましくて仕方がないんだ。だから、そんなことを言うんだ」
「いいや、全然。お前なんか、どうせ直ぐ追い出されるに決まっている。そもそもお前、まさか本気で自分が福の神だと思っているのか?」
「それは・・・・・・」
「そいつらの幸運は、単なる偶然だ。それに気づけば、お前なんか、すぐにでもお払い箱さ」
義也は、それを聞いて、言い返そうとしたが、言葉が出てこなかった。なぜならその不安は、すでに義也の心の片隅にあったからだ。
「お前なんか、用済みになったら、ただのゴミだからな。ポーンと家から蹴り飛ばされるだろうな」
播磨は、大声で、笑いながらそう言った。
「だっ、だったら、俺は、どうすればいいんだ?」
義也が、小声でボソボソとそう言うと、播磨は勝ち誇ったように、胸を張った。
「簡単なことだ。そいつらから、できるだけたくさんのお宝を取って、逃げるんだ。隠し場所は、知っているんだろ?」
「ああ」
「だったら、簡単じゃないか。俺も協力してやるから」
三日後に、彼等は計画を実行する約束をして別れた。
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