第115話サイリスとラージ
僕達がフォーゼンボルグへ向かい始めた頃。
そのフォーゼンボルグでは。
世界第二位の規模をほこり、ここには世界の魔導協会の本部があった。
魔導協会会長のバラキ、そして会長の側近ラディス、この二人が魔幻獣十二魔人の幹部だという事実を誰も知らないと思われていた…そんな中。
◇
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「お兄様!!今回の話聞きましたか?」
この女性がお兄様と呼ぶ男の名は『ラージリアス』魔導協会の聖騎士と呼ばれる通称剣聖『ラージ』そして女性は妹の『レーミア』
「おいおいレーミア!そう勢いづいてどうしたんだい?」
「それが!私達含めた魔導協会部隊長五人の内私達二人をその任から降格させると今騎士達の間で噂になってて私は確かめる為にここへ来たのです!」
「おやおや…それはおだやかじゃないね…その話は後の三人の部隊長も知ってそうなのかい?」
「そこまでは分からないけれど兵士達が噂してるのを聞いてしまい問い詰めた所そう言ってたのです!!」
「そうか…いよいよ怪しい光がここにも差し込んできたようだ…ライティア様…。」
ラージはそう呟くと外を眺める。
「お兄様!どうなさいますか?このままでは私もお兄様もここを追い出されてしまいます。」
「そうだな!じゃあ僕も皆と話に向かうとするよ!」
(バラキ…いよいよ……勘づかれたのか…せめてレーミアだけは…。)
こうして二人は残り三人の部隊長と話をする事になったのだ。
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その頃。僕は、らいと、サイリスさん、ダンさん、飛鳥ちゃんとレイオールを加えたこの新たな世界の六魔導師としてフォーゼンボルグへと向かっていた。
港街マリンフォレストから一気に船でフォーゼンボルグへと向かう旅なのだ。
そして僕はふと、らいとを見ると珍しく浮かなそうな顔をしていたんだ。
「らいと、あのライティア様の話、気になってるの?」
「ああ…まさか、ラージリアスが光の魔導師候補だったなんてな。」
そう。
あんなに神妙な表情を浮かべ僕達にお願いをしたライティア様は、とある事件が起きて当時弟子だったラージリアスと妹のレーミアと離れなければならなかったらしいのだ。
その話を聞かされた後。
らいとは物思いにふけっていたのである。
「ししょう!?そんな顔しないでください!私がついてますよ!」
「ありがとな飛鳥!」
「そうそう!らいとさんはライティア様に認められて光の力を授かったじゃないですか?」
サイリスさんもそうは言ったのだけれど僕の目には何かの違和感を感じたんだ。
そう…いつもと違う何か別の事を考えているそんなサイリスさんにみえたんだ。
するとサイリスさんはその違和感を誤魔化すかのように口を開く。
「そうそうお兄ちゃん!所でネージーさんは置いてきたみたいだけど大丈夫なの?」
「ああ!もちろんだ!地下世界でのやるべき事をやらなければならんらしくてな!」
「そうなんだね!でもそれでお兄ちゃんは寂しい?と?」
「な!何を言ってるんだサイリス!私は今はこちらに集中しなければ!幸せは戦いの後だ。」
「そうね…。」
サイリスさんのその表情はどこか寂しげだった。
それに気づいたダンさんは、すかさずサイリスさんに問いかける。
「あ!そういえば!!思い出したぞ!!サイリス!!」
「えっ!?」
「あのラージリアスは、もしかして昔遊んでいたあのラー君か!?」
「お兄ちゃん!!??」
サイリスさんの表情は赤く染まっていたのだった。
◇
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◇
サイリス回想。
「ラーくん!ラーくんってば!?」
「ん?あ!サイリス!僕さ、ここで本読んでたら夢中になってて今気がついたよ!ごめん!」
「ふぅーん!お父様達がお話してるからラー君と遊んでなさいって言うんだけどさ、なにかしよーよ!」
そう…これは私がまだ幼き日の出来事。
ラーくん事ラージリアスは家が名家『ベルリス』家。世界でも有数の家柄だった。私の父は国王である為こういった貴族同士での交流も稀にあったの。
ラー君は私より一つ年上。お兄ちゃんであるダンは友人達といつも遊んでいて私は一人で遊んでる事が多かったの。
そしてラー君の妹レーミアちゃんはこの時まだ赤ちゃんだった。だから私とラー君はことある事にこうして会うと一緒に遊んでいたの。
「さぁ!じゃあ今日はちょっと冒険にでも行こうか!?」
「うんっ!!」
ラー君は控えめではあったけど私の心を掴むのが本当に上手くて…会う度に私達二人はこうして話したりちょっとした冒険に出たりしているうちに私の心の中で彼の存在は大きくなって行ったの。
「サイリス!僕は大きくなったらいつかサイリスをお嫁さんにしてずっとサイリスを守るよ!」
「えっ!?本当に!?ラー君約束だよ!」
「もちろん!」
「うふふ。」
こうして私達は幸せな時を過ごしていた幼少期。
そして取り返しのつかない事件が起きたのはそんなある日の事だった。
この日はラー君一人だけが私の家に泊まりに来ていたの。
でもやっぱり私達二人は楽しく冒険がしたい!
という意見は同じだった。
そんな私達二人はいつもの様に冒険に出たの。
この日も、とある山へと向かった。
それは美味しい木の実が沢山成るという『りんりんの木』と呼ばれる大樹を山の何処かで発見したという話を彼は聞いてきたの。
私達二人は出てくる魔物を退治しながらもその木を目指したの。
そしてその木は目の前に現れた。ところがその木はなんと崖の途中にポツンと生えていたの。
「ラーくん!残念だけどあれじゃ仕方ないよ!帰ろう?」
「だ!大丈夫だってサイリス!僕があんなのすぐに取ってきてやるからね!」
崖の上の木にロープを括り付け自分の身体に結わえると崖をゆっくりと降りていくラー君。
「危ないよ!本当にもういいってば!」
「ま!待ってな!サイリス!もう少し!」
するとそこへ突然現れる一羽の魔物。
『スカイラット』
そう!飛行可能なネズミ!
スカイラット達はラー君に襲いかかる!!
「うわっ!止めろ!!??」
「ラー君!!??」
スカイラットはラー君の身体にかじりつく!!
「いたっ!!やめろ!この!!」
その身体をよじりスカイラットの牙を避けるラー君。
「やめてーーーーーーっ!!??」
私の叫びは真下の轟々と流れる川の音にかき消される。
次の瞬間!!
ガブリっ!!
ぷつん。
ラー君の身体を支えていたロープは切れ。
そして彼はそのまま川へと落ちていってしまったの。
「うわぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ。」
そして彼の叫び声はドボンッ!!という着水音と共に消えていったの。
私は慌てて家に戻り事情を説明し彼の捜索をお願いする。
しかし彼は消息不明になってしまったの。
◇
◇
◇
こんな事があって私とラー君は当然それ以降会う事はなくなってしまったの。
父もあらゆる限りを尽くして彼の両親には謝罪と誠意を込め尽くしてくれた。
私はずっと罪悪感でいたたまれなかった。
それから時が流れ。
私は剣聖となり元気で生きててくれたラー君を情報として知ったの!!
彼は生きててくれた!それだけで私は救われた気がしたの。
でも会う勇気は出なかったの。
でも今は。
会ってきっと一緒に世界を救ってみせる!
そして彼にちゃんとあの時の事謝らないと。
そう誓ったの。
◇
◇
◇
なんと!サイリスとラージリアスには意外な過去があったのだ。
お読みくださりありがとうございました。
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