第107話ミスリル消滅。そして。

僕は今…自分と…そしてミスリルに負の感情で心の中はいっぱいになってしまっていた。

身体はもちろん脳と一体化して動く。

がしかし…脳内は負の感情。

こいつミスリルは僕の大切な存在を全て傷つける悪敵!

それに加え自分が無知で無力な事にその暴力的な行き場の無い怒りは僕の行動を支配しているのだ。

これが…負の…闇の力の本当の力か。

するとまた声が聞こえてくる。

(いいぞ…それでこそ我が力の後継者となる者の力…もっと…もっと奴を憎め!!それがお前の力となる!!)

僕の身体はミスリルの首を更に締め上げる。

「ぐ…が!や!やめ!がはっ!た!たすけ…」

ミスリルの絶望の声が聞こえてくる。

「ふぅん…ミスリル?苦しいのかい?」

「く…くる……しいで…す。」

「へぇ…でもさぁ…君さ、僕の仲間達にあんなに酷い事したよねぇ…?」

ミスリルはぷるぷるとその身体を震わせる。

「あ…はい……ほ…本当に…ちょっと…調子に乗っただけ…なん…です。」

「見なよ!」

僕が指をさすとらいともサイリスさんも飛鳥ちゃんも、そしてダンさんもネージーさんも傷つきながらも僕達の戦いの行く末を見ていたのだ。

「なにか皆に言わなきゃいけない事あるんじゃないの?」

「え?、な…なにか?」

「そうそう。さあ!言ってご覧よ!」

僕が首を締め上げている力を抜いていく。

「くはっ!はぁはぁ…」

「さぁ…いいなって!」

「は…はい……皆さん…本当にすみませんでした!僕は海よりも深く反省しております。」

ミスリルは意外にもあっさりと皆に謝罪をする。

そして、その顔は本当に反省してるように思える程だ。

だがこの時、僕の中の負の感情はふつふつと煮えたぎっている。

そうやすやすとミスリルを許すハズがない。

「これは…どうかなぁ……?」

僕の手から黒い闇のモヤが立ち込めミスリルの右半身を覆っていく。

「えっ!?こ、これは一体…?」

恐怖の表情を浮かべ全身を震わせるミスリル。

次の瞬間!!

バキッ!!ボキボキッ!!!

「うぎゃーーーーーーーーーーっ!!!」

僕の黒もやはミスリルの右半身を包み込むとその中で恐ろしい現象が起きる!!!

何かの力によりミスリルの右半身は潰され次の瞬間何かに刺されそして切り裂かれる!!!

「うが!いいっ!!?痛い!!痛いっ!!うがあああーーーーーっ!!??」

ミスリルは激しい痛みと苦しみでもがき苦しむ。

もはや半身しか残ってないミスリルの身体。

ミスリルは、この時ばかりは自身の生命力を呪ってしまう。

ここまでされたらまだ死んだ方がマシなのだ。

だけどミスリルは生きてしまう。

それは痛みと恐怖がまだ彼を襲うという事を意味している。

「次はどこを消して欲しい?」

「ひっ!!ひいぃぃぃーーーーっ!?」

半身のミスリルは片手片足で逃げようとするもその身体では動いてもやっとの事で座る事しかできなかった。

「さぁ…ミスリル?どこを消して欲しい?」

「うわぁぁぁーーーーーーー!?」

ミスリルのその恐怖の叫び声は辺り一面に広がる。

すると突然、どこからともなく何者かのおぞましい邪気を感じ…そして声が聞こえてくる。

『クク…クックックッ………』

「だ!誰だ!!??」

その声に驚き僕は声を上げる。

『僕は魔幻獣十二魔人をとりしきる者…名は辰の魔人竜也…。』

「魔人…たつや?」

『ああ…僕はそうだな…君達と同じく異世界人とでも言っておこうかな?そして僕が率いる魔幻獣十二魔人をここまで潰してくれてありがとう!そして…もうそいつはいらないや!』

するとみるみるうちにミスリルのその顔は青ざめていく。

「そ!そんな!竜也様!!??」

「んん?なんだい?ミスリル?君は確か…力を手に入れたから…もう僕にでも勝てる?だって?」

ミスリルは慌てる!!

「い!いや!そんな事は決してありません!!あ!これから!今から本気を出してコイツらをしとめてその首を必ず竜也様の元へ届けますので!!!」

ミスリルは冷や汗をかきそして声の主、竜也へと訴える!!

「はぁ?お前はもう用済みだよ?」

「えっ!?そんな!待ってください!僕ならここから巻き返す事が出来ます!!必ずコイツらを始末してみせますから!!!」

「じゃあね…ミスリル。ジ・エンドだよ。」

竜也の声はそう呟く。

ボンッ!!

という音を立てミスリルの頭上になんと龍が姿を現わす!!

きっと竜也の技なのだろう。

メラメラと燃え盛る炎を口に携えながらミスリルを頭上から見下ろす。

「くく…そいつらを始末したらその龍はお前を食わない…逆に負けたら…分かるな?」

ミスリルは身震いをする!!

「こうなれば手段は選ばない!!ぐわぁぁーーーっ!!」

「きゃーーーーーっ!!!」

ミスリルはニョキニョキと触手を増やしその場で一番厄介な、らいとを消しにかかる!

そこに一緒にいる飛鳥ちゃん!!

「やばい!」

僕が走り出そうとしたその瞬間。

光を纏うらいとが飛鳥ちゃんを庇い立ち尽くす!!!

「はあああーーーっ!?この死に損ないがーーーーーっ!!」

雷光神らい、こう、じん

「馬鹿め!!貴様の技など!!!なにっ!?」

カキンッ!!!

らいとは一瞬何かをしたかに見え…そして刀は鞘に収まる。

「ぐあああああああああああーーーーーっ!!」

ミスリルの断末魔の叫びは辺りにこだまする。

らいとの閃光の速さはミスリルの技も間に合わないものだったんだ。

そしてミスリルはらいとに消されたのだ。

「ふぅ…技を出される前に。」

「倒したんだねらいと!」

僕はそう問うとらいとはニッコリ微笑む。

「ああ……。」

ミスリルの消滅と共に竜也の龍も消え…いつの間にか竜也の声もしなくなったのだ。

「しかしあれが…魔幻獣十二魔人のボス…竜也か。」

らいとの声に僕は我に返る。

「そうみたいだね!らいと大丈夫なの?」

「ああ…みら?大丈夫だ…お前やるな!ミスリルをあそこまで…ほんと……さんきゅな…。」

「いいよ…らいと!僕も…つか…れたよ。」

バタリと力無く倒れ眠りにつくらいと。

そしてらいとに重なるように倒れてしまう僕。

ああ…なんだか僕も凄く…眠い…や。

「らいとさんっ!?みらいさんっ!?」

なんだか飛鳥ちゃんの声聞こえてくる…あはは…でも…ぼく…ねむ……くて。

莫大な被害と喪失を魔幻獣十二魔人により受けてしまった世界。

僕達はそれでもこの世界を守らなくちゃいけない。

平和の為に世界の為にその命までもをかけ!そして散っていった人達の為にも。

神樹はこの歴史をもまたその身で感じ。記憶し更なる新時代へ向かう為に。

静かにその出来事を記憶していくのだった。

お読みくださりありがとうございました!

ユメカナッ!!魔幻獣十二魔人激闘編は後の一話で完結いたします!

次話から数話程特別編。

そして番外編をお楽しみいただけたら幸いです!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る