第61話邪馬国の夜明け

風雅は旅立った。

そしてこの事実は、ようやく邪馬国に平和が訪れた瞬間だった。

「やった…のか…?」

「ああ…そうみたいだな。」

ダンさんと沖田さんは顔を見合せる。

「「うおおおおおおおおーーーっっっ!!!」」

残っていた江渡守えどのもりの住人を加えて皆が一斉に喜びの声を上げる。

皆…皆この戦いの夜明けを迎える事を待ち望んでいたのだ。

こうして大きな犠牲を払いつつもこの邪馬国に平和がおとずれたのだ。

そして……。

ここは江渡守中心地大広場…。

この国の指導者…つまり天下人である『天草路人あまくさろじん』が高台の壇上に立つと辺りを見回す。

辺りには怪我を負った者…亡き骸を抱いてる者…泣き崩れている者…ここにいる全ての人々が今、この国の天下人の声を揃って待っているのだ。

天草路人は高台から国民を見据える。

「皆…よくぞ……生きていてくれた!」

天草様の第一声が響き渡ると皆が静まり返る。

「我々は生きている、これこそが我々の勝利である…この国は皆が生きていれば何度でも蘇る事はできる。」

天草様は一呼吸すると口を開く。

「さぁ…我々はこれからだ!共にこの邪馬国を再度甦らせる事に力を貸してほしい。」

「「うおおおおおおおーーーー〜っ!!!」」

この国の天下人、天草路人の元…国民が一斉にこの国の復興を誓い叫ぶ。

それはいつまでもいつまでもこの国に響き渡るのであった。

それから一週間の時が経つ。

僕は身体はすぐに回復…現在復興の準備を手伝っている。

「みらい君…結構動けるね!ここにずっと居てもらえると助かるな!」

「えっ?そうですか?あはは!」

僕と沖田さんの会話にも笑いも増えてくる。

「本当に君達には感謝しきれないよ…そういや、らいと君はどこへ?」

「らいとはサイリスさんとさっきどこかで見たような気が…。」

すると僕達の目の前に見える小屋の中かららいと達の声が聞こえてきたんだ。

僕は沖田さんと小屋の中へと立ち寄ってみる。

「ここに居たんだらい…と?ん?」

僕の声にらいととサイリスさんがこちらを振り向く。

「ん?みらか?」

「あ!?みらい君!ちょっと聞いてよ!」

サイリスさんは僕に言い寄ってくる。

どうやらその表情には少々苛立ちが見える。

「あのね、らいとさんが私もこれからの修行に連れて行ってって言ってるのに連れて行ってくれないって言うのよ!どう思う?」

「あのな…サイリス、俺は遊びに行くんじゃないんだぜ!?」

「そんな事…言われなくても分かってるわよ!」

そんな口論を聞いていると見かねたダンさんがサイリスさんに言い聞かせようとする。

「サイリスいい加減にしないか?らいと君も困ってるだろ?」

「兄さんは黙ってて!!」

「な!?」

サイリスさんの真剣さに思わずダンさんもたじろいでしまう。

するとらいとは深い溜息をつく。

「ふぅ~~~わぁったよ!」

「えっ?じゃあ…!」

サイリスさんは飛び切りの笑顔を見せる。

「わぁった!わぁった!じゃあ連れてくよ…でも…本当に危険だからな!」

「もちろん!私だってもっと強くなりたいから!」

らいともサイリスさんも、既にこれからの事を考えている。

二人はこの国に残り自分の技を高める為の修行をするみたいだ。

レイオールはというと元から邪馬国との貿易絡みでこの国との繋がりがある事で邪馬国に残り復興を手伝う事としたのだ。

そして残る僕、ダンさん、飛鳥さん、そしてフレアース様を加えた四名で次なる目標に向かう事になる。

フレアース様の存在…何故彼女がここに居るか…なのだが……。

風雅との一戦後…数日前に僕達の前に現れたフレアース様。

「フレアース様!?」

「久しぶりね、皆!どうやら風雅には勝ったみたいね。」

「はい!皆で勝ちました!」

僕のその声に笑顔になるフレアース様。

「それは私も皆のサポートをしたかいがあったわ!それで風雅はどうなったの?」

「風雅…は。」

「消えたのね…。」

僕は頷く。

すると重苦しい空気の中…飛鳥さんが口を開く。

「フレアース様…兄は最後まで立派に戦って逝きました…ですがその時に何故か僕の元にこんな物があったのです…。」

「飛鳥さん?」

僕もフレアース様と飛鳥さんの元へ行き飛鳥さんの手にしていた『それ』を見る。

玉状になった『それ』には僕は見覚えがあった。

「それは!?どこかに消えていた『希望』だよ!」

「えっ!?みらいさんそれはどういう事?」

僕の話に飛鳥さんは食いついてくるとフレアース様が口を開く。

「これはもしかして『風雅』の魂なのね。」

「えっ?それってどういう事ですか?」

フレアース様の言葉に飛鳥さんはキョトンとした顔をしている。

「風雅さんを蘇らせれるかもって事だよ?」

僕のその声に飛鳥さんに僅かだが笑顔が戻る。

「本当ですか?」

「うん!」

するとフレアース様が答える。

「みらい君…聞く所によるとこれはみらい君の力で魂化した風雅なのね…?」

「そうです…僕の『黄泉がえり』で魂になった風雅です。」

フレアース様は考える表情をすると口を開く。

「昔…『転生』を施す魔法が土の魔道士『アースウェル』が住む地にある話を聞いた事がある…行ってみようか?」



こんなやり取りをしたのだ。

フレアース様、僕と飛鳥さん、そしてダンさん四人はこの後、風雅復活の為の情報を得る為に地の魔道士『アースウェル』の住む地中世界へ行く為、海を越え地の大陸『ウェザルーク』へ向かう事になったのだ。

「沖田さん!私行ってきます!」

「ああ!飛鳥、君ならきっと風雅を救える!そして皆さん!本当にありがとう!」

沖田さん…柚子葉ゆずのは様、そして天草様…は僕達の旅立ちに来てくれたのだ。

「油揚げならいつでも食べにおいで!」

柚子葉さんもニコニコしている。

凄く親しみやすいおじいちゃんである。

そしてゆっくりと僕達の前に歩み寄ってくる天草様。

天草様は僕達を天下人らしい表情をする。

「そなた達…今回の件本当に世話になった…これからそなた達が助力を求める事があれば我々は国を上げて力を貸す事を約束しよう。」

天草様は僕ににっこり笑った。

「本当にありがとう。」

こうして僕達の次なる目的地は大大陸『ウェザルーク』!

風雅を救う為!ウェザルークへと出発するのだった。

お読み下さりありがとうございました!







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