第60話邪馬国戦…終結へ


「いくよ風雅!!」

「夢魔法『黄泉還り《よみがえり》…。』」

眩い光が辺りを照らす。

皆々をも照らすその光は次第に大きくなっていく!

誰もがその光に思わず目を閉じてしまう…。

「なにっ!?うわっ!うあああーーっっ!!」

風雅が叫びその目を閉じると彼の全身が光の中に包まれていく。

ここは……。

真っ暗な闇の中に風雅は一人立ち尽くしている。

視界は漆黒の闇…そして無音…無臭と何も感じる事ができない世界に一人…彼は取り残されていたのだ。

「なんなのだ…ここはどこ…だ?」

彼の言葉もその世界では只の呟きで終わってしまう。

すると徐々に光照らされやがて視界が開けたのだ。

一人取り残された空間で視界を取り戻した風雅は先へと足を進めてみる。

気づくと風雅の身体は元の自分の姿…人間の身体でありどうやら当たり前のように手足も動くようだ

「先まで…俺の身体は怪物の姿だったはず…これは一体…。」

風雅は自分の両手のひらを見ているとふと…先の方に光が見えてくる。

自然とその光の方へ歩き出す自分の足。

自分の意思かそれとも何かに操られているのか…それすらも今の風雅には分からなかったのだ。

一歩、また一歩…風雅は光の方向へ歩いていく。

「………光………あの先には一体…。」

風雅は一言呟くもその足は光の先へと歩みを止める事は出来なかったのだ。

そして光にようやく辿り着き…足を一歩踏み出す風雅。

その瞬間…巨大な門が目の前に現れる。

「こ…ここは……。」

風雅はそう呟くと巨大な門に辿り着く。

するとどこからともなく風雅の耳にある声が流れ込んでくる。

(よく来た…ここは現世と常世とこよの間の門…名を『審判の門』という。)

「!?お前は…一体誰なんだ!?」

(ふふ…お前がこの審判の門の前に立っているという事は…人としての天寿が尽きようとしているという事…分かるか?)

「はっ!?…俺は……やはり…死んだ……のか?」

(まあ、分かっているなら話は早いのだが…ここでお前には普通に門を潜ってもらえば事足りる話なのだ…だが…今回のお前の『死』は例外であるのだ…。)

「例外?例外とはなんだ?」

(例外と言うのはな…お前が完全に死んでは無い状態であるという事だ…お前は試されているのだ。)

「誰にだ?俺が一体…誰に試されてるというのだ!?」

(そうさの…我にこの様な例外的な死の申請を与えた、魔法の力で生死を操る者の仕業と言うべき…かの。)

「なにっ!?その者とは!?」

(それはお主が分かっているであろう…お前を倒した者。)

「くっ!?みらいとかいうあの…それで貴様は一体!?」

(我は地獄の門番『ケルベロス』と呼ばれておる。)

すると風雅の目の前には巨大な門、そしてケルベロスといわれる双頭の巨大な犬が待ち構えていたのだ。

「地獄の門番とも呼ばれるケルベロス…なるほどな…こいつの前にいるって事はどうやら俺は先の戦いで敗れ…ここで終わりのようだな…」

(まて…人間よ…お前にかけられた魔法は『黄泉がえり』と名付けられているらしいが…これは『死』と『転生』を操る事が出来る様なのだ。)

「なにっ!?俺を救う為にこんな技を使ったと言うのか…?」

風雅は考える…彼は何故俺にこんな魔法を…。

彼なら怪物と化した俺を倒すだけでいいではないか…。

俺を試すようなこんな技などこの世に存在していいものなのか…。

俺は思考を巡らせているとふと脳内に誰かの声が聞こえてくる。

「にい…さん……。」

(誰かが俺を呼んでいる…これは…飛鳥…なのか?)

「風…雅……お前はどうして……。」

(これは……沖田……?)

『風雅…様……』

(ら…蘭……樹……の声…。)

これは一体どうなっているのだ?

誰がこれを?

幻聴か?

(お前達…こんな俺を呼んでいるのか?)

『これはお前に語りかけてくる魂の声…このまま死を選ぶ選択も出来るが…お前に戻ってきて欲しい人間もいるらしい…。』

ケルベロスの俺に語りかける声。

「俺は…蘭樹の為とはいえ…沢山の犠牲をだしてしまった…帰る…など。」

『そうか?だが…お前の妹はじめ、他の人間達はお前に帰って欲しいと願っているようだが?』

「そう…なのか?」

『お前が『自分の死』をどうしようとお前の自由だが…結論を聞こう…。』

「俺は…。」

風雅はみらいの放った『黄泉がえり』の光に包まれ消えた。

だけど僕にとっても皆にとっても決して後味の良いものではなかった…。

風雅の消えたそこに飛鳥さんは立ち尽くしていた。

「兄さん…貴方は最後まで魔幻獣の魔人達と戦ったのですね…きっと蘭樹さんは僕達が何とかします!」

「飛鳥さん…技を使った僕が言うのもなんだけど…。」

僕の言葉に考えた顔をした彼女は被っていたフードを脱ぎすてニコリと笑う。

「みらいさん!兄の心を残してくれていて…人として終わらせてくれてありがとう!」

「えっ?」

僕が問いかけると飛鳥さんは口を開いたんだ。

「みらいさんがあの技を使った後にね…兄さんと話せた気がしたんだ…。」

「えっ?それってどういう…事?」

「兄さんね…力を使い果たしていて…あの技の後私の脳内に兄さんの声が聞こえてきた気がしたの…。」

「俺のたった一人の妹…飛鳥……俺は蘭樹の為とはいえ…この地の人々を沢山蹂躙し破壊し尽くした…罪はもう…戻れはしない…だから…。」

「俺の代わりに…魔幻獣十二魔人を……そして蘭樹を…。」って…。

消えた風雅…果たして風雅はどんな選択をしたのか!?

そしてみらい達のその後は!?

お読み下さりありがとうございました。





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