第56話鳥の魔人

怒りのサイリスの槍は鳥の魔人の頬を傷つけそして壁に突き刺さった水龍の槍からは水が滴り落ちる。

ポタポタ滴り落ちた水はやがて小さな溜まりを作っていた。

「私の槍も貴女をきっと許さないわ…。」

サイリスさんはそう言うと槍に命じる。

「槍よ…私の手中に…。」

すると槍は自身の意思があるかのようにグラグラ動き出すとそのまま飛びサイリスさんの

手中に戻る。

すると鳥の魔人はぷるぷる震えながら何かを呟いている。

「人間…だから………。」

鳥の魔人の取り乱す様子…その様子は異様に見えた。

「だから人間は嫌いなのよ!!」

鳥の魔人の言葉に返すサイリスさん。

「貴女…寂しい人ね…本当の愛を知らないなんて。」

「なに?あんた人間のくせに私に説教でも?」

「そうよ…風雅さんと蘭樹さんの気持ちを考えたら貴女みたいにへらへらしていられないわ!!」

サイリスさんの言葉はここにいる全員が同じ気持ちであろう…。この国をここまでしたもののきっとここにいる皆が風雅の事をそこまで憎みきれずにいるはずだ。

すると風雅は口を開く。

「俺は…弱かったのか……。」

「兄さん……?」

飛鳥さんが兄である風雅に声をかけようとする。

すると風雅の身体は急激に変化し暴走しはじめる!!

「うがぁぁぁっっ!!!???」

「兄さんっっ!!??」

風雅の身体には猛烈な風が巻きついていき風雅の身体を更にモンスターへと変化させていく。

「ぐが!!ぐあああっっっ!!!」

すると鳥の魔人は笑い声を上げていく!

「あはっ!あははははっ!!いよいよね。」

「貴女!一体風雅に何をしたの!?」

サイリスさんはそう問うと鳥の魔人は答える。

「えっ?下等な人間だった彼をパワーアップさせる薬を彼にずっと投与してきたけど今回が最後の薬の投与が終わった所よ…。」

そう言った鳥の魔人の手には空っぽの瓶が握られていた。

鳥の魔人は瓶をグシャりと握りつぶす。

「さて…じゃあ私も怪物を完成させたし放置しておいてもこの邪馬国ら沈むわね…じゃあね…この地と共に皆終わりよ。」

すると鳥の魔人は大きな翼を広げるとサイリスさんを見据える。

「あ!あんたは生きてたら私が必ずこの手で仕留めるわ…まあ、ここで皆仲良く海の中に沈むでしょうけどね!あーっはっはっはっ……」

鳥の魔人はサイリスさんにそう言い残し空高く飛び高速で消え去るのだった。

「鳥の魔人…確かに危険ね……。」

サイリスさんがそう呟く。

そして鳥の魔人が消え去ると残された風雅は突然苦しみ続けている!!

「ぐあああっ!!がはっ!!」

風雅の身体は薬の影響により形を留めず変化し続ける!!

そんな彼の身体の状態変化を誰も止める事が出来ずにいた。

「兄さんっっ!!??」

飛鳥さんが風雅の元へ走りよっていく!!

「来るな!!飛鳥!?」

風雅の必死の叫びに飛鳥さんはその足を止める!

「飛鳥…俺はもう魔幻獣十二魔人の一人としてこの身を捧げた時からお前の兄、そして人間である事を捨てたのだ…この身が朽ち果てるまでお前達の敵として生きる他に術は無いのだ…だから…。」

そこまで話した風雅のその身はどんどんモンスター化が加速していく。

「ぐがっ!うがあああっ!!」

風雅の身体の八割以上がいまや巨大なモンスターとして存在しているのみだ。

辺りは風雅の風により砂嵐が舞っている。

「風雅…。」

僕は飛び出そうとしていた飛鳥さんをおさえていた。

飛鳥さんは諦めたように力を抜く、僕は落ち着いた飛鳥さんからそっと手を離す。

すると飛鳥さんは風雅を震えながら見ている。

「兄さんね…まだ私が小さい時……私が遊びに夢中で大木のてっぺんに登った時、降りれなくなった私が謝って落ちた時自分の身体を犠牲にして私を助けてくれた時があったの…。」

飛鳥さんはそう言うと風雅の身体の一部を指さしたのだ。

「あの傷は?」

「あの傷がそう…私を助けてくれた時に作った傷。」

すると飛鳥さんは涙を流し始める。

「う…うあああっ!…兄さんがどんなになっても……私の兄さんだよおっっっ!!」

飛鳥さんは叫び泣く!!

その声はこの周辺の誰にでも聞こえるように響き渡る。

「飛鳥さん。」

サイリスさんはいつの間にか飛鳥さんを抱きしめていた。

「サイリス…飛鳥さんを頼む。」

ダンさんはそう言い残すと風雅の元に歩きだす。

「みら?俺達も行くぞ!?」

らいとは僕の肩をポンと叩き風雅の元へ。

僕はサイリスさんに抱きしめられている飛鳥さんに聞こえるように一言。

「風雅さんはきっと守るべきものを守れた…ここからは僕達の番だ…この戦いを終わらせよう。」

僕は、そう言い放つと今やもう巨大なモンスターと化した風雅の元へ歩き出す。

誰もが生きていればやるせない経験をするであろう…大切なのはそれを目の当たりにした時にどう動くかだ。

過ちは正していけばいい。

そして、きっと…明日に繋げよう。

風雅との戦いは最終決戦へ!

みらい達は!?そして風雅はどうなる!?

お読み下さりありがとうございました!



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