第52話変貌

風雅の技によって彼の周りにあった全ての有機物無機物は消えたかに見えた。

僕が意識を取り戻すとそこには何も無い世界にたった一人だけ残されていたのはあの男…風雅だった。

「皆あああっ!?どこにいったのさ!?」

僕が叫ぶと辺りは静寂に包まれ僕と風雅しかいない世界になったように感じてしまう。

「嘘…だよね?…らいと!?」

僕が叫んでも何の音も聞こえてこない。

「サイリスさん!?沖田さん!!」

「ダンさん!!レイオール!!飛鳥ちゃん!?」

僕が皆を呼んでも辺りは静まり返り何も聞こえてこない。

すると幻影が僕の目に朧気に見えてくる。

「えっ!?あれは江渡守えどのもり?街が見えちゃってる…。」

そう…西の都から来てくれた幻術師である柚子葉ゆずのはさんが作りだした幻術はいつの間にか消え去り美しかった江渡守の風景はまさに地獄絵図と化していたのだ。

「そんな…こんな事が!?」

僕はその光景に耐えられず思わず叫んでしまう。

すると僕が目を凝らすと人が倒れているのを確認出来たんだ。

僕は思わずその人物の所に駆け寄ると抱き寄せ声をかける!

「大丈夫ですか!?」

「う…うぅぅぅ…すまない、ワシの幻術も少しばかり衰えたらしい…」

僕が声をかけた方はなんとあの柚子葉ゆずのはさんだったのだ。

すると近くから聞こえる微かな声を僕は聞き逃さなかった。

柚子葉ゆずのはさん!ちょっとだけ待っててください!」

僕は彼を静かに寝かせるとその声の元へと辿り着く。

するとその声の主はこの邪馬国の長である天草露人あまくさろじんその人だったんだ。

「天草様!しっかり!」

僕は意識を失っていた天草様を抱え柚子葉さんの元へと戻る。

すると僕に抱えられていた天草様が突然口から赤い飛沫をあげるのだった!

「天草様!?」

僕はすかさず彼を寝かせるとヒールをかける。やがて僅かながらに歪んだ顔が和らいでいく。

僕は柚子葉さんにもヒールをかけると柚子葉さんは口を開く。

「すまんな…ワシも天草も戦闘向きでは無くてな…お主達に無理ばかり。」

「いえ!その役目は僕達のものです!」

僕がそう言うと柚子葉さんは続けるのだった。

「彼奴の部下くらいの攻撃には耐えうるものだったのだが…流石に風雅の攻撃には耐えきれんかったわい。」

「大丈夫…ここからは僕が!!仲間の仇もきっと…。」

僕は半信半疑だったけど皆の生存確認は出来ていない、だけど…風雅の気持ちは確かに分かる!けど、こんな事…やっぱり許せないよ。

僕がたった一人になったからって負ける訳にはいかないんだ!!

僕は覚悟を決め彼に力強く言うと柚子葉さんはその手を上げていき風雅の方へ指を指していく。

「君にはまだ頼もしい仲間がいるじゃないか。」

僕は柚子葉さんのその声に驚き振り返るとなんとそこにはボロボロになりながらも何とか耐えきった仲間達の姿があったんだ。

「皆あああっ!!」

僕は急ぎ皆の元へと駆け寄る。

すると皆を守るようにして立っていたらいとの姿があったんだ!

よく見ると片腕には風雅によって風に閉じ込められていた飛鳥さんの姿も見える!

そしてらいとは飛鳥さんを静かに寝かせる。

「らいと!!?」

「ああ…わりぃなみら…ちょっとあいつの攻撃キツかったわ」

そう言うとらいとは倒れていく。

バタッ!!!

「らいと!!??」

「らいとさん!!??」

サイリスさんはらいとに寄り添い抱き抱える。

「う…うぅぅぅ…どうしてこんな無理ばかりするのよ。」

「いってて…技使って皆守るのに精一杯だった!サイリス…わりぃ…少しの間動けねぇや…」

「本当に…バカなんだから…。」

そう言ってサイリスさんはらいとを抱きしめている。

「らいと…。」

僕は振り返り風雅を見据える!

「勝ってくるよ!」

そう言った僕は駆け出す瞬間らいとの言葉が耳に入った。

「みら!今のお前ならきっと勝てる。」

「えっ!?……うん。」

僕はらいとの言葉に聞こえない返事をすると風雅の元へ走ったんだ!!

僕に続いてきてくれたのはレイオールとダンさんだった。

「みらい!俺もやるぞ!!」

「みらい君ばかりにいい格好させる訳にはいかないな!?」

「二人とも!ありがとう!」

そして僕達三人はこの戦い最大の敵風雅を目の前にするのだった。

立ち尽くす風雅はその身体をキラキラと光輝かせ辺りには風が舞っていたんだ。

「風雅…あんたはやり過ぎだよ…僕の仲間を…そしてこの国をここまでするなんて。」

僕の声に風雅は微動だにせずこちらをずっと見ていたんだ。

「何とか言えよ!オイラも、もう我慢の限界だぞ!!」

「風雅よ…昔の貴方は六大魔道士としての数々の武勇伝は師から聞き尊敬していた…だが、今の貴方は倒すべき敵だ。」

レイオールもダンさんも僕同様あいつを許せない気持ちでいっぱいだったんだ。

すると風雅はいつの間にか血の涙を流していたんだ。

そして、その口を開いた風雅は叫ぶ。

「わかって…分かっているさ、蘭樹一人の生命とこの国の重さはお前らは国を選べと言うつもりなんだろ!!??」

風雅の気持ちを考えたら確かに蘭樹さんを選ぶのかも知れない…だけど……だけど!!!

「お前らよりも…この国よりも……」

すると風雅の身体は徐々にその姿を変えていく!身体の筋肉の増強はボコボコと音が聞こえそうなほど隆起し強靭な身体へと変化していく!まるでモンスターのように…。

「みらい!俺はバリアをガチガチに張るぞ!!『ウォーターウォール』!!!」

仲間の元へバリアを張っていくレイオール。そして僕の隣にはダンさんがいる!!

「私も攻防兼ねた今の最大の技を放つ!!覚悟しろ風雅!!??」

ダンさんの叫びに呼応するように風雅はまさにモンスターへと身体を変化させていた!!

「ぐぅぅぅ…貴様らを滅ぼせばこの国は終わる…くらうがいいーーー!!」

風雅の周りに風が集まっていく。

(これは…やばい…さっきの攻撃よりももっと密度の濃い風を集中させている…どうする僕!?)

「いいか…俺は…俺は!!蘭樹を選ぶ!!!全て消え去れ!!!『デスストームバースト!!』」

風雅が、叫んだ瞬間…。

僕の中で何かが弾けたんだ……。

皆が倒れていく中、ダンさんと僕は遂に風雅との戦闘に突入したんだ!

一体どうなって行くのか!?

お読み下さりありがとうございました!



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