第41話沖田蘭丸と天草露人

ようやく江渡守えどのもりに無事辿り着いた僕達一行。早速、沖田蘭丸さんに会いに行かなきゃ、僕がそう考えているとお城の方から誰かが走ってくるのが見えたんだ。

「えっ!?あれなんだろ?」

僕がそんな一言を漏らすとその何かは僕達の方向へ突進してくる!!ぐんぐん僕達の元へ走ってくる!!あぶないっ!!??

「うわっ!?」

「うわあああああっ!?」

どーーーーー〜ん!!

何者かに激突されたかに見えた!だけど…あれっ!?自分に何も起こってない…僕が目を開けていくと僕達の目の前で突進してきた誰かを抑え込むダンさんの姿が!?

「兄さん!?」

「ダンさん!?」

サイリスさんと僕の声が響く。ダンさんの捕まえた誰かがモゴモゴ声を出そうとしている。ダンさんが手を離すとそこに居たのは少年剣士の姿があったんだ。

「かわいい子ね!ヨシヨシ!」

サイリスさんが近づき声をかける。

「でもね、危ないからあんまり走っちゃダメよ。」

サイリスさんは少年の頭を撫で話しかける。するとダンさんも口を開く。

「坊主、そんなに急いでどこへ行くつもりだったのだ?よかったらお兄さん達に話してみなさい?」

サイリスさんとダンさんは少年に声をかけているが少年はぷるぷる身体を震わせている。すると後ろから飛鳥さんが叫んだんだ。

「その出で立ち、もしかして…君は沖田様のお子様でしょうか!?」

その言葉に僕達も驚き戸惑ってしまう。そしてサイリスさんも口を開く。

「えっ…そう言われればよく見たら何となく沖田さんにそっくりだわ…。」

サイリスさんがそういうと少年はスクッと立ち上がり身体中の埃を払うと一度咳払いをする。

「コホン…訳あって今はこんな姿ではあるが私が沖田…蘭丸だ。」

その言葉を聞いた瞬間、皆の動きが固まる。

「えっ…!?あなたが…沖田…」

「蘭…丸……?」

僕とサイリスさんの声に一瞬、時が止まる。

そして沖田さんは目を閉じコクリと頷く。

「「ええええええええっっっっっーーー?????」」

沖田さんとやっと出会えた僕達は沖田さんにより会議室へと通されたんだ。広めではある現代にしたら二十畳程の和室、奥の板には地図が貼られこの邪馬国の全景が見えていたんだ。僕達は座り少々待たされる事になったが程よくして沖田さんが姿を現したのだ。少年が入ってくるのかと僕達は待っていると入ってきたのは成人の美青年の姿の沖田さんだったのだ。

「あれが…本物の沖田さん?」

僕がそう言葉にすると沖田さんは僕達の前に立ち止まりこちらを振り向く。そして口を開くのであった。

「皆さん遥々この邪馬国まで御足労くださり本当に感謝しております、この邪馬国の天下人であり我が君主『天草露人あまくさろじん』も感謝の意を述べたいと今お顔を出すとの事、しばし待たれよ。」

沖田さんはそう言うと奥の部屋へ入り一人の少女を連れてきたのだった。

「あの方が……。」

「天草……露人…。」

僕もサイリスさんもそして皆が驚き戸惑ってしまう。すると僕達の前に立ち止まりこちらを振り向くと天草露人が口を開く。

「皆の者そのままで良い…私の心よりのお礼を述べたかっただけじゃ。」

ニコニコ僕達を見ているこの少女が邪馬国の天下人のようだ。何の汚れもないような透明感のあるこの少女が。すると少女は続ける。

「この度の件、敵があまりにも大きく強力であった為、お主らに頼ってしまう事本当に申し訳ない。ん…?そこの忍びよ、こちらへ来なさい。」

そうして呼ばれたのは飛鳥さんだったんだ。

飛鳥さんはこくりと頷き天草様の目の前に跪く。すると天草様は飛鳥さんの頭上に手のひらを翳すと天草様の手から光が溢れ出し飛鳥さんの身体を包み込む、あまりにも眩しすぎるその光景に僕達は思わず目を塞いでしまう。そしてどれくらいたったのだろう…僕の感じた所一分程でようやく目を開けれるようになる。僕の目の前で起こった事、それは輝く飛鳥さんの身体だった。徐々に小さくなっていく光が治まると飛鳥さんは自分の両手を見つめている。

「飛鳥さんどうかした?」

僕が尋ねると飛鳥さんは僕を見て笑顔になる。

「いえ、これなら拙者も足でまといにはなりません。」

僕達は天草様の力に驚いている。

「この子はまだここに居る誰よりもちょっと力が足らない様でした…勝手な事をしてすまなかった。」

天草様のその言葉に飛鳥さんはその場に跪き謝罪をする。

「天草様、拙者の弱き力の為に力をいただき本当に申し訳ございません!」

「いいのです!本来なら国民の為、自ら戦いに赴くべきなのですが本当に皆様には申し訳ないと思っております。」

そう言った天草様の顔は寂しげだったんだ。すると今度は沖田さんが口を開く。

「皆様が本当にここまで助力に来てくださった事に敬意を示します。どうか…私の話を聞いて力を貸していただきたい。」

「この邪馬国をまとめるこちらの御方は、なぜこの様な姿をしてこの様に国民に慕われているのか…その理由は今皆様が見た力にあります。

天草様の力『解花かいか』は、この邪馬国にとってなくてはならないこの国の至宝なのです…まずは見ていてください。」

沖田さんはそう言うと天草様の元に跪く。そしてまた天草様は今度は沖田さんの頭上に手を翳す。そしてまた光が溢れ出すと今度は沖田さんの姿は少年の姿へと変化するのだった。

「おお…」

「凄い。」

僕達はその力に驚いたんだ。すると天草様は一息つき、そして口を開く。

「ふぅ…私のこの力は古くから受け継いだ力で生物の力を開花させる事ができるのです。ですが適応もあって誰でもとか何でもという訳にもいきませんし万能ではありませんが…。」

天草様はそう言うと少し疲れた様子で一息つく。沖田さんが支えると天草様はにこりと笑顔でまた続けたんだ。

「今こちらに向かっているという風雅とその恐ろしい集団、魔幻獣十二魔人は私が感じてる事、最終目的は私のこの力を欲して向かって来ているのです。」

僕達はその言葉に驚く。でもこの力があればもっと奴らの力は拡大していくだろう。すると沖田さんが続けたんだ。

「本来なら天草様のお力の情報は幹部でも限られる者のみしか知りえないのです。ですが…」

「敵の大将があの魔幻六芒星の一人で邪馬国部隊長の一人でもあった『風雅』だった為、その情報が敵に知られたのですね…」

そう言った飛鳥さんの身体は震えていたんだ。

天草様と沖田さんは驚きの表情を見せると天草様は飛鳥さんの肩を抱きしめ言葉にする。

「あなたはここまで私の為に数々の試練を受けてきたのでしょう、敵があなたに関する誰かだったとしても私とこの国、そして世界の為にあなたの力を貸してはいただけないでしょうか?」

笑顔でそう言った天草様の前で涙を流す飛鳥さん。優しい力で包み込む天草様の計り知れない愛を見ていた僕達も心を温めたんだ。

こうして僕達は心新たに風雅討伐の作戦会議をする事になったんだ。お疲れであろう天草様を部屋にお連れしてきた沖田さんが改めて会議室の地図の前に立つと僕達は作戦会議を始めるのだった。

いよいよ風雅討伐の為の作戦会議が始まった!

邪馬国の神のような存在の天草様を守る為、今こそ立ち上がる!!

お読み下さりありがとうございました。


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