第40話天下人、天草露人

僕達一行は隠れ里を出ると、このまま『江渡守エドノモリ』に向かう事になる。急がないと、飛鳥さんの兄でもある風雅をなんとしても止めないと!!僕は心に強く誓ったんだ。

先ずは『江渡守エドノモリ』にいる沖田さんの元へ僕達は向かったのだった。この邪馬国の中心である『江渡守エドノモリ』はこの国の首都でありここには桜というものが咲き誇る美しい場所だとサイリスさんに聞いたのでこんな緊急じゃなければゆっくりみたいと思っていた。この国を守る為に僕達はここまできたんだ。僕達は街道沿いをひたすら北上していく、ここから先に出てくる敵は倒して進まなければ『江渡守エドノモリ』が危険だ。風雅達より先につかなければ…皆がそう思っているだろう。この街道沿いも以前は賑わっていただろうに今は一人も歩く人など見かけない…そんな事を感じながら歩いているとこれまでまったく見かけなかったが一人の行商人を見かけて声をかける。

「こんにちは!どこまで行くんですか?」

そう尋ねる僕にビクッと身体を震わせ怖々ながらもこちらを振り向く行商人、やつれたその顔は何かを物語っているようだった。そして行商人は口を開いたんだ。

「ああ…人間様でございましょうか?」

僕達一行を見て魔物ではない何かを感じたのだろう…そんな問いを彼はしてきたんだ。

「ええ…僕達はれっきとした人間ですけど…どうされました?」

「よ…よかったです。」

そう言った行商人は辺りを見回すとため息をつき話し始めるのだった。

「実は私は西の都で油揚げを作り、こうして売り歩く行商人なのですが…私の作る油揚げはこの邪馬国でもちょっとした土産になるくらいの出来の油揚げでしてこれを生業に売り歩いているのですが…」

そう言った行商人は顔がみるみる青ざめてきている。

「私の油揚げを所望されたこの邪馬国の天下人『天草露人あまくさろじん』様の為にお届けしてる途中、色々な魔物に襲われ逃げ周り、ようやくここまで来たのです。もちろん旅先では色々な事がおきました、やれ怪物だ、やれ山賊に野盗、ここまで命からがら来れたわけでございます…」

そう言った彼の顔は真っ青で今にも倒れそうなほどやつれていたんだ。

「あの…では僕達と一緒に『江渡守エドノモリ』まで行きましょうか?」

僕がそう言うと行商人さんは目に涙を浮かべている。

「ありがとうございます!ありがとうございます!私もここまでの街道には誰一人歩いておらずやっとここまで来れたのです!!」

こうして僕達は行商人さんをパーティーに加え『江渡守エドノモリ』までの足を急いだんだ。

その頃、沖田は邪馬国の天下人『天草露人あまくさろじん』に呼ばれその元に来ていた。

部屋の中には何度も入っている沖田だったが何度来ても慣れない不思議な雰囲気が漂う…沖田が部屋に入り誰もいない辺りを見回すと部屋の主、天草露人が席に突然現れたのだ。

「来たか…我が守護人もりびと沖田蘭丸よ。」

「はっ…」

頭を深々と下げる沖田の容姿は20代半ばくらいの容姿端麗、眉目秀麗の美青年である。

「こちらへ…」

天草は沖田を呼ぶと沖田は天草の前に跪き深々と頭を下げる。沖田の頭上に手のひらをかざす天草…天草の掌から光が発生し沖田を照らす。するとみるみるうちに沖田の身体は縮んでいく、なんと沖田の身体は少年の姿へと変化したのだ。沖田は頭を上げ口を開く。

「我が君…天草様、僕の生まれつきの病を抑え、力を僕に与えくださり誠に感謝極まりない事です。」

少年沖田は天草に敬意を示す。天草は、にこりと笑顔で答える。すると天草は少年沖田の頭を撫でながら口を開く。

「良いか沖田よ…この邪馬国には古よりこんな言葉があるのだ…神風をおこすのは強者のみである…だが本物の強者とは、人の為、思う心の強き者こそ、本当の強者である…と。」

少年沖田は心を打たれる、何度この言葉をこの方に出会ってから聞かされてきた事であろう。

少年沖田は顔を上げると天草はニコニコ笑顔で話を続ける。

「沖田よ、敵である風雅は元『魔幻六芒星まげんろくぼうせい』の一人であり、元この国の為に働き、人一倍爽やかで現すなら穏やかな風、といった男だった。それが…なぜ……。」

天草の表情が暗くかげる。

「天草様、僕が必ずや風雅を倒し元の彼へ戻し魔幻獣十二魔人の野望を食い止めてみせます!!」

力強くそう言った沖田の顔はとても勇ましかった。天草の為に!沖田の心に活気が戻ったようだ。

「ところで、西の都の太子から我に届け物があり行商人を派遣したと報告があってな…こんな時期にそんな方をこちらに向かわせたらしく我はその方が心配になってな…すまんが誰かその方の保護に行って欲しいのだ。」

天草は苦笑いでそう言ったのだ。

「承知致しました!そのお役目引き受けましょう。」

「すまぬな…沖田こんな時期に…。」

「いえ…僕の奇病は、天草様のお力がないと、この少年の姿から青年の姿になれぬのです、天草様あっての僕の力を存分に発揮致しますゆえ…。」

沖田はそう言うと立ち上がり頭を下げる。

「では…この沖田、行って参ります。」

沖田は一言、言い残し天草の部屋を出るのだった。その姿はすっかり少年であった。

一方のみらい達は行商人を一向に加えながら

に向かっていた。

「結構『江渡守エドノモリ』って遠いんだね?」

「そうね…でも里まで行った時よりは時間はかからないはずよ?」

サイリスさんが答えてくれる。すると行商人さんが口を開いたんだ。

「この邪馬国やまのくにの首都である江渡守えどのもりは文化豊かなこの世界の経済的な面でも島国とはいえ中々なのです、こんな時期でもなければ是非ゆっくり観光なども楽しまれるのも良いかと。」

「そうね、本当に素敵な国だものね…所で、江渡守にも詳しそうな行商人さんは沖田蘭丸様ってご存知?」

サイリスさんのその言葉に驚いた表情の行商人、すると笑顔で答える。

「あの小さなお侍さんですね、よく承知しておりますよ?」

そう言った行商人さんの顔を不思議そうに見ているサイリスさんは答える。

「小さな?お侍さん?えっ?どういう…事?」

サイリスさんは問いただす。すると行商人さんは疑問の残る表情を浮かべている。

「沖田蘭丸様よ?あの強くて凄く素敵なお侍さんよ?」

「ええ…そんな時の沖田様の時もありますが常には小さなお侍さんでございます。」

行商人の言ってる意味が僕達は理解出来ずにいたそうして疑問の残ったままで歩いていると先頭を歩くダンさんと飛鳥さんの声がかかる。

「おおっ!!見えてきたぞ!あれが江渡守えどのもり!?」

「皆様!江渡守えどのもりに到着しました!!」

僕達の目の前には僕の元の世界の情報で例えるとまさにあの江戸時代の江戸幕府という街並みをしており最奥にはお城がそびえ立つという世界が広がっていたんだ。

「「おおおおおぉぉ!!」」

僕達一行はその煌びやかな素敵な国に声を揃え感動したんだ。

お読み下さりありがとうございました!

いよいよ江渡守に到着したみらい達、、、そしてこれから何が起こるのだろうか。

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