第39話忍びの隠れ里
僕達一行はついに隠れ里へ辿り着いつく。そして皆、洞窟の前でその穴の大きさを見上げている。
「ここが飛鳥さん達の隠れ里の入り口なのね?」
「そうです、ここが入り口です、では行きましょう!」
サイリスさんの問いに飛鳥さんは答える。そして僕達は中へと入って行くと先頭を歩く飛鳥さんが立ち止まる。
「さ…皆様着きましたよ!」
洞窟を抜けるとそこには緑の森の中に小さな家が無数にある小さな村があったんだ。
「ここが…」
「隠れ里…なのね?」
僕に続きサイリスさんも洞窟の奥にあった村の光景に驚いてるようだ。
すると飛鳥さんはこちらを振り向く。
「ここが拙者達忍者の隠れ里です!まずは長老の元へ案内します。」
飛鳥さんに着いていくと村で一番最奥に建っていた家に案内される。
「どうぞ!こちらが長老の家です!」
僕達も飛鳥さんに続き家の奥へと入っていく。すると奥の座敷にたどり着く、そして広い座敷にぽつんと座る一人の老人の姿があった、きっと彼が長老なのだろう。
「長老、戻りました!飛鳥です。」
「おおっ!戻ったか飛鳥、無事で何よりじゃ。」
そう言った長老は口周りに立派な髭を携える威厳のありそうな老人だったんだ。長老はこちらを眺めながら僕達にも声をかける。
「この度は飛鳥の頼みにおこたえいただきこの隠れ里まで足を運んでくださり本当に感謝しております。」
老人はそう言い深々と頭をさげるのだった。
「いえ、それより飛鳥さんからおおよその話は聞きましたがあらためてこちらまできました。」
「すみませぬ、では早速お話をしたいと思います。」
僕の問いに老人はそう答えると飛鳥さんから聞いていた話をあらためて僕達にしてくれたんだ。そして僕は一番聞きたい今の状況を聞いてみる。
「それで今、敵の部隊はどこまで進行しているのでしょうか?」
「ふむ…ワシらの暗部の情報によると西の都は占拠され改めてこの邪馬国の中心『
老人はそう言うとまた深く頭をさげる。
「どうか…飛鳥と共に魔幻獣十二魔人の先手をとり江渡守に一緒に行っていただき、そこに居られる『沖田』殿と共に魔幻獣十二魔人の『風雅』の野望を止めてくだされ!?」
長老が言ったその言葉は何故か震えていたんだ。
「長老…」
飛鳥さんはそう言うと僕達に身体を向け長老に並び頭をさげるのだった。
「えっ!?飛鳥さんまでそんな頭を下げなくても…」
「いえ…実は拙者がもう一つだけ話してなかった事があります。」
飛鳥さんはそう言うと顔を上げこちらを見つめる。会ったばかりの時とは違うもっと真剣な眼差しに僕もじっと聞いている。
「実は…その敵の総大将である風雅は、拙者の師でもあり、実の兄…なのです。」
「えっ!?」
「「えええっ!?」」
僕達は思わず叫んでしまう。すると長老は事の次第を話そうと口を開くのだった。
「あれは今より三年も前の事…その頃我々の里は平和な里だったのじゃ…確かに、我々は遥昔から隠密として、この国を裏で支える影として存在しておったのじゃ。」
◇
◇
◇
「我々、忍びは魔力を用い忍術という独自の術を使い暗殺の為の武器を使用し、時には体術もこなす正に暗殺の為の集団で、世の天下人の為に働きつつもこの地で暮らしてきたのじゃ。」
長老はそう言うと言葉を続ける。
「ワシは長として長年まとめ役をしてきたのじゃが…ここにいる飛鳥と今この地を陥落させようと暴れ回る風雅も元々この地で生まれ育ち成長してきたのじゃ。風雅もその頃はとても優しくそれでいて強く風の魔道士と呼ばれるまでになり慕うように飛鳥も弟子として二人とも忍びとしてもそれは素晴らしい力を発揮して来てくれたのじゃ。ところが…」
そういった長老の顔が曇り始める。
「ある時、西の最果ての地『
長老は静かに続ける。
「それから数ヶ月の時は過ぎ去り、帰ってこぬ風雅を探しに暗部も放ったのだがその暗部達もことごとく帰って来なかったのだ。そんな時、今度は危険を承知で飛鳥は数名の暗部と共に兄であり師でもある風雅を探す旅へと出たのじゃ。」
すると飛鳥さんが口を開く。
「拙者は兄を探しに向かいました、そしてなんとか敵の情報のあった那珂にもうすぐ辿りつこうかという時、偶然拙者は兄風雅と対面する事ができたのです。」
風雅さんを発見したというのに飛鳥さんの表情は暗いままだったんだ。
「風雅さんは?」
「はい…兄の容姿も明らかに変わり果てまるで野獣の姿、正に虎の獣人という姿に変わっていました、実は拙者の持つこの首輪と同じ物を首にかけていたのです、拙者が偶然兄を発見したのは目の前で人を襲っていた野獣を追い払おうとしたその時の野獣が、兄…の変わり果てた姿だったからなのです。」
そう言った飛鳥さんは震えながら続けたんだ。
「そこで拙者は襲われていた人を何とか逃がすと兄は口を開いたのです。」
◇
◇
◇
「飛鳥…か…何故俺の邪魔をする?」
「師匠…いや…兄さん…これは一体どういう事?何があったの!?」
拙者が兄に尋ねると兄は笑いながら答えたのです。
「ん~~強いて言うなら元々俺は風の魔導師なんて呼ばれて結構強かったのは飛鳥も知ってるだろ?」
「それは知ってるけど…兄さんは暴力なんて誰にも振るわなかった。」
「俺はあの時、那珂に向かったのだが、その時にな、正に覇王と言える素晴らしい人に出会ってしまってな…俺の人生で初めて心の底から敗北を感じこの人なら信仰でき、この世界を面白く変えてくれそうだと思う人だったんだ。その時、運命の風がふいたんだ。」
「えっ!?だ、誰なの?その兄さんを変えた人って…」
「それは飛鳥でも言えないな!俺が言える事は俺達の邪魔をする奴は誰だろうが敵だ!!」
兄、風雅はそう言うと拙者の身体に突然の痛みが走ったのです。拙者が気がつくと全身に爽やかな風がふいてきてその風により拙者の身体は少しづつ切り刻まれていて拙者はいつの間にか重症の傷を追い気を失ってしまったのです。
◇
◇
◇
飛鳥さんはその後に来た暗部によって発見され隠れ里に運ばれたらしい。すると長老が語る。
「ところが、目が覚めた飛鳥を手当てし回復を待っていた所、まさかの風雅の刺客が現れ里が襲われたのです、我々は何とか救援を要する為、飛鳥をあなた方の国まで行かせたという訳なのです。」
そう言うと長老はふぅと溜息をついたんだ。僕は思いついた疑問を投げかけたんだ。
「それでここは今無事な状態だけど大丈夫だったんですか?
「我々は被害者は出したものの何とかその外敵を撹乱させ今こうしてこの場にいるという訳です、そして…。」
長老はそう言うと髭を触り話を続けたんだ。
「ここはじゃな…実は我々、忍びの技には口寄せの術というのがありましてな、実は入り口は先程は飛鳥に反応して開いておりましたがこの里の民以外にはただの小さな蛙にしか見えなくなっているのです。」
「なるほど…ならここは。」
僕が話すと長老はニコリと笑い答えたんだ。
「あなた方の考えた通り隠れ里は蛙の腹の中ですじゃ。」
◇
◇
◇
こうして僕達は、なんとか隠れ里に辿り着いたんだ。そして準備を整えいざ『
は先ずは風雅達より先に『
◇
◇
◇
隠れ里から『
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