第36話邪馬国に向けて

ドリームソレイユから邪馬国への移動方法は馬車と船で行く事になる為、僕達四人はマリンベルに寄りレイオールを加え五人パーティーとなり船で邪馬国へと向かうのだ。船でも三日程はかかると言うが邪馬国は島国の為に船が唯一の交通手段になる。そしてマリンベルが僕達の住む国の船の出る港になっている。

僕達はマリンベルに辿り着くとレイオールが船を準備していたんだ。僕はレイオールに声をかける。

「レイオール!久しぶり!」

「おお!みらいか?それに皆も久しぶりだな!?オイラは漁に修行に忙しかったぞ!」

レイオールは笑顔で僕達に返してくれる。

「そういや…らいとはあれっきり見てないからこっちの大陸には戻って来てないんだろうな!?」

レイオールが突然そんな事を言ってくる。あれっ!?もしかしてらいとって…僕はそんな事を考えているとサイリスさんが言葉にする。

「ええっ!?らいとさんってもしかして邪馬国に向かったの!?」

レイオールはポカンと口を開けたまま頷く。

「あ…ああ…オイラが邪馬国に乗せていってくおいてきたんだが…。」

僕も話を聞き唖然としたけど、それなら会えるかも?と少しほっとしたんだ。だけどサイリスさんは少しつっこむ。

「レイオールが行き先知っていたら教えてくれたら良かったのに!」

「なんか…ごめん!まさか誰にも行き先言わないで来たとは思ってなかったよ。」

まあ…らいとの事だから仕方ないか…。僕は微笑む。するとダンさんが会話に入ってくる。

「レイオール!すまないな…早速だが今回君に連絡していた話だが…」

ダンさんは予め今回の事の成り行きを簡単にレイオールに説明をしてくれる。一応船を出してもらう話はもう通してはいたらしい。そしてダンさんの説明を聞いたレイオールは頷き答える。

「分かった!オイラも手伝おう!邪馬国は半年に一度は行ってる貿易国でもあるんだ。アイツら十二魔人に勝手な事させるかよ!」

レイオールもやる気になってくれたようだ。僕達は早速荷物を積み込みレイオールの準備が整うと出発をお願いする。船旅なんて僕は元の世界でもほとんどないからある意味ワクワクしている。するとレイオールの出発の合図の放送が船内に響く!

「いいか皆!これから出発するけどオイラが運転する以上、海上での戦闘が発生した場合オイラにはどうする事も出来ない!その時は頼む。」

レイオールの言う事は確かにもっともだ。僕達は改めて緊張を高めながら出発したんだ。

海上の現在は思ったよりも天候が良く出航にはいい条件だった。あまり揺れる事無く船は進む。

良かった…これが荒れてきたらきっと僕は船酔いするかも…そんな事を考えていると、船の後方から何やら声が聞こえてくる。

「うぉぉおおおっ!!」

「うぉぉおおおっ!!」

えっ!?僕達がモンスターの登場かと急いで向かうとダンさんの背中をさするサイリスさんの姿が!?おおっ!まさかのダンさんが船酔いか…僕も大人しくしてよう。僕はそう誓うのだった。すると僕に飛鳥さんが声をかけてくる。

「みらいさん…着いてからの話をしようかと思ったのですがダンさんはあの通りなのでちょっとだけでも打ち合わせをしておきたいんですが…。」

「ああ!分かりました!ではダンさんが落ち着いたらサイリスさんにも来てもらいましょう!」

僕はそう言うとサイリスさんに声をかけ船内へと入ったんだ。僕達はテーブルの椅子にかけ話を始めたんだ。そして…まずは僕が異世界から来た事、今まであった出来事等を色々話していると…。

「あれ…異世界って言ったらそう言えば…拙者達の里にやってきた旅の方も…少し話したのですが異世界からきたとか聞いた気がします…」

ええっ!?それってもしかして…僕はその話に食いつこうとすると…。

バタン!!扉が開きサイリスさんが入ってきたんだ。

「ごめんね二人とも!兄さん落ち着いてきたから寝かせてきたよ。」

はぁはぁと肩で息をしながら急いで入ってきたサイリスさん。

「そんなに急がなくても大丈夫ですよサイリスさん…」

飛鳥さんがそう言うと椅子に座り話をする準備は整ったサイリスさん。頷く飛鳥さん。僕はまずはらいとの事は置いておき、作戦会議を進めるのだった。

僕達が話し合った内容を要約すると、まず邪馬国に着き次第、飛鳥さん一族の住む隠れ里に行き戦況を確認し戦力を整える事、そして沖田蘭丸さんの居るであるはずの、しかしながら風の魔道士…いや、今は魔幻獣十二魔人の一人『風雅』が制圧してるかも知れない『江渡守エドノモリ』に向かい風雅討伐が僕達の作戦だ。できる事なら沖田さんの力も是非とも借りたいところである。そして先程気になったらいとかも知れない話を思い出し飛鳥さんに聞いてみる事にした。

「それで飛鳥さん…さっき話の途中で止まった彼の話を聞きたいんだけど。」

僕がそう言うとサイリスさんはキョトンとしている。

「えっ!?誰か力になってくれそうな人でもまだいたの?」

遅れてきたサイリスさんが食いついてくる。僕は笑顔で答える。

「もしかしたらサイリスさんも知ってる力強い仲間かもよ!」

「えっ!?それってまさか…」

すると飛鳥さんはその人(多分…らいと?)の話をしてくれたんだ。

「そう…彼が拙者達の前に姿を現したのは数ヶ月前…あの風雅が西の最果て『那珂なか』にくるよりもっと前…彼は拙者達の隠れ里にひょっこり現れるたんだけど。」

彼女はそう言うと一呼吸おき話を続ける。

「彼は拙者達も話には聞いた事がある太古の伝説をどこかで聞いてきたらしく話の中の伝説の武神『スサノオ』に会いたいと所望してきて…だけど、その『スサノオ』は伝説だけの『神』の存在としか拙者達も知らぬ為、伝説でスサノオが現れたと言われる場所を教えると彼は礼を言い旅立ったのです。」

僕もサイリスさんもあまりにも突拍子もない話にポカンとしてしまう。

「じゃ…じゃあ…そこへ行けばらいとがいるかも!そこへはどうやって行くんですか?」

僕の問いに飛鳥さんは顔を暗くし答える。

「そのスサノオが現れたと言われる場所は首都である『江渡守エドノモリ』からでも数ヶ月はかかるらしい…それに皆様のいうらいとさんだとして無事かどうかも分かりません…伝説の場所はそんな所なので拙者達もそしてこの邪馬国の国民ですら誰一人行った者もおらぬ、もしくは行っても帰ってきた人はただ一人もいないと聞きます。」

飛鳥さんのその言葉に僕達もガッカリしてしまう…。だけどらいとに頼らなくても僕達で何とかするしかない!

「今は僕達の力で何としても風雅を倒してやろう!」

僕のその発言にサイリスさんも驚きの顔をする。

「そうね…私ったらダメね…みらい君、私、飛鳥さんにレイオール、そして兄さんもいる。それに『江渡守エドノモリ』に行けば侍の沖田さんもいるわ!」

「そうですね、サイリスさん!邪馬国を救いましょう!」

サイリスさんもきっとここ半年くらいで強くなったんだ。僕はそう確信したんだ。僕達は作戦会議を終えて一息ついていると突然船が揺れ始める!!グラッ!ドオオオン!!

「うわっ!?」

「な!何今の!?」

僕達は思わずよろけるのをこらえる。船は激しく揺れ何かに当たった衝撃音まで聞こえた!!

「敵襲!!モンスターが出やがった!?オイラは操縦で手一杯だ!頼む皆!」

会議室にレイオールからの緊急放送が響く。

「行くよ!!」

僕の合図に二人も顔を見合わせ頷くと三人で船上へと走り出る!するとそこには巨大な吸盤を無数につけた更に大きい数本の触手の様な足が目の前で蠢いていた!!

「聞いた事があるわ!こいつはクラーケン!!触手と巨大な身体で船ごと海へ引きずり込むモンスターと呼ばれているわ!?」

サイリスさんが叫ぶとその手に槍を構える!!

「私だって強くなったんだから!?たああああっ!!」

サイリスさんは水龍の槍を振り回しクラーケンに突撃する!クラーケンの数本の巨大な触手を交わしながらも次々と触手を切っていく!そして敵の身体まで近づくと水龍の槍は青から透明色へと槍の色自体が変色する!

「たああああっ!!」

「サイリス殿…凄い。」

サイリスさんの活躍に飛鳥さんも呟く。

「僕達の仲間は皆凄いんだよ!」

僕はそう飛鳥さんに返す。

「本当に…拙者も希望が湧いてきました!」

「でしょ?でも…なんだろあの槍の色…」

サイリスさんはスタッと着地槍を構える。僕は彼女の槍の変色に目を奪われていたんだ。するとサイリスさんが閉じていた目を見開いた。

「水龍の槍!!温度変化…マイナス…」

氷転華ひょうてんか!!」

サイリスさんがクラーケンに向かい槍を振るいそのままのスピードで突っ込む!

一瞬の出来事だった。サイリスさんは槍を構え既に停止している。よく見るとサイリスさんの後ろには氷漬けのクラーケンの姿があったんだ。そして…一瞬クラーケンは震える。

パリーーーン!!

氷漬けのクラーケンの砕ける音がした。するとクラーケンの身体は氷ごと粉々に崩れ落ちていったんだ。

お読み下さりありがとうございました。更なる進化を果たしたサイリスさん、皆強くなっているんだ。



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