第35話邪馬国と風の魔道士風雅

サイリスさんは語る。

「小さな頃…私達の街(くに)ファンガイアに邪馬国やまのくにからの使者という事で一人の侍がやってきたの…彼の名前は…沖田蘭丸おきたらんまる。彼は小柄な身体だったけど、その技のキレは邪馬国随一と言われ、邪馬国の侍兵隊長でもあり、使者として邪馬国より使わされてきたそう。」

サイリスさんはそう言うと目を閉じ、その頃を思い出しながら語ってくれたんだ…。

「そんな彼の人柄は、優しくて幼かった私もいつの間にか懐いていたわ!私の父も国の人達も彼の人柄と強さを認め邪馬国との国交も樹立させるべく今度はファンガイアからも邪馬国へと代表を立て出向く事になったの…。」

サイリスさんは目を開け続ける。

「幼かった私はその時、駄々をこねちゃって沖田さんに着いてくって…父も沖田さんの説得もあって、私も一緒に連れて行ってもらえたの。」

サイリスさんの我の強さは幼い頃からなんだと僕は思ったけど黙って話を聞く。

「邪馬国は四季というものがあって、四季により気候も変わって、それに合わせて咲く木々や花々、食べ物も変わったりして、それでも人々は馴染み四季を楽しみながら生きている、そうそう…その時、江渡守えどのもりから離れて見せてもらった『桜城の景色さくしろのけしき』が一番の私の印象に残ったんだけどね!…凄く綺麗で素敵な国だったな…」

そう言うとサイリスさんの目には涙が光る。懐かしむサイリスさん。すると付け加えるように飛鳥さんが口を開く。

桜城さくしろっていうのは邪馬国の中心江渡守えどのもりのお城の事ですよ!四季がある春にだけ咲く木、さくらで城も城下町もその景観の美しさを輝かせるとても美しいお城なんです。」

(邪馬国って益々日本っぽいな…見てみたいかな。)

僕は、そう思い邪馬国に親近感を覚える。僕達は話を聞き邪馬国の素晴らしさを知れたんだ、するとダンさんが口を開く。

「所で、そちらの邪馬国の兵士…その様子では何か国で起こったのかな?」

ダンさんがそう訪ねると、もう一度飛鳥さんは事の次第を話してくれたんだ。

僕達は飛鳥さんの話を聞き終える。

「邪馬国でそんな事が!?許せない。」

サイリスさんが震えながら口にする。

「魔幻獣十二魔人か…最近は名も聞こえなくなったかとは思っていたがやはり動き出したか。」

ダンさんも話に食いつく。

「しかし…あの風雅にいったい何があったのだ…」

フレアース様は疑問に感じてるようだ。僕は虎の魔人風雅の事を聞いてみる事にする。

「フレアース様は風の魔道士の事知ってるのですか?」

「ああ、もちろんだ…彼はいつも温厚で爽やかな印象だったな、少し昔話をしよう…。」

僕の問いにフレアース様はゆっくりと語り始めるのだった。

「あれは…かれこれ20年程前…我々、魔道士の頂点である魔幻六芒星まげんろくぼうせいは世界の秩序の統一を果たすべく光の魔道士『ライデイン』により集められたのだ。」

私は魔道士としては血気盛んな頃ではあったが自分の力を信じ修行に明け暮れ世界の平定の為に尽力していた。そこでライデインは魔法を極めし者の力を統一し世の為に使おうと話し合いをする事にしたのだ。ライデインが待つ中…私もその席に呼ばれ席に着いていると次々にメンバーは現れる。まずは巨大な足音をたて大地を揺るがし登場したのは土の魔道士『アースウェル』。そして大人しく静かに入ってくる水の魔道士『マリオン』。音もなくスーッと闇から現れる闇の魔道士『シェイド』そして…爽やかな風と共に現れた風の魔道士『風雅』そんな彼の印象は爽やかさだった事を今でも覚えている。するとライデインの口が開く。

「皆、よくぞ集まってくれた。昨今、世界に悪の魔力の増幅を感じてきていてね…魔物も凶悪化しそれと同時に人間達の中でも争いも増えてきている、その為に、これより世界平定の為の力を持つ我々で協力提携を結ぼうと思うのだが意見のある者はいるだろうか?」

ライデインのその声に一同静まり返る。するとアースウェルはその口を開く。

「俺は異論はない!協力はしよう、俺の力があれば皆大丈夫だ!大船に乗った気でいるのだ!皆の者安心するがいい!」

アースウェルはその力に余程の自信があるのであろう。皆に自慢する程の発言だ。するとマリオンも続く。

「私もこの水の力を世界の為に使いましょう…」

「三人の意見には一応賛成なのだが…」

私は口をはさむ。血気盛んな私は当時、力が溢れていた事…若さゆえ、戦う事を好んでいたのだ。力が全て、そんな事すら考えていた。

「現在も私達で世界を平定しているようなものだ…少しくらいの争いは今まで通りこの力で治める事で悪くは無いと私は思うのだが…。」

私がそう言うとシェイドも賛同する。

「俺もフレアースに同感だな…今まで同様我々の魔力に勝てる奴など存在しない…だからこうしてわざわざ同盟などというものは無意味にも等しいかと思う。」

私とシェイドがそう意見を述べるとライデインは首を振り答える。

「ふぅ…あなた達ならそう言うのではないかとは思っていたよ…。」

するとマリオンが口を開く。

「私は要らぬ争いは好まない、よってライデイン様の発案を望みます。」

なるほど…確かに間違いではない意見ではあるのだが…。そこでアースウェルが一言。

「じゃあ後は風雅の意見ってとこか…」

我々はずっと涼しい顔をして聞いていた風の魔道士風雅に意見を求めた。すると風雅はその口を開いたんだ。

「ああ…いい風だ…こんな穏やかな風が吹いてるんだ…それなら俺は…」

フレアース様は笑みを浮かべている。

「そう…その時風雅が出した答えは世界の平定の為に六人全員で協力しようという意見であったのだ。」

「確かに六人の中でもっとも気まぐれな性格ではあったものの…その時の風雅の意見でその場は四対二になり…それで魔幻六芒星が発足したのだよ。」

「そんな事があったんですね?」

僕が問うとフレアース様は頷き答える。

「ああ、だが…そんな風雅がいまや強大な敵になっていたとは…」

「何か事情もあるのかも知れませんし…元々師匠はとても優しかった。」

飛鳥さんが呟くとフレアース様は帰る準備を始めて話す。

「敵は風雅だけではないのかも知れないし他の国々も気になる…私は光の魔道士ライデイン様の元へ行き何が起こっているか調べてこよう、悪いが私は今は一緒に行けない…君達に頼んでおくよ。」

その話を聞いていた面々…するとダンさんが口を開く。

「では…我々の中で行ける者は飛鳥さんと共に邪馬国へと出向き協力する事にしよう…。」

「オッケー!兄さん!」

「皆で飛鳥さんの為にも邪馬国を必ず救おう!」

僕達は一丸となる。

「皆さん、拙者達の為に本当に感謝いたす。」

飛鳥さんはそう言い深々と頭をさげるのだった。そして今回のメンバーは、まず一人目はダンさん、そして僕、らいとの代わりにとサイリスさん、レイオールを途中で拾う事になり飛鳥さんと共に五人で邪馬国に向かう事になったんだ。

いざ、邪馬国へ、異国の地へ向かい国を救うんだ。

お読み下さりありがとうございました。




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