第二章 魔幻獣十二魔人激闘編

第34話新たな戦いへ

古より、この世界に語られる…世界の秩序と平和は、いつまでも長らえることは無い…何故なら神の創り出した人、獣、精霊等多種多様な生物には意思というものが存在し、それに伴い争いなどが起こる。世界の安定の為、我々神は『魔石』を創り出しその力により幾度となく世界の平和と秩序は守られてきた。だがいつかその力を己の物とする者により世界は混沌色に変えられよう。その時、我々は救済の扉を開けよう。扉から現れる者により世界はまた平和へと…。

‐新たな冒険‐

ファノタウルスは僕のこの手により異空間ブラックホールに消し去った。そして。

ファノタウルスとの戦いから数ヶ月の時間が過ぎ去ろうとしていた。何事もない平和な日々が僕の暮らすドリームソレイユにはおとずれていたんだ。そしてファンガイア王の提案により、ファンガイア、マリンベルとドリームソレイユ…近隣三カ国(正確には二カ国と街)は平和協定を結び軍もあるドリームソレイユが主体で兵を増強しそれぞれの防衛を賄う事となったのである。

僕達はと言うと、あの時の仲間達は、いずれ各々の思いで動いていた。レイオールは修行の傍ら親の跡を継ぎ漁もするようになる。ファンガイアでは国王の元フレアース様とサイリスさんが王の右腕として助力していた。二人がファンガイアを支えると言う事でダンさんは修行に出たそうだ。そして、なんと僕の相棒らいとは…新たな武器を完全に使いこなす為の修行に行ってしまったのだ。残った僕はと言うと…。

「シャノワールさん!ただいま!」

僕はギルドの扉を開けると中に大声で声をかける。周りにいた人達も僕に気が付きこちらを見ている、辺りがザワつくと応えるように帰ってきたのは綺麗なシャノワールさんの声だ。僕はシャノワールさんの元へ向かいカウンターの椅子に座ると笑顔のシャノワールさんが声をかけてくれる。

「おかえりみらい君!今回の依頼は案外早く終わったようね!」

「うん!シャノワールさん!結構早く終わったよ!ところで…何か食べれる?」

すると、どこからともなくいい匂いがしてきていて僕の鼻をくすぐる。

「うわああ!いい匂い!もう僕、お腹ペコペコだよ!」

「はいはい!そう思って今日は特製野菜カレーにしたわ!今よそってくるから待ってて!」

そう言いながらシャノワールさんはニッコリ微笑み厨房へ消えていく。

料理があまり得意ではない僕はらいとの留守中の今はこうして仕事の後はギルドでシャノワールさんのご飯を食べる事にしている。らいとが鍛えているのに僕は何もしてないのかって?いやいや、僕も仕事の傍らフレアース様の元で魔法も戦闘訓練もしつつ日々経験を積んでるんだ。僕が待っていると奥からシャノワールさんがカレーを運んできて僕の目の前に置いてくれた。

「うわあ!めっちゃ美味しそう!いただきます!」

僕はシャノワールさんのカレーを早速いただく。美味しそうなカレーをパクリと一口。

「 う〜ん、やっぱりシャノワールさんのカレーは特別美味しいや!」

「ありがとうみらい君!沢山あるからおかわりしてね!」

シャノワールさんはそう言うと飲み物を一口飲むと口を開いたんだ。

「あれから…らいと君から連絡は来てないの?」

突然シャノワールさんの口かららいとの話が出た事で焦った僕は慌てて喉につまらす!そして一気に水でご飯を流し込む。

「んぐ、んぐ…ぷはぁ!!シャノワールさん!急にびっくりするじゃないですか?」

「あっ!?ごめんなさい!確かに突然だったわね…でもやっぱり私も気になっちゃって…。」

普段のシャノワールさんは本当に大人の女性で落ち着いていて素敵な人なんだけどこういう少し弱そうな部分もあるんだよね。まあそれも魅力なんだけどね。

「大丈夫です!あはは…実は僕も最近気にはなっていたんですよね…でも。」

「でも?」

「らいとがいない事が気になると言うより何か…」

「何か?って何?」

「最近ギルドの依頼をこなしていて僅かなんですけど少量の嫌な魔力を感じるんです。だからそっちの方がずっと気になっていて。」

僕がそう言うとシャノワールさんはニコリと微笑む。

「でもさ…みらい君!あなたもあれから相当強くなったんじゃない?肉体もだけど精神的にもね!?」

「あはは!僕もいつまでも弱いままじゃいられませんからね!」

「本当に来た頃よりもずっと強くなって今ではギルド内でもランキングも常に上位だしね!?頼もしくなったわ…。」

「ありがとうございます!シャノワールさん。」

僕達がそんな話をしていると突然ギルドの扉がバァンンン!!!

と大きな音を立てて開いたんだ。中へ飛び込んできたのはあまりにも酷く傷ついたどこかの国の兵士だった。兵士はよろよろと数歩歩くとそのまま倒れてしまった。

「シャノワールさん!水をお願いします!?」

僕は駆け寄りそう叫ぶと兵士の身体をみる…酷い怪我をして何とかギルドまで辿り着いたようだ。すると僕は兵士の鎧に刻まれた刻印を見つける。

「これって…どこの国の刻印なんだろ…?」

僕は兵士の傷を和らげる為ヒールマジックを使う。

「水魔法、ヒールウォーター!」

僕の癒しの魔法である程度の傷は多少だけど回復していく、そこへシャノワールさんは水を持ってきてくれ兵士に飲ませる。ゆっくり口に水を流し込むと少しずつ水を飲んでいく兵士。一杯の水を飲み干し呼吸を整える兵士。

「ぷはぁ…はぁ…はぁはぁはぁ……!」

兵士は兜を脱ぎ捨て息を深く深呼吸をし落ち着かせていく。するとそこに見えたのは綺麗と言うより強気そうな女性歳は10代半ばくらいで僕と変わらないくらいの年齢の女の子だったんだ。

「すみません…ありがとうございます!本当に助かりました。」

「いえいえ!とりあえず無事で何よりです!」

僕のその一言に兵士は安堵し話はじめたんだ。

「実は、拙者この国よりずっとずっと東にある島国『邪馬国やまのくに』という小さな島国から参りました!拙者の名は飛鳥あすかと申します。」

邪馬国やまのくに…って事は日本っぽい名前だな…こっちの世界にも日本っぽい国があるのかな。僕がそんな事を考えていると彼女は続ける。

「我が邪馬国には四季というものがあり季節で様々な景色が見られそれはそれは美しい国なのです。」

「住む人間達もその国の文化を昔から守り続けて平和な暮らしをしてきました。ところが…数ヶ月前に邪馬国の王都『江渡守エドノモリ』から離れる事数百キロの西の最果て『那珂なか』に一人の男がやってきたのです。」

そこまで言うと彼女は震えだし言葉を続ける。

「男の名は魔幻獣十二魔人の一人…虎の魔人『風雅ふうが』でも…その正体は世界の六大魔道士である魔幻六芒星の一人『風の魔導士』なのです。世界の平和の象徴のはずの彼は現れるや否や、その余りにも強大な力を発揮し、兵士諸共我が国を壊滅させる勢いで色々な物そして生きる民を翻弄し破壊し尽くしあっという間に『那珂』を占拠し、那珂を拠点に北上しそして西の都を攻めてきて、防衛にあたった 我らは無惨にも敗北…生き延びた数百名の生き残りは地下の隠れ里に逃げ隠れ、潜み、国を彼奴から取り戻そうと耐えていたのですが…。」

「なるほど…でもそこで何かあったんですね?」

僕が問うと彼女は頷き語る。

「風雅の追っ手によって拙者の同志達は…拙者だけが命からがら逃げる事ができ、やっとここへ辿り着けたのです。」

そこまで話すと一息つく飛鳥さん、そしてまたその口を開いたんだ。

「拙者達は元々…『しのび』と言う古くから魔力を使い忍術というものを使いこなす影の暗殺者の集団、長い歴史の中に暗躍してきた為、戦闘には長けているのですが敵は強敵過ぎた…。それに…」

僕はその言葉『それに』に続く言葉に違和感を覚えとても気になったんだ。

「それに…何!?」

「彼は…元、風の魔導士…奇しくも拙者の師でもあるのです…。」

衝撃的な事実を耳にし驚く僕とシャノワールさん…するとそこへギルドの扉を開けダンさんが帰ってきたんだ。

「いよう!久しぶりに帰ってきたぞ!ただいま!シャノワール!みらい君!?」

「ダン!?」

「ダンさん!?」

僕もシャノワールさんも飛鳥さんの話に驚きすぎてダンさんの久しぶりの帰還にあまり動揺しなかったんだ。

「どうしたんだ二人とも!?そんなに驚いてないようだな!?」

「それとも…私の変わりようにびっくりしたのかな!?」

僕は慌ててダンさんに返す。

「あ!ダンさんおかえりなさい!」

するとダンさんの後ろから女性二人の声が聞こえてくる。

「シャノワールさん久しぶり!!」

「先日は世話になったよ!お久しぶり!」

そう言いながらダンさんの後から入ってきたのは僕も修行でお世話になっているフレアース様と同じく本格的に弟子入りしたサイリスさんだ。今の皆の状況は僕とサイリスさんはフレアース様の弟子でらいとは放浪の旅へ、ダンさんはと言うとファノタウルス戦を見直し水獣爪を完全に自分の力とすべくレイオールの元で弱点である水属性の克服へと修行に行っていたんだ。そんなダンさんも確かに見た目からパワーアップしたみたいだ。するとサイリスさんが口を開く。

「皆久しぶり!って言って、あれ…?」

サイリスさんは飛鳥さんに気がつく。

「そちらの彼女は…もしかして邪馬国の人?」

「えっ?邪馬国知ってるの?」

僕はサイリスさんにたずねると彼女は邪馬の国話をしてくれたんだ。

邪馬国を知ってるというサイリスさんは語ってくれる。

第二章始まりました!皆様引き続きお楽しみいただけたら幸いです。



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