第33話みらい達の夏休み後編

皆で楽しむ夏、僕達はダンさんの提案で始まった『肝試し』をする事になったんだ。何も無いのでは面白くないと言う事でサイリスさん、フレアース様、レイオールがお化け役をする。司会はダンさん、参加者は、僕、らいと、すずねちゃん、すずねちゃん母、の四人で二人一組で行く事になった。クジの結果、僕とすずねちゃんのお母さん、らいととすずねちゃんの組み合わせだ。

「ぅぅぅ…らいとお兄ちゃん…」

すずねちゃんはらいとの腕を掴んで離さない。

「お、おう…こ…こんなのなんて事ないぜ!」

こころなしからいとの言葉は震えてる。そして僕達二人はと言うと、すずねちゃんのお母さんは肝試しがらいとと一緒で弱いのかな?僕は意外と心霊などの霊的現象や超常現象は物語を作る上で必要で結構好きだったりするのだ。

「すずねちゃんのお母さん!大丈夫ですよ!」

「みらい君!私昔からこういうの弱いの!」

「大丈夫!僕がいます!」

その時ダンさんのスタートの合図がしたんだ。

「では!まずはらいと&すずねチーム!スタート!」

らいと達はビクビクしながら暗闇に消えていったんだ。それから十分後…今度は僕達の番だ!すずねちゃんのお母さんが何も言わず僕の手を繋いで歩く。その手は少し震えている。僕はその手をぎゅっと握る。

「大丈夫です!僕がいますから!」

僕の口からは今までだったら出なかった言葉が出る。僕も少しは成長できたかな?そんな事を考えてると先に進んだらいと達の叫び声が聞こえてくる!!

「ぎゃーーーーー!!」

すずねちゃんのお母さんはその声にビクッと驚き僕の手を強く握る。

「みらい君…何か聞こえたけど…大丈夫かな…」

「大丈夫だから僕から離れないでください!」

すずねちゃんのお母さんは僕の腕にしっかりしがみつく、僕は彼女を支えながららいと達の後をゆっくりと追う。暗闇に時々足元を照らす小さな灯りがあるだけの夜道を僕達は歩いた。するとまた聞こえる叫び声!!

「うぎゃぁぁぁぁああああ!!」

僕達は顔を見合わせると一旦立ち止まる。

「みらい君!気をつけましょ…」

「大丈夫…大丈夫!」

らいとの叫び声と思われた声を聞いてから少々時は立つ。辺りはあれから静まり返り静寂の中僕達が進むと、そこにしゃがんで震えているすずねちゃんの姿があったんだ!?

「すずね!?」

「すずねちゃん!?」

僕達の声に気が付きこちらに走ってくるすずねちゃん。

「ママ!みらいお兄ちゃん!?」

すずねちゃんはお母さんにしがみつき泣きじゃくる。

「すずねちゃん!?らいとはどこに行ったのさ?」

僕が問うとすずねちゃんは泣きやみゆっくりと話し始める。

「グス…うん…あのね、僕達が歩いていたらお化けが出てきたの。」

「最初は水のお化け、次は火のお化け、火のお化けはずーっと着いてきて逃げてるうちに僕達は行き止まりで逃げれなくなった所に最後は白い光のお化けが出て…らいとお兄ちゃんも私も気を失っちゃって…気がついたら僕はここに一人残ってたの…」

グスっと涙を拭うとすずねちゃんは僕達と会って元気が出たようだ!

「じゃあ…らいとお兄ちゃんを探しに行こう!」

すずねちゃんはスっと立ち上がる。

「よし!じゃあ僕達も一緒に行こう!」

僕達が進もうとすると暗闇から青い光と赤い光が見えてくる。

「誰!?」

僕がそう言い放つと光の主は声を出したんだ。

「いやあ!オイラをこんなに怖がってくれるなんて楽しんでくれたかな?」

その声は明らかにレイオールだ。するともう一人は…フレアース様だった。

「あっはっは!このゲームは本当に面白かったぞ!」

「フレアース様とレイオールだったんだ!」

僕はそう言うと皆笑顔になる。するとフレアース様が皆に伝える。

「ダンからの伝言なのだがそこから海を眺めていてほしいだとさ!」

「あ!でも、らいと達がいないけど…」

僕がそう言うとフレアース様はニッコリ微笑み答える。

「彼ならきっと今頃どこかで見ているよ!私が驚かせたら逃げていったのだが逃げていった先にはサイリスがいたはずだから大丈夫だろ!?あっはっは!」

なるほど!霊的現象はレイオールとフレアース様だったんだな…。僕は、らいとの驚いた姿を想像してつい笑ってしまった。するとガサガサ目の前の草の茂みが動く。次の瞬間出てきたのは…。

「もう…!暴れないでくださいってばあ!」

「俺はもう大丈夫だって!」

サイリスさんにおんぶされたらいとの姿だったのだ。

「らいと!?」

「ん!?みらか…これはちょっとな…」

「何がちょっとな…ですか!?私の姿を見て気絶するなんて!酷いですらいとさん!」

「いや!だから気絶なんてしてねえって!?」

慌てるらいとに怒るサイリスさんを見て僕は思わず吹き出してしまう。

「あははっ!!あは、あはははっ!!らいとがあのらいとが!!」

僕の笑い声に皆つられて笑う。久しぶり、久しぶりに大笑いした!本当に本当に楽しいな、この世界!僕達が大笑いしていると。

ひゅるるる〜〜〜〜〜〜〜パーーーン!!

僕達の目の前に大きな花火が上がった!

「「おおおおおっ!!」」

見ていた皆が歓声をあげた。

「凄く綺麗な花火だ…。」

「うわあ…凄いねみらいお兄ちゃん。」

僕もすずねちゃんも大きな花火に声が出てしまう。次の瞬間また花火が上がった!

パーーーーーーーーン!!

「これはまた飲むしかないな…」

「ええ…宿に帰ったら飲み直しましょ!」

「あたしにもお酒えええ!」

フラフラと飛んでくる精霊フレーネ…どうやら飲みすぎて寝ていたようだ。

「フレーネ!大丈夫なのか?」

「そうですよ!飲みすぎじゃ…」

「大分寝ていたから復活よ~~~」

心配するフレアース様とすずねちゃんのお母さん。そんな様子を見ていたレイオールが一言。

「じゃあ酒をもっとオイラが用意するよ。まだまだ皆沢山飲んで騒いでくれ!!」

「「やったーーーーー!!」」

二人の酒豪と精霊フレーネ、レイオールも楽しそうだ!そんな話をしている僕達。すると…

ひゅーーーーーっ!パパパンっ!!

次々と花火が上がる。

「たーまやーーーーー!!」

「らいとさん!何ですかそれ?」

「俺達の世界じゃ花火が上がるとこう言うんだぜ!」

サイリスさんの背中で腰をぬかしたらいとがいう。

「じゃあ…たーまやーーーーー!!」

サイリスさんの声も響く。

僕達はこの瞬間、この時をめいっぱい楽しんだんだ。

一方…その頃。

「おおお!!この日の為にレイオールが用意してくれた花火…これがあの『光華玉』だったのだ。凄いな。」

ダンさんはそう言うと光華玉をまた少し削り筒に入れ込む。

「猛ダッシュしてきたらいと君が持ってきたけど、サイリスちゃんに驚いて気を失ってしまったわね…でもここで上げる私達は特等席ね!」

ダンさんが僕達の為に花火の打ち上げ役を買ってでていたんだ。傍でお酒を飲みながら答えるシャノワールさん。

「美味しいわ!ここのお酒にこの花火!最高の夜ね!」

「そう言ってお前はずっとそこで飲んでるでは無いか!向こうで皆でワイワイ飲めばいいじゃないか?」

ダンさんがそう問うとシャノワールさんはまたお酒をぐびぐび飲む。

「私は花火は特等席が好きなのよ…」

「そういえば…ダン…貴方、あの子達が来てから前よりずっと男前になったわね…」

シャノワールさんはそう呟くとダンさんは口を開く。

「あれから大分色々あったな…私も彼らと共に更にこの世界が好きになったかも知れん。」

ダンさんはそう言うと花火の筒に導火線を差し入れる。そして導火線に指をパチンっ!その瞬間、シュッ!!ひゅるるるるるーーーっ!!

光華玉の欠片の花火は天高く飛び上がる。皆が空を一点見つめている。

パーーーーーン!!

暗い大空に広がる色あざかな花火!!

僕はこの花火を忘れない一瞬一瞬を皆で楽しんだこの夜を。

そしてこの日僕は異世界転移してきてからこんなにも良い仲間が出来てこんな楽しい時間も過ごせた事、凄く凄く充実してる今に幸せを感じたんだ。

みらいとらいとの夏、彼らは異世界転移してきてから初めての夏を楽しく過ごせたようです。次回から更に物語は加速します。

第一章終了です。第二章をお楽しみくださいませ。

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