第32話みらい達の夏休み中編

皆を乗せた馬車は港町マリンデルに向けて出発した。僕達は馬車に揺られ賑やかに向かうのだった。港町マリンデルは昔から漁業が盛んな港町で、もちろんその海はこの国の貿易を担う、そして夏は海水浴場で賑わう活気のある街である。近くの山である魔空山からの清らかな水がこの街を潤わせている素晴らしい水の街なのだ。

僕達は馬車が止まると早速降りると、そこから見える景色は真っ青でピカピカと光り輝く綺麗な海だったんだ。

「着いたああ!!海!!」

「うおおおおぉ!!海だ!!」

「すごい綺麗ですねらいとさん!?」

「「ぉぉぉぉぉぉ!!」」

僕達もつい浮かれてしまう。すると後ろから僕達を呼ぶ声がする。

「皆来てくれたんだな!?」

その声はタンクトップに短パン麦わら帽子を被ったレイオールだった。

「ああっ!レイオールじゃんか!?」

「元気だったかレイオール!?」

レイオールはニッコリ笑っているがめっちゃ海の男感満載だ!

「皆!今日はよく来てくれた!今回はオイラが

皆に世話になった礼をするな!」

「じゃあ早速オイラの家で出してる海の家でそして海で海水浴でも楽しんでくれー!!」

「「やったーーー!!」」

レイオールの家で出してる海の家に辿り着くと彼の両親が忙しくお客さんの相手をしている。僕達は挨拶を早々に皆で早速着替えようとして更衣室を見回すと隣にいたらいとが急に叫び出す!

「うおおおおぉ!!」

「どうしたのさらいと!?」

「らいとさん?」

するとその場で颯爽と着てるものを脱ぎ捨てるらいと!

「えっ!?」

「「ええーーーーーっ!?」」

あらかじめ中に履いてきたであろう海パン一つになったらいとは猛然と海に走り消えていったんだ。

「あはは…野生児だな彼は…」

フレアース様は半笑いだ。するとすずねちゃんもその場で服を脱ぎ出す!

「こらっ!すずね!?」

「らいとお兄ちゃんにおいてかれるーーー!」

何とか皆で取り囲みすずねちゃんを着替えさせるとすずねちゃんはらいとの元へ飛んでいくのだった。

「じゃあ私達も早く着替えて行かなきゃ!?」

「そうだね!サイリスさん!」

そんな会話をしたのだったが僕の予想をはるかに超えたスピードのサイリスさんの着替えだった。

「みらいさん!終わった!?」

僕を呼ぶサイリスさんの声がする。

「いいよサイリスさん先に行ってて!」

「分かりました!じゃあ先に行ってま…」

という声が聞こえたと思うと遥か遠くから聞こえるサイリスさんの声。

「待って~らいとさ〜〜〜ん…」

「早いなサイリスさん」

僕は笑いながら更衣室を後にする。すると僕の目に飛び込んできたのはお酒を飲み始めたフレアース様とすずねちゃんのお母さんだった。

「ぷッはーーー!!いやあ!実にビールとやらがうまい!!」

「本当に!本当に!!フレアース様!どんどん飲んでくださいね!」

見ていた僕は唖然としながら見ていた。周りには絶世の美女の二人が飲みまくる姿を眺めてるおじさん達。そう…あの二人はとてつもなく綺麗な二人なのだ。すると僕に気づいた二人が呼ぶ。

「「みらく〜ん!!おいで〜〜〜!!」」

おじさん達の視線は僕に向けられる。

「なんだあのひょろひょろの坊主は…」

「あの二人となら俺達の方が釣り合うってもんだぜ!」

とか僕に対する敵意むきだしの妬む声が聞こえてくる。すると、お酒を飲み上機嫌な二人が一瞬凍りつく…その瞬間その声を発した奴らは地獄の入口に立たされる事になる。

「もっかい言ってみなさい!!」

「どの口がそんな事を言ったんだ!?」

気がつくとそいつらの首を掴む二人のお姉様達の姿が…。

「も…もういいよ!二人共!僕の為にありがとう!」

僕がそう言うと二人は手を離すと締めあげられた二人が逃げていく。

「そんな事言っちゃダメよ、みらい君!」

「そうだぞみらい君!私達も皆もみらい君の活躍に本当に助けられたんだ!君は自分に自信を持っていいぞ!」

二人の言葉に僕は頬と心が温かくなった。そして僕はうるっとした。こんな事言って貰えるなんて今までの僕には有り得なかった。だからこそ余計嬉しかったんだ。それから心開いた僕は二人にこの世界にきた経緯や僕達二人の話を包み隠さず話したんだ。

「なるほど!異世界か…みらい君のいた世界ってのも楽しそうだなあ…」

すずねちゃんの母さんも上機嫌で僕の話を聞いてくれた。

「うむ!異世界の話は昔から噂では聞いた事がある。!でも…」

そう言ったフレアース様は僕をじっと見つめ口を開く。

「みらい君は、らいと君に今まではずっと頼ってきて友達もいないっては言うけど、今はどうだい?」

「えっ?今…ですか?」

「そう今この時だ…」

フレアース様にそう言われて考えてみる。確かに自分達の世界では友達もいなくて、らいとが唯一無二の友達だった。僕もそれでいいと思っていた。でもそのらいとは元も世界でも友達もいてこっちの世界に来てもあんなにモテて…僕にはいつもらいとは羨ましい輝ける存在だったから僕は憧れをいだいていたんだ。

「君はずっと、らいと君を追いかけてきたのかも知れない…でも今はどうだい?すずねちゃんとサイリスは若くてまだ『憧れ』としてらいと君を追っかけてるだけだぞ。」

「フレアース様…」

するとすずねちゃんのお母さんはお酒を一気に飲み干す。

「私の好みはみらい君かな?」

すずねちゃんのお母さんはニッコリ笑顔で言ってくれる。こんなに綺麗で素敵な人達にこんな事言われたら照れちゃうよ。僕が顔を赤らめてると遠くからすずねちゃんの声が聞こえてくる。

「みらお兄ちゃんーーーーーっ!?」

あれ?らいとを追いかけていったすずねちゃんが飛んで戻ってくる!

「どうしたのさ!すずねちゃん!?」

「あのね!らいとお兄ちゃん早すぎて捕まらないの!?だから一緒に捕まえて!?」

僕は二人のお姉様と顔を見合わせると二人は僕にニッコリ微笑み頷く。僕も二人に笑顔で返すとすずねちゃんの手を繋ぐ。

「みらいお兄ちゃん!らいとお兄ちゃんの弱点教えて!?」

「わかったよ!らいとの弱点はね…」

その後、スイカ割りをしようと用意されたのはこの異世界の果物で『水華すいか』と呼ばれる水中に生え、その実が時折水面に浮かんでくるとても変わっているが美味しい果物である。僕達は水華割りを楽しみ、そしてかき氷はレイオールが魔法で氷を降らせる!

「水魔法改!アイスレイン!!」

レイオールの魔法は小さな小さな氷をその場に降らせる、そして容器に積もらせていくレイオール…するとあっという間!かき氷の出来上がりである。

「う~ん…美味しい!」

さっきの水華も沢山食べていたすずねちゃんは今度はもらったかき氷にレイオールが用意していた色々なシロップをかけて食べている。僕もかき氷を貰いそして一口…。

「うわあ!本当に美味しい!最高!」

そういや氷って急に食べると頭がキーンって痛くなるよね!気をつけなきゃ…僕がそんな事を考えながら食べていると目の前で頭を押さえて唸るらいととすずねちゃんがいたんだ。

「らいと!ゆっくり食べないとさ?」

「あ!いや、これは油断した…ぅぅぅぅ」

「僕も頭痛いぃぃぃ。」

「あはは!二人ともかき氷はゆっくり食べないと!」

そんな事をしているとサイリスさんがかき氷を目の前にじっとそれを見つめている。

「どうしたのさサイリスさん?」

「ああ!みらい君…実は私達サラマンダーの獣人には氷を食べるという習慣が無くて。」

「そっかァ…確かにそうだろうね?でも食べてみたらきっと美味しいよ?」

僕がそう言うとサイリスさんは一口氷を口に運ぶ。もぐもぐ……

「お、美味しいです!!」

サイリスさんはニコニコかき氷を食べている。良かった!らいともすずねちゃんもまた頭を押さえつつかき氷を食べている。僕もまた一口。

「う〜〜〜ん!最高!」

僕達の楽しい一日は暮れ…夜になる。漆黒の闇に包まれた海も幻想的だ。その海を見下ろせる丘の上に食事も終えた僕達は勢揃いしている。

「さあ!皆!今日は楽しんでくれたかな?」

「「おおおおおっ!!」」

ダンさんの声掛けに皆満足そうだ。ダンさんは皆に声をかけ見渡すと語り出す。

「さて!皆先程美味しい物を沢山食べたであろう!って事でちょっと運動をしようと思う。」

「何なのだダン!?何をしようと…」

フレアース様がそう言うとダンさんは皆に見えるよう地図を広げて見せたんだ!よく見るとこの場所が記されたこの周辺の地図だった。

「これはここをスタート地点とした地図である!?」

「ここをスタートし折り返し地点には『光華玉こうかだま』が置いてある!それをとり先にいる私に渡して欲しい…そして無事ここまで戻ってきたチームの優勝となる!」

明らかに僕達の世界で言う『肝試し』みたいなものであろうと思う。そう考えて聞いてるとダンさんは続ける。

「だが…ただ光華玉を手に入れるだけなら簡単だ。ここは昔からあるものが出るという噂があるのだ…」

ダンさんの表情は途端に変わる。すると、僕の隣で聞いていたらいとの様子がおかしい。

「あれ?らいと急にどうしたのさ?」

「な…何でもねえよ…。」

らいとは冷や汗をかきよく見るとぷるぷる震えてるのだ。そんならいとを余所にダンさんの説明は続く。

「そのこの世ならざる者を跳ね除け無事にここまで戻ってきてくれ!?」

「「おおおおお!!」」

皆の張り切る声が響く。だがそんな中明らかに様子がおかしい者が一人いたのだ。そう…何を隠そう我が大親友らいと、その人である。

お読み下さりありがとうございました。皆で肝試しをする事になった一行。みらいとらいとの運命やいかに!?





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