第25話サイリスと精霊フレーネ

僕達とファノタウルスの戦い。その陰でレイオールはフレアース様の回復を試みている。だがフレアース様の魔法力と共に体力、生命力どれも腕輪の力によりファノタウルスに奪われていく為、その命を維持させるところで留まり回復までには至らないのだ。

「くそっ!?オイラの力にも限界があるぞ。」

懸命にフレアース様の回復に全力を注ぐレイオール。その隣でサイリスは自分の無力さを痛感する。悔しくて唇を噛み締める。するとフレアース様はその眼をゆっくり開いたのだ。

「フレアース様っっ!?」

サイリスはフレアースが目を開けたことに気づき手を握る。するとフレアースはゆっくり話し始める。

「サイ…リス…いいか?…これから私が言う事をよく聞きなさい…。」

「はい…。」

「まず、この部屋の暖炉の中にある薪を避けるのです…そして、その下には地下に降りれる階段が隠してある…。」

「えっ?」

フレアース様は暖炉を指差す!そして続けた。

「あそこ…だ…。」

「いいか…ダンの持つ『水獣爪』とサイリスのその『水龍の槍』も元々私がその部屋に隠していて何かの時の為にと、お前達に渡した物だ。」

「はい!以前会った時に預かり私が保管していました。」

「あの階段を降りていくと私の隠し部屋に辿り着ける。そこには…まだ彼ら…あのダンの連れてきた二人は異世界人なのだろう?その彼らの為の武具もあるはずだ。」

「えっ?」

「ファノタウルスには…魔法は効かない…戦った私が…よく分かっている…。」

フレアースはサイリスに静かに訴える。

サイリスはフレアースの眼を見つめると頷きフレアースを寝かせる。そして、スっと立ち上がる。

「フレアース様!行ってきます!!」

サイリスは暖炉に向かい中の薪を片付ける。するとその下に扉を発見したんだ。

「これだわ!?」

扉を開けると下に降りる階段が現れる。サイリスは階段を降り中へと降りていくのだった。そして、見ていたフレアースは微笑み、その眼を閉じたのだ。

(頼んだぞ…サイリス…そうだ…アイツ…サイリスが行っても出てきてくれる…かな…?)

サイリスが階段を降りていくと辺りは徐々に広がりを見せていく。階段は地下深く続いていた。

「どこまで続いてるんだろう?」

この火山の奥へと続くこの道は僅かにあちこちから火山エネルギーによる赤い光が時々壁の隙間から差し込み、光からは熱を感じる…。

「段々暑くなってきたわね…。」

サイリスは道を走り進む。早くしなければ…私と兄さんの武器だけではあの強大な力を手にしたファノタウルスには魔法が通じない以上戦いは困窮してしまう。

「あの二人の武器となる物を私が届けなくちゃ!!」

そして私は行き止まりであろう最深部に辿り着く。行き止まりには扉がありその扉を開けると一つの小さな部屋に入ったんだ。そこには凄い量の魔導書が並んでいる本棚、机の上にも広げられた大量の魔導書、魔導具などがある部屋だった。

「ここの…どこにあるっていうの?」

私は他に何かないか物色していると突然頭の上に何かが落ちてくる。コツンと頭に軽い痛みを感じ頭を撫でながら目を開ける。

「いった〜!…ん?本棚から落ちてきたのかな…。」

「あんた…誰よ!?」

どこからともなく聞こえてきたその声に私はハッと身構える。

「えっ!?誰!?何者なの!?」

私が叫ぶと辺りは一瞬静まり返る。すると目の前に炎がボッという音を立て出現し、その炎は次第に形を形成し炎の精霊が姿を現したんだ。精霊は目をぱちくり開けるとキョロキョロ辺りを見渡す。すると私に気づき近づいてきたんだ。私の目の前でふわふわ浮いている精霊は呆然と見ている私に語りかけてくる。

「あんたは…誰?フレアースはどこよ?」

「私はサラマンダーのサイリスと言います!フレアース様は今、ファノタウルスという魔人の力によって危機に陥ってます!どうか私達に力をお貸しください!!」

「どういう事?…ちょっと待って…」

精霊はそう言うと赤く発光する。そして、じっと目を閉じ何かを考えている。私がその光景を見ていると精霊は目を見開き声を発する。

「う〜ん!フレアースの力があの魔人に力を吸収されて今…危険な状態なのね?」

「はい…しかもあの魔人の能力は魔法の無効化なのです。」

「なるほど…それであのフレアースがあそこまで弱っているわけか…。」

「それで私はフレアース様の提案でここに来たのです!あの魔人ファノタウルスを倒す為の武具がここにあると聞いて。」

私の話を聞いた精霊は今度は腕を組みながら答える。

「ぅーん…でもここにあった武器の二つはもうフレアースが持っていったし残りの二つって…」

そういうと精霊は悩んでるようだ。

「何か問題があるのですか?」

私の質問に精霊は頭を抱える。私は更に答えを求める。

「精霊さん…?」

すると精霊は渋々話すのだった。

「こないだフレアースが持っていった二つの武器は人を選ばない、れっきとした武器なんだけどね…ここにある残りの二つの物には…があって、武器って言うかあれは魔石…なのよ。」

ふぅ…と溜息をつくと精霊は続ける。

「だからその魔石を持っていってもその彼らの為に魔石が答えてくれるかどうかは…運次第…よ。」

その言葉を聞いた私は力が抜け膝から座り込んでしまったんだ。

そんな…この最後の希望には運が左右するなんて…。

「ええい!!でも、今はそんな事言ってる場合じゃないみたいね!」

精霊は突然そう叫ぶとパチンっと指を鳴らすと私の目の前に炎が二つ出現する。二つの炎はそのまま燃え上がりやがてその火は弱まっていくとその中から一本の刀と杖が姿を現したんだ。

「さあ…ひとまずそれを持って上に向かうわよ!!」

「この武器…は…?」

刀をよく見ると錆びて刃こぼれもしてそうな見た目も古くボロボロだったんだ。もう一方の杖も今にも朽ち果てそうな杖である。

「いいからその武器も上まで運ぶの!」

「えっ!?でも…」

「でも!じゃないわ!?私の大親友フレアースを救うには賭けるしかないの!」

精霊は私を力強く励ましてくれる。

「じゃあ私とその武器を上まで連れていくのよ!」

「えっ!?他に万が一の為の武器などここにはないのですか?」

「無いわ…それに並の武器ではあの魔人には通用しない…言ったでしょ?残り二つの武器というか魔石には意思があるの!もう今はそれに賭けるしかないの!!」

精霊はそう言うと私の肩にちょこんと座る。

「さあ!上までレッツゴー!!」

私は頷くと走り出す!ファノタウルスに皆で勝つ為に!

「ところで…あんたの名前は?」

「私はサイリス!サラマンダーの獣人です!貴女は?精霊さん?」

「そう!私はフレアースの大親友で炎の精霊!!名前は炎の精霊『フレーネ』!!よろしく!」

私は精霊フレーネと共に皆の元へと戻る。急げ!!皆は私を待ってるんだ!

「ん…来るわ…サイリスがあいつを連れて。」

弱った身体に何かを感じるフレアースは目を開けて声にする。するとレイオールも何かの力を感じたみたいだ。

「これは…精霊…なのか?」

「ええ…精霊で私の大親友…が来てくれるわ…。」

その頃ファノタウルスは僕達に猛攻撃を仕掛けていた。だが今の僕達には攻撃を防ぐのが精一杯だ。

「うおおおおぉ!!」

ガキイイイイン!!ズバッ!!

ダンさんの水獣爪とファノタウルスの大斧による衝撃音と爆風!!ダンさんを…ダンさんを僕達が支えなきゃ!?

ファノタウルスに対抗するダンさん。炎の精霊フレーネとは?そして僕達に勝機はあるのか!?

お読み下さりありがとうございました。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る